ブタのうた歌を保育で活かす手遊び・童謡の選び方と活用法
「ブタのうた」を毎回同じように歌っていると、子どもの語彙力が育ちにくくなります。
ブタのうた歌の代表曲と歌詞の特徴
保育現場で「ブタのうた」として親しまれている曲は、実は一つではありません。代表的なものだけでも「こぶたぬきつねこ」「こぶたのさんぽ」「さっとにげました」「ぶーぶーぶー(わらべうた)」など複数の系統があります。それぞれ雰囲気や対象年齢が異なるため、正しく把握しておくことが保育の幅を広げる第一歩です。
まず保育現場で最も使われる定番曲「こぶたぬきつねこ」を見てみましょう。作詞・作曲は、映画「男はつらいよ」主題歌や「一年生になったら」なども手掛けた音楽家・山本直純(やまもとなおずみ)氏(1932〜2002年)です。山本氏が作詞まで手掛けたのはこの曲では珍しいケースで、「こぶた(a)・たぬき(i)・きつね(e)・ねこ(o)」と、語尾が母音の「あいうえお」順になっているという言語的な仕掛けが施されています。しりとりのようにループする曲名の構造も、子どもの記憶に残りやすい設計です。
「こぶたのさんぽ」は、散歩中のこぶたが首・耳・鼻・口を伸ばしてキリン・ウサギ・ゾウ・カバへ変身してしまうという4番構成の手遊び歌です。各番で「うそ!」と言って元に戻るオチのある構造が子どもたちに大ウケします。振り付けは体の各部位を伸ばす動作が入るため、全身を使った表現活動にも発展しやすい曲です。
「さっとにげました」は、ぶたの父さん・母さん・兄さん・姉さん・赤ちゃんの5番構成で、はらぺこオオカミから家族が逃げるという緊迫のストーリー展開が特徴です。「まてまて やだやだ まてまて やだやだ さっとにげました ジェッ」という繰り返しフレーズが耳に残り、3歳以上の幼児が特に盛り上がる人気曲として知られています。
乳児(0〜2歳)向けには「ぶーぶーぶー」というわらべうたがあります。シンプルな音とぶたの鳴き声を模倣するだけの短い内容ですが、保育者が子どもと目を合わせて一緒に声を出す「ふれあい遊び」として、愛着形成に直結する歌です。つまり年齢によって選ぶべき曲が変わります。
| 曲名 | 適齢 | 特徴 |
|---|---|---|
| ぶーぶーぶー(わらべうた) | 0〜2歳 | 短くシンプル・ふれあい遊び向け |
| こぶたのさんぽ | 2〜5歳 | 全身を使った変身遊び・4番構成 |
| こぶたぬきつねこ | 3〜5歳 | しりとり×動物まねが楽しい定番曲 |
| さっとにげました | 3〜5歳 | 家族・ストーリー展開・ハラハラ感 |
参考:「こぶたぬきつねこ」の楽曲情報・作詞作曲者の詳細はこちら
こぶたぬきつねこ 子供の歌・動物のうた – 世界の民謡・童謡
ブタのうた歌の振り付けと保育での正しいやり方
ブタのうたを保育で使うとき、振り付けを「なんとなく知っている」程度でとどまっている保育士も多いのが現実です。しかし振り付けの精度は、子どもが真似しやすいかどうかに直結します。子どもの注目を確実に引くためにも、各曲の振り付けを正確に把握しておきましょう。
「こぶたぬきつねこ」の振り付けは、各動物の鳴き声に合わせて両手・両腕を使ったものまね動作が基本です。こぶた(ブブブー)では鼻を押さえて横に振る、たぬき(ポンポコポン)ではおなかをたたく、きつね(コンコン)では両手を顔の横で耳のように立てる、ねこ(ニャー)では頬に手を添えてひげを表現するなど、直感的にわかりやすい動きで構成されています。同じ歌詞を繰り返す際に「テンポを上げる」「声を小さくする」「動きを大きくする」といったバリエーションをつけることが保育現場での定番の盛り上げ方です。
「こぶたのさんぽ」では「くびがのびて のびて のびて のびて」と4回繰り返すたびに、首・耳・鼻・口をゆっくり伸ばしていくパントマイム的な動作を行います。「うそ!」でしゅるっと元に戻る動きのメリハリが重要です。各番の動物に合わせて「キリンのまね」「ゾウのまね」を楽しむ要素もあるため、表現力の育成につながりやすい曲といえます。
