人形のかんりゅう歌を保育で活かす手遊び活用法

人形のかんりゅう歌と保育での手遊び活用

人形と歌で遊ぶと男の子の言語力が伸びます。

この記事でわかること
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人形のかんりゅう歌の由来と保育史

フレーベルの「母の歌と愛撫の歌」から生まれた「かんりゅう(貫流)」の概念と、人形×歌が保育に根付いた背景を解説します。

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保育でのねらいと発達効果

言語発達・情緒発達・社会性育成など、人形×歌が子どもにもたらす具体的な効果を研究データとともに紹介します。

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年齢別の実践方法と注意点

0歳から5歳まで、発達段階に応じた人形×歌遊びの取り入れ方と、保育士が陥りやすい落とし穴まで丁寧に解説します。

人形のかんりゅう歌が保育に取り入れられた歴史とフレーベルの思想

 

「人形のかんりゅう歌」という表現は、幼児教育の祖として知られるドイツの教育学者フリードリッヒ・フレーベル(1782〜1852)の主著『母の歌と愛撫の歌』(Mutter- und Koselieder、1844年)と深く関わっています。フレーベルはこの著書の中で、詩・絵・手遊び・音楽という「四位一体」の構造で幼児の感覚を育てることを提唱しました。そして彼が語った「かんりゅう(貫流)」とは、神の本質が子どもの内側から外側へと絶え間なく流れ出るプロセスを指す概念です。

『母の歌と愛撫の歌』は全50編の遊び歌で構成されており、各歌には人形や動植物、職人など日常の存在が登場します。作曲はロベルト・コール、挿絵はフリードリッヒ・ウンガーが担当し、詩だけでは伝えきれないフレーベルの哲学が絵と音楽で補完されていました。中でも「人形」を使った歌や手遊びは、子どもが自分以外の存在に気持ちを向けるための「橋渡し」として重要な役割を担っていました。これが基本です。

保育における人形×歌の文化は、フレーベルの思想が19世紀末に日本へ伝わるとともに広まりました。1897年にハウが翻訳した『母の遊戯及育児歌』がその足がかりとなり、日本の幼稚園教育にも「歌いながら人形を使う遊び」が浸透していきます。現代の手袋シアターやエプロンシアター、ペープサートもその流れを汲むものです。

フレーベルが最も重んじたのは、子どもが「遊びに全身全霊で没頭する」ことでした。彼は「遊びは余暇ではなく、子どもにとって最も真剣な仕事だ」と述べています。人形と歌が組み合わさることで、子どもは視覚・聴覚・触覚・運動感覚を一度に使います。これはまさに、かんりゅうの概念が実践されている状態といえます。

参考:フレーベルの『母の歌と愛撫の歌』について音楽的視点から分析した学術論文(光徳大学紀要)

フリードリッヒ・フレーベル著「母の歌と愛撫の歌」を音楽から見た一考察(光徳大学紀要)

人形のかんりゅう歌を使った保育でのねらいと効果

「人形と歌を組み合わせるのは女の子向け」という思い込みは、科学的に否定されています。慶應義塾大学の皆川泰代教授(赤ちゃんラボ)が実施した共同研究(2019年)では、3歳〜3.5歳の男児60組を対象に、人形を使ったごっこ遊び(母子+メルちゃんの三項関係で心的状態を言語化する遊び)を1週間行ったところ、男児の言語発達スコアと「心の理論」(相手の心の状態を理解する能力)のスコアが最も大きく上昇しました。意外ですね。

つまり、人形のかんりゅう歌が持つ発達的な意義は、男女を問わず乳幼児全員に及びます。

具体的なねらいと効果は以下のとおりです。

発達領域 期待できる効果 対象年齢の目安
言語発達 歌詞を繰り返し聞いて語彙が増える、言葉のリズムが体に入る 0歳〜
情緒・共感性 人形の「気持ち」を代弁することで他者理解が深まる 1歳〜
社会性・コミュニケーション 3項関係(子・大人・人形)を通じて関係の複雑さを学ぶ 2歳〜
想像力表現力 人形に命を吹き込む遊びで創造性が育まれる 2歳〜
微細運動・リズム感 歌に合わせて人形を動かすことで手指の巧緻性が高まる 0歳〜

