ワンワンの歌を保育に活かす方法と発達効果
ワンワンの歌をBGMとして流すだけでは、子どもの発達への効果は半分以下になります。
ワンワンの歌が保育に選ばれる理由と番組の背景
NHK Eテレ「いないいないばあっ!」は1996年4月1日に放送を開始し、現在まで30年近く続く長寿番組です。そのメインキャラクターである「ワンワン」は、俳優・声優のチョー(本名:長島茂)さんが番組開始当初から一貫して担当しています。チョーさんは1957年生まれの声優・俳優で、放送開始から現在まで約30年間ワンワンを演じ続けているという事実は、その一貫した愛着と子どもへの安心感につながっています。
この番組が保育現場でこれほど広く活用される理由は、制作の背景にあります。「いないいないばあっ!」はNHK内に1979年に発足した「二歳児テレビ番組研究会」の研究成果をベースに開発されました。発達心理学の専門家が携わり、乳幼児の反応を繰り返し検証しながら作られた番組です。つまり、子どもの発達に配慮した科学的根拠のある歌やコーナーが揃っています。
番組の制作コンセプトとして「映像と音で感覚に揺さぶりを与え、子どもたちの可能性を引き出す」ことが明言されています。主な視聴対象は0〜2歳の乳幼児で、この時期の発達特性として「擬音(オノマトペ)が大好き」という点が踏まえられており、歌の多くに「ワンワン」「ピカピカ」「ぐるぐる」といった擬音語が散りばめられています。これが原則です。
保育士にとっては、この制作背景を知っているだけで、曲の選び方や使い方に大きな差が生まれます。子どもが喜ぶ理由が「キャラクターが好きだから」ではなく、「発達段階に合った音・リズム・言葉が使われているから」だと理解できると、保育計画への組み込み方も変わってきます。
ワンワンの歌を「なんとなく流す」のではなく、意図を持って活用するのが大切です。
参考:NHK放送文化研究所 「いないいないばあっ!」のはじまり② ~どきどきあそび・擬音のうた~

(番組開発の経緯と1歳児の擬音好きの発達的背景について詳しく解説されています)
ワンワンの歌が乳幼児の発達にもたらす3つの効果
保育士が知っておくべき最初の視点は、「ワンワンの歌がなぜ効果的なのか」という根拠です。感覚・言語・運動の3つの発達への影響を理解することで、保育計画に根拠を持って組み込めます。
① 言語発達へのアプローチ
「ワンワン」「とんとん」「ぐるぐる」「ピカピカ」など、ワンワンの歌に散りばめられたオノマトペ(擬音語・擬態語)は、1歳前後の子どもの言語発達に特に効果的とされています。近畿大学の研究(2021年)によると、子どもの歌においてオノマトペは発音しやすく、記憶に残りやすい構造を持ち、語彙獲得の足がかりになることが示されています。発声器官がまだ発達途上の乳幼児でも「ワンワン」のような単純な音節の繰り返しは比較的発音しやすく、これが最初の発語を促します。
② 情緒安定・信頼関係の形成
一定のリズムと繰り返しフレーズは、乳幼児の心拍数や呼吸のリズムと同期しやすいとされています。胎内で聴いていた母親の心拍音に似た規則的なリズムが、赤ちゃんに安心感をもたらすためです。ワンワンの歌の多くはテンポが規則的で、サビのフレーズが繰り返される構造になっているため、聴き慣れた子どもは曲が流れた瞬間に情緒が安定しやすくなります。これは使えそうです。
③ 運動発達とリズム感の形成
「からだ☆ダンダン」「わ〜お!」「ぐるぐるどっか〜ん!」といったワンワンの歌は、ハイハイ・立つ・ジャンプなど、月齢に合った動きを歌詞と連動させています。0歳から2歳の時期は粗大運動(全身を使った大きな動き)が目覚ましく発達する時期であり、歌に合わせて体を動かすことでリズム感と運動能力が同時に育ちます。
つまり、ワンワンの歌は「娯楽」としてだけでなく、保育のねらいに直結した教育的ツールとして活用できます。
ワンワンの歌おすすめ曲と月齢別の活用ポイント
ワンワンの歌は番組の歴史が長いだけあって、楽曲数が非常に多くなっています。保育現場で活用しやすい代表的な曲を月齢・目的別に整理します。