「さっとにげました」では、「ぶちゃぶちゃぶちゃぶちゃ」のフレーズに合わせて手をぶちゃぶちゃと揺らし、「まてまて」で追いかけるポーズ、「やだやだ」で首を横に振る動作、「さっとにげました」で素早く手を引っ込める動きが特徴的です。各番でぶたの「家族の誰か」に変わるため、5番を通じてお話が完結する達成感があります。
振り付けのポイントは以下の3点に集約されます。
- 🐽 動きにメリハリをつける:大きい動き・小さい動き・早い・遅いをはっきり分ける
- 👁️ 子どもと目線を合わせる:保育士が笑顔で子どもを見ながら行うと安心感が生まれる
- 🔄 繰り返しの中で変化を加える:同じ曲でもテンポやダイナミクスを変えると子どもが飽きない
参考:保育士実演の「こぶたのさんぽ」歌詞と詳細はこちら
ブタのうた歌が子どもの発達に与えるねらいと効果
ブタのうたを保育に取り入れることには、単に「子どもを楽しませる」以上の発達的な意義があります。手遊び歌が子どもの発達に与える効果については、国内外で複数の研究が行われており、その有用性は学術的にも認められています。
まず言語発達の面では、繰り返しの多い歌詞が語彙の定着を促します。「さっとにげました」のような家族の名称(とうさん・かあさん・にいさん・ねえさん・あかちゃん)が歌詞に登場する曲は、日常語の習得にも直結しています。「こぶたのさんぽ」では首・耳・鼻・口・キリン・ゾウ・ウサギ・カバと、1曲で多くの語彙に自然に触れることができます。
運動発達の観点では、「手を動かすと脳の血流が約10%程度上がる」という研究結果(EYS Kids音楽教室調べ)があり、指先を細かく動かすことで脳の活性化と手先の器用さが養われると言われています。こぶたのうたの手遊びは、全身を使うものから指先の細かい動作まで幅広く含まれているため、クラス全体の発達段階に合わせやすいのも特徴です。
社会性の発達においても、手遊び歌は大切な役割を果たします。保育士と子どもが向かい合って「同じ動き・同じ歌」を共有する体験は、共感力と信頼関係を育む基盤になります。これは特に0〜2歳の乳児期において愛着形成に直結するプロセスです。目と目を合わせることが重要です。
感情表現の発達という視点も見落とせません。「うそ!」という大げさな反応を楽しむ「こぶたのさんぽ」、ハラハラのオオカミから逃げる「さっとにげました」など、感情を声・表情・体の動きで表現する機会が豊富です。これは情緒の発達を促すとともに、演じることへの抵抗感をなくし、将来の劇あそびや発表会への素地を作ります。
大阪芸術大学の研究では、「手遊びをすることで言葉の発達や数の理解を助け、旋律の記憶・拍子感・リズムの記憶といった経験ができる」と報告されています。これらは動きを伴うことで子どもにとって確かな体験として定着しやすくなります。楽しみながら習得できる点が最大の強みです。
参考:手遊び歌の効果に関する学術的な考察はこちら
ブタのうた歌を年齢別・場面別に使い分けるコツ
同じ「ブタのうた」でも、使う場面と年齢を意識するだけで子どもたちへの響き方が大きく変わります。むやみに披露するよりも、場面に合った曲を選んで使う方が、保育の流れがスムーズになります。
0〜1歳(乳児前半)の子どもには、「ぶーぶーぶー」のような音の短いわらべうたが向いています。保育士がゆっくりと子どもの顔を見ながら歌いかける「ふれあい遊び」として使うのが効果的です。この時期は歌詞の意味よりも「心地よいリズムと声の響き」を楽しむ段階にあるため、音の選択よりも保育士の表情や視線の方が重要です。