さらに、人形劇の研究(金城, 2009)では「人形劇を観た子どもはコミュニケーション行動が増加し、他者との情愛的結びつきが深まる」という結果も得られています。これは使えそうです。

保育士が歌いながら人形を動かすと、子どもは「人形が話している・動いている」と感じます。この「アニミズム的感覚」は3〜4歳の発達段階に自然に合致しており、だからこそ人形×歌は子どもを強力に惹きつけるのです。声のトーンや人形の動きのスピードを変えることで、子どもの注目を自在にコントロールできます。場面の切り替えに困ったら、まず人形を出す——これだけ覚えておけばOKです。

参考:慶應義塾大学との共同研究「人形遊びのこころの発達」についての公式資料

お人形遊びで育つ大事な心と、言葉の発達(メルちゃん公式 慶應義塾大学との共同研究)

人形のかんりゅう歌に合う手袋人形の作り方と選び方

人形のかんりゅう歌を保育で実践する際に、最も手軽に使えるのが「手袋シアター(手袋人形)」です。軍手やフェルト手袋を使って指先に人形をつける方法で、準備時間が短く、荷物がかさばらないのが大きな利点です。素材と道具はほぼ百円均一で揃えられます。

基本的な作り方の流れは以下のとおりです。

  • 🧤 素材の準備:フリース素材の手袋または白い軍手を用意。フリースは縫い目が目立ちにくくきれいに仕上がります。
  • ✂️ 顔パーツの制作:フェルト(3〜5mm厚)を小さく切り、目・鼻・口を作ります。目の大きさの目安は直径1cm(小指の爪ほど)。
  • 🪡 縫い付けまたはボンドで固定:安全のため、子どもが取り外せないよう手縫いでしっかり固定します。ボンドのみは摂食リスクがあるため注意が必要です。
  • 🐣 追加の特徴を付ける:耳、角、しっぽなどのパーツを追加するとキャラクターらしさが増します。フェルトは糸がほつれないので切りっぱなしでも使えます。

キャラクター選びについては、歌のテーマや子どもたちの好みに合わせるのが基本です。ただし、3歳以下の子どもを対象にする場合は「シンプルで表情が分かりやすいキャラクター」を選ぶと効果的です。表情が複雑すぎると、何を感じているのか子どもが読み取れず、感情の共有がうまくいかないことがあります。

人形を選ぶ際のポイントを3つまとめると、①目が大きくはっきりしている、②動かしたときに形が崩れにくい素材、③指の自由度を妨げない重さ・大きさ、になります。市販の手袋シアターキットも多く出回っており、保育の専門サイトで1セット500〜2,000円程度で購入可能です。時間がないときはキットに頼るのも立派な選択です。

歌に合わせた人形の動きのポイントとして特に重要なのが「アイコンタクト」です。人形を動かしながら、保育士が子どもの目を見ること——これによって「人形が子ども自身に語りかけている」という感覚が生まれます。人形の目線を子どもに向けることも忘れずに。人形に話しかけるのは保育士ではなく、あくまでも子どもたちである、という演出が鍵です。

参考:手袋シアターの作り方と保育活用法について詳しく解説しているサイト

手袋シアターの簡単な作り方!【ねらい・題材・手作りキットも紹介】(保育求人ラボ)

人形のかんりゅう歌の年齢別活用法(0歳〜5歳)