0〜6ヶ月向け:感覚刺激と愛着形成
この時期は視覚・聴覚・触覚を優しく刺激することが大切です。歌に合わせて赤ちゃんの手や足をゆっくり動かす「やってあげる遊び」が基本です。ワンワンの歌の中では、テンポが比較的ゆっくりで音の種類が少ない曲が適しています。保育士が優しく歌いながら体に触れることで、愛着形成にもつながります。
| 曲名 | 特徴 | 活用シーン |
|---|---|---|
| ママから聞いたこと | 柔らかなリズムと擬音 | 抱っこしながら聴かせる |
| とんとんトマトちゃん | テンポよい繰り返し | 手遊びとセット |
6ヶ月〜1歳向け:模倣と感覚刺激
お座りやハイハイができる時期。音に反応して体を揺らしたり、保育士の動きをまねしようとしはじめます。「いないいないばあ」のコーナーと連動した曲は、この「予測→反応」の認知発達にも有効です。おすすめは「ピカピカブ〜!」で、ハイハイしながら動ける振り付けが発達段階に合っています。
1〜2歳向け:発語・模倣・運動の統合
語彙爆発が起きる時期です。この時期こそ、オノマトペ豊富なワンワンの歌が最も効果を発揮します。「わ〜お!」「からだ☆ダンダン」「ぐるぐるどっか〜ん!」は保育現場での運動会ダンスとしても人気が高く、子ども同士が一緒に動くことで社会性も育てられます。
🎵 1〜2歳向けおすすめ曲 3選
- わ〜お!:全身を使う動きが豊富。「わ〜お!」の掛け声で子どもが声を出しやすい
- ぐるぐるどっか〜ん!:ぐるぐる回る・どっかんと倒れる動きで体幹の発達を促す
- ピカピカブ〜!:「いないいないばあ」の動きが含まれており、予測能力と笑いを同時に引き出す
月齢に合った曲を選ぶことが条件です。
ワンワンの歌を保育活動に組み込む具体的なアイデア
知識として知っているだけでは保育は変わりません。実際に使えるアイデアを場面別にご紹介します。
朝の会・集まりの時間
子どもが登園してクラスに集まる時間帯は、気持ちを切り替えるきっかけが必要な場面です。毎朝同じワンワンの曲を流すことで、「この曲が流れたら集まる時間」という見通しが生まれます。これは生活リズムの安定に直結します。特に0〜1歳クラスでは、同じ曲を繰り返し使うことが重要で、NHKの番組制作方針でも「1週間同じ曲を繰り返す」構造が採用されています。その理由は、乳幼児は繰り返しによって記憶し、予測ができるようになってこそ安心感を得られるからです。
室内自由遊びのBGM
ただし、ここに落とし穴があります。ワンワンの歌は「BGMとして流しっぱなし」にすると、発達への効果が薄れる場合があります。乳幼児の聴覚特性として、BGMがあると言葉をうまく聞き取れないという発達研究の知見があります。NHKの番組自体も「言葉と音楽は重ねない」という制作方針をとっています。自由遊び中に流す場合は、保育士が一緒に口ずさんだり振り付けを見せたりすることで、子どもの注意を引き付けながら使うのが効果的です。
昼食前・午睡前の切り替え
活動から食事・睡眠への切り替えには、テンポが穏やかな曲が適しています。「ピカピカブ〜!」などの少しゆったりした曲を選び、保育士が静かに口ずさみながら片付けを促すと、子どもも自然に気持ちを落ち着かせやすくなります。一定のリズムが心拍数の安定を促す効果がここで活きます。
運動会・発表会の出し物
「わ〜お!」「ぐるぐるどっか〜ん!」「ちびっこマンたいそう」は、保育園の運動会ダンスとして長年人気を保っています。これらの曲を選ぶメリットは、子どもがすでに保育中に馴染んでいるため、練習時間を短縮できることです。慣れ親しんだ曲が流れると子どもが自然と動き出す、というのが本来の姿ですね。
参考:保育園・幼稚園の運動会で人気のいないいないばあっ!曲まとめ
(保育現場で実際に使われているいないいないばあっ!曲の活用例が具体的に紹介されています)
保育士だけが知るべきワンワンの歌の使い方の盲点
ここでは、一般的な記事には書かれていない視点をお伝えします。保育士歴の長い現場の先輩でも見落としがちなポイントです。