2〜3歳(乳児後半〜幼児前半)には「こぶたのさんぽ」が最適です。変身というシンプルなストーリーが理解できるようになり、「うそ!」というオチに笑って反応できる年齢です。言葉の発達が急速に進む時期でもあるため、動物の名称や体の部位を歌で繰り返すことで語彙がぐんと増えます。絵本「ぶたたぬききつねねこ」(馬場のぼる著・こぐま社)との連携もおすすめです。
3〜5歳(幼児期)になると「こぶたぬきつねこ」や「さっとにげました」が本領を発揮します。「こぶたぬきつねこ」は朝の会の導入・絵本の前の注目集め・帰りの会など、あらゆるシーンで使いやすい万能曲です。テンポを徐々に速くしていく変化技が子どもたちを盛り上げ、繰り返すうちに自然と曲を覚えます。一方「さっとにげました」は、5番の家族構成と明確なストーリーがあるため、「今日は5番まで全部やろう!」という意欲を引き出す使い方ができます。
活動の切り替え場面で手遊び歌を使うことも、保育の質を高める効果的な方法です。自由遊びから次の活動へ移るとき、子どもが全員保育士に注目するまで時間がかかることがあります。そのタイミングで「こぶたぬきつねこ」をゆっくり始めると、子どもたちが自然と集まってくる場面が多く報告されています。これが使えると便利です。
- 🌅 朝の会:テンポを一定に保った「こぶたぬきつねこ」で気持ちを整える
- 🍱 昼食前:短い「ぶーぶーぶー」で食事へのワクワク感を高める
- 📚 絵本の前:「さっとにげました」などストーリー系で集中力を引き出す
- 🔄 活動の切り替え:「こぶたのさんぽ」で体を動かしつつ次の活動へ誘導する
参考:保育の導入に役立つ手遊びの活用場面についての解説はこちら
保育の導入に!超簡単な手遊び・声かけ4選 – 保育コレクション
ブタのうた歌を広げる独自視点:スケッチブックシアターとの組み合わせ
ブタのうたの手遊び歌を「ただ歌う」だけで終わらせていると、子どもたちの関心は数週間もすれば薄れてしまいます。これは保育の現場でよく起きる悩みです。そこで注目したいのが「スケッチブックシアター」との組み合わせという活用法です。
スケッチブックシアターとは、スケッチブック(画用紙のノート)のページをめくりながら物語や歌を視覚的に展開する手作り教材です。「こぶたがみちを」の歌詞に合わせてぶたさんが歩き、次のページをめくるとキリンやゾウに変身する絵が現れる…という演出が可能です。手遊びだけでは視覚的な刺激が不足しがちな2〜3歳クラスでも、目と耳の両方を使って楽しむことができます。
制作にはスケッチブック1冊・色鉛筆やマーカー・定規があれば作れるため、材料費は300〜500円程度と非常に手軽です。作り方は1ページにつき1場面を描くだけというシンプルな構造なので、保育実習中の学生でも対応できます。完成したシアターはラミネート加工(1枚あたり約30〜50円)しておくと耐久性が格段に上がり、長期間繰り返し使えます。
スケッチブックシアターを使った「ブタのうた」活動は、以下のような発展につながります。
まずシアターを見ながら歌うことで、「絵を見る力(観察力)」と「歌を覚える力(記憶力)」が同時に鍛えられます。次に「次は何のページかな?」という期待感から、子どもたちが自然と前のめりになり、注意の持続時間が延びる効果があります。さらに4〜5歳クラスでは、子ども自身がページをめくる役を担当したり、自分でシアターの絵を描く活動(描画・造形)に発展させることもできます。これはかなり使えます。
もう一つの独自活用として「お面制作」があります。「こぶたぬきつねこ」に登場する4匹(こぶた・たぬき・きつね・ねこ)のお面を子どもが自分で色塗りして作り、それを付けて歌う活動です。ほいくis(保育専門情報サイト)では「こぶた・たぬき・きつね・ねこのお面キット(PDF)」を無料ダウンロード提供しており、印刷して使えるため準備の手間が省けます。お面制作を通じて手先の器用さも育まれるため、一石二鳥の活動といえます。
参考:「こぶたぬきつねこ」のお面無料ダウンロードと保育士実演はこちら