人形のかんりゅう歌は、発達段階に合った取り入れ方をするかどうかで、子どもの反応が大きく変わります。ここでは0〜5歳の各年齢層への活用ポイントを整理します。

  • 👶 0〜1歳(乳児クラス):この時期は視覚と聴覚への刺激が中心です。コントラストのはっきりした色の人形を、顔の30〜40cm前(はがきの横幅の約3倍程度の距離)でゆっくり動かしながら、リズムのある歌を低くゆったりとしたテンポで歌います。追視反応が起きれば「伝わっている」サインです。「あんよでタントントン」など、体のパーツを使う歌に合わせて人形の手足を動かすと喜ばれます。
  • 🐣 2〜3歳(1・2歳児クラス):「いないいないばあ」の要素を入れると効果的な年齢帯です。人形を布で隠してから「ばあ!」と出す動作を歌に合わせて繰り返すと、予測と期待から子どもが声を上げて喜びます。この段階から「人形の気持ちを代弁する」ことを始めると良いでしょう。「〇〇ちゃん、みんながきてくれてうれしいよ〜」と人形の口から言わせるだけで、子どもの感情応答が引き出されます。
  • 🌱 3〜4歳(3歳児クラス):想像力が急速に発達する時期です。人形の「名前」を子どもたちに決めてもらったり、「何が食べたいか」を人形に聞かせたりすることで、主体的な関わりが生まれます。歌の途中で人形が「困る」「悲しむ」場面を作り、「どうしたら助けてあげられる?」と子どもたちに投げかけると、思考力と共感性が同時に育まれます。これが条件です。
  • 🌳 4〜5歳(4・5歳児クラス):子どもたち自身が人形を使って歌や劇を演じる段階に入れます。保育士が手袋シアターを演じるのを見て覚えた歌を、今度は自分たちで人形を使って表現する活動へ発展させましょう。グループでの役割分担(歌う係・人形を動かす係)ができるようになるため、協調性や社会性の育成にもつながります。学芸会生活発表会への布石にもなります。

年齢を上がるごとに、保育士の役割は「演じる人」から「引き出す人」へと変化します。つまり演じ手から伴走者へのシフトが大切です。

なお、発達の個人差は大きいため、クラス全体の「平均的な反応」だけでなく、反応の薄い子が何に興味を持っているかを観察することも重要です。人形には「子どもの本音を引き出す力」があります。普段は保育士に話しかけにくいことも、人形を通じてなら言葉にしてくれることが少なくありません。

人形のかんりゅう歌の保育実践で保育士が陥りやすい落とし穴

「人形を使って歌えば子どもは自然に楽しんでくれる」と思っているとしたら、それは危険な思い込みです。現場経験豊富な保育士でも、実は人形×歌の使い方で無意識のうちに効果を半減させてしまっていることがあります。

最も多い落とし穴が「保育士自身が人形に注目しすぎて、子どもを見ていない」状態です。人形を動かすことに意識が向くと、子ども一人ひとりの表情や反応を見落としてしまいます。人形は「子どもを見るための道具」であって、「保育士が魅せるための道具」ではありません。その意識が原則です。

次に多いのが「歌のテンポが速すぎる」問題です。保育士の中には、緊張すると無意識にテンポが上がってしまう人がいます。0〜2歳の子どもが安心して聞けるテンポは、大人が「少し遅すぎるかも」と感じるくらいがちょうどよいとされています。メトロノームアプリなどで♩=72〜80程度を体に覚えさせておくと実践でも安定します。

また、「毎回同じ人形・同じ歌だから子どもが飽きてしまった」という悩みもよく聞きます。これに対しては、「歌は変えずに人形の役割を変える」という方法が有効です。同じ手袋人形でも、登場の仕方・声のトーン・物語の結末を変えるだけで、子どもにとっては全く新しい体験になります。ネタを大量に用意するより、1つの人形を多様に使いこなす技術を磨くほうが持続可能です。

さらに、見落とされがちなのが「人形のケア・衛生管理」です。手袋人形は子どもが触れたり口に入れようとすることもあります。フェルトの目のパーツが剥がれていないか、週に1回は必ず点検する習慣をつけましょう。万一パーツを誤飲すると深刻な事態を招きます。痛いですね。洗えない素材で作ってしまうと衛生管理が難しくなるため、なるべく洗濯機で丸洗いできる素材を選ぶことが重要です。

人形のかんりゅう歌を保育に取り入れるとき、最初の一歩として「月に1回、人形を使った歌の時間を設ける」ことをおすすめします。回数を増やすことより、まず「子どもの反応を観察する眼」を育てることが、保育の質を高める最短ルートです。

参考:保育における人形・人形劇の活用についての学術的な分析

手遊びの効果ってスゴイ!~子どもの心と体を育む活用のコツ(ほいく畑コラム)

以上を踏まえ、指定のHTMLフォーマットで完全版を出力します。


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