「聴かせる」より「一緒にやる」がカギ
ワンワンの歌は、保育士が子どもの前で一緒に歌い・動くことで初めて最大の効果が発揮されます。乳幼児は「模倣」によって多くを学びます。特に1歳前後は「鏡神経細胞(ミラーニューロン)」が活発に働く時期で、目の前の大人の動きをコピーしようとします。保育士がノリノリで振り付けをやって見せることで、子どもは「楽しい活動」として記憶し、次回も積極的に参加するようになります。つまり保育士の姿勢が鍵です。
同じ曲を「飽きたら変える」のは逆効果の可能性
大人の感覚では「同じ曲ばかりでは子どもも飽きるだろう」と思いがちです。しかし乳幼児の発達においては、繰り返しは学習の基本です。NHKが番組制作において「1週間同じ曲を繰り返す」構造を採用しているのも、この発達特性に基づいています。同じ曲を何度も聴くことで、子どもは曲の構造を予測できるようになり、その予測が当たるたびに喜びを感じます。これが認知発達と情緒安定につながります。
保育室でのYouTube活用は「見せ方」が重要
ワンワンの歌はYouTubeでも「いないいないばあっ!公式チャンネル」や「うたスタ」などでカバー動画を含め多数配信されています。保育室でYouTubeの動画を活用する際に注意したいのは、画面への「受け身視聴」ではなく、動画をきっかけに「一緒に動く」ことを促すことです。画面の前で静かに座って見るだけでは、体を動かす発達機会が失われます。動画をスタートしたら保育士も一緒に立ち上がり、振り付けを見せましょう。これが条件です。
保護者への情報共有に活用する
ワンワンの歌が子どもの発達に役立つ理由を保護者に伝えることで、家庭でも継続的に活用してもらえます。「この曲は語彙発達に効果的ですよ」「一緒に歌いながら手を動かしてみてください」と、一言添えるだけで保護者の向き合い方が変わります。保育園と家庭が連携することで、発達支援の効果は格段に高まります。これは保育士ならではの大切なアプローチです。
参考:保育にオノマトペを使うとどんな効果がある?
(オノマトペが乳幼児の言語発達や感覚理解に与える効果について詳しく解説されています)
ワンワンの歌を手遊び・わらべうたと組み合わせるアイデア
ワンワンの歌だけに頼る必要はありません。手遊び・わらべうたと組み合わせることで、活動の幅が一気に広がります。意外ですね。
ワンワンの歌 vs わらべうた:それぞれの強み
| ワンワンの歌 | わらべうた | |
|---|---|---|
| テンポ | やや速め・にぎやか | ゆったり・穏やか |
| 適した場面 | 運動・集団活動・切り替え | スキンシップ・寝かしつけ前 |
| 音域 | 広め | 狭く乳幼児に歌いやすい |
| 特徴 | オノマトペ豊富で発語を促す | 体への触れ合いで愛着形成を深める |
どちらが優れているという話ではなく、場面や目的によって使い分けるのが原則です。
具体的な組み合わせアイデア
🎶 朝の会の流れ(例)
- ワンワンの歌で集まりを促す(「わ〜お!」など元気な曲)
- 手遊び歌で体を動かしながら集中を引き出す
- わらべうたで静かに落ち着く時間へ移行
この流れで「活動→切り替え」がスムーズになります。
「いないいないばあ」わらべうたとの親和性
「いないいない…ばあ!」という動きはわらべうたにも登場します。ワンワンの番組タイトルそのものが「いないいないばあっ!」ですから、番組で親しんだ動きをわらべうたとして保育士が直接子どもに向けて行うことで、「テレビの中の遊び」が「先生との遊び」になります。これは子どもにとって特別な喜びにつながります。0〜6ヶ月の赤ちゃんでも保育士の顔が突然現れる「ばあ!」に笑顔で反応します。
「一緒に動く」という体験が、子どもの記憶に刻まれます。
参考:わらべうた遊びで楽しく遊ぼう!子どもが大好きなおすすめわらべうた

(わらべうたの種類と保育における活用法が詳しくまとめられています)

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