カブトムシのうた・歌を保育で活かすすべてのポイント
「カブトムシのうた」は、歌詞を間違えて教えると子どもの自然理解が1年分遅れることがあります。
カブトムシのうた・歌の種類と歌詞の内容をおさらい
「カブトムシのうた」と聞いて、保育士がまず思い浮かべるのはどの曲でしょうか? 実は「カブトムシのうた」という名前の歌は1曲だけではなく、保育現場で使われる代表的なものだけでも複数存在します。それぞれの歌詞の内容や成り立ちを把握しておくことが、保育活動の質を高める第一歩です。
まず有名なのが、関根栄一 作詞・湯山昭 作曲の童謡「かぶと虫」です。「じゃまな かぶとなんかなんのはずみで かぶったか ぬげるものなら ぬぎたい かぶとかぶとむし むしむしむし」という歌詞で、カブトムシの角(ツノ)を兜(かぶと)に見立てたユニークな内容です。昭和の童謡として長く親しまれてきた1曲で、リズムがコミカルで子どもが声に出して楽しみやすい構成になっています。
次に、近年保育現場で非常によく使われているのが、「ゆめある」制作の「へんしん!カブトムシのうた」です。この曲は「へんしん へんしん カブトムシ」というサビを中心に、卵・幼虫・さなぎ・成虫という4つの成長段階をそのまま歌詞に盛り込んでいます。「たまご ちいさく しろく ほそながい/まるく ふくらみ ちゃいろくなる」「ようちゅう 2かい だっぴして おおきくなる/おおきな アゴで つちたべる」という歌詞は、科学的な正確さを持ちながら幼児にわかりやすい言葉でまとめられています。作詞・アニメはゆめある、作曲はスズキカヒロ氏が手がけており、振り付けバージョンのYouTube動画は保育士・教師向けに広く活用されています。
また、「とんとんとんとんカブトムシ」は「ひげじいさん」の替え歌形式の手遊び歌で、簡単な動作と合わせて乳児クラスや1〜2歳児でも楽しめます。特定の作者がいるというよりも、保育現場で語り継がれてきた遊び歌の一種です。
これら3種類は役割が異なります。関根・湯山版の童謡は「歌として楽しむ」用途に向き、「へんしん!カブトムシのうた」は「学びと歌を組み合わせる」知育的な活用に最適で、「とんとんとんとんカブトムシ」は「乳幼児の手遊びのきっかけづくり」に使いやすい曲です。保育士として3種類の特徴を把握しておくと、場面や年齢に合わせて使い分けができます。これが基本です。
以下のリンクでは「へんしん!カブトムシのうた」の歌詞と振り付けを確認できます。保育計画を立てる際の参考にしてください。
「カブトムシのうた」振り付けと歌詞全文(ゆめある公式サイト)
カブトムシのうたが伝える完全変態・生態の正確な知識
「へんしん!カブトムシのうた」が優れているのは、歌詞がカブトムシの生態を正確に反映している点です。保育士としてこの内容を子どもに伝えるためには、歌詞の背景にある生態知識を自分自身が理解しておくことが重要になります。
カブトムシは「完全変態」をおこなう昆虫です。卵→幼虫→さなぎ→成虫という4段階を経て成長します。この4段階を踏む昆虫は、既知の昆虫全体の実に約75%を占めます(日本経済新聞「昆虫の変態とは何か?」より)。チョウ、カブトムシ、ハチ、アリなどが完全変態の代表例で、バッタやトンボのようにさなぎを経ない「不完全変態」とは区別されます。
各段階の特徴をまとめると以下の通りです。
- 🥚 卵:大きさ2〜5mm、白くて細長い形。産卵から10日ほどで孵化します。歌詞の「ちいさく しろく ほそながい」は正確な描写です。
- 🐛 幼虫:孵化後、2回の脱皮(1令→2令→3令)を繰り返して成長します。3令幼虫では体長が最大8〜12cmほどに(はがきの横幅くらい)なります。腐葉土や土を食べながら冬を越し、約10か月ほど幼虫として過ごします。
- 🫙 さなぎ:土の中に「蛹室(ようしつ)」という部屋を作り、約3週間かけてその中でじっと成虫の体を形成します。この期間はほぼ動きません。
- 🪲 成虫:羽化後は6月〜8月にかけて活動し、寿命は成虫になってから約2か月程度です。体の硬さと光沢が特徴的で、オスのツノで戦う姿は子どもに強い印象を与えます。
「さなぎ ほとんど うごかず せいちゅうの からだに つくり かえている」という歌詞は、さなぎが外見上静止しているように見えながら、内部では劇的な体の再構成をおこなっているという事実を的確に表現しています。これは子どもにとって「不思議さ」を感じるポイントであり、保育士が言葉を添えて「外は動いてないけど、中でからだが全部作り変わっているんだよ」と補足するだけで理解が深まります。
歌詞の正確さを知っておくと、保育士として自信を持って活動に臨めます。
なお、カブトムシの変態や生態について子どもと一緒に調べるための参考として、東京ズーネット(多摩動物公園)の解説ページが役立ちます。
東京ズーネット「冬でもカブトムシ!」カブトムシの成長段階をわかりやすく解説(公式)
カブトムシのうたを使った保育活動のねらいと年齢別の活かし方
保育園で「カブトムシのうた」を取り入れるとき、大切なのは「何のために歌うのか」というねらいを意識することです。ただ楽しく歌うだけでも子どもにとっては豊かな経験ですが、ねらいを設定することで活動の深みが変わります。
3歳未満(乳児・1〜2歳) の場合は、「とんとんとんとんカブトムシ」のような手遊び歌が適しています。ねらいは「音とリズムを体で感じる」「保育士とのやりとりを楽しむ」の2点が中心です。この年齢では歌詞の内容理解よりも、声のリズムや手の動きの模倣が発達的に意義のある経験になります。
3〜4歳(年少・年中) では、「へんしん!カブトムシのうた」の振り付けバージョンへの移行が自然です。ねらいは「歌詞のイメージを体の動きで表す」「カブトムシの名前・姿に親しむ」が中心になります。この年齢から、歌詞に含まれる「たまご・ようちゅう・さなぎ・せいちゅう」という言葉を絵カードと合わせて見せると、語彙の獲得が促されます。
5歳(年長) になると、歌詞の意味を考えながら表現することができるようになります。ねらいは「完全変態という生命のしくみへの関心を持つ」「歌と知識をつなげて理解する」へと発展させることができます。絵本や図鑑と組み合わせて、「歌に出てきた順番に並べてみよう」という活動にすることで、知的な探究心を引き出せます。
保育のねらいを年齢に合わせて変えることが大切です。
活動のバリエーションとして、以下も有効です。
- 🎨 制作と組み合わせる:折り紙や画用紙でカブトムシの4つの成長段階を作り、歌の順番に並べる。
- 📷 映像と組み合わせる:「ゆめある」のYouTube動画を流しながら一緒に踊る。視覚・聴覚・身体感覚が同時に刺激される。
- 📚 絵本と組み合わせる:カブトムシを扱った絵本を読んだあとに歌を歌うと、物語と歌がつながり記憶に残りやすくなる。
カブトムシのうた・歌が子どもの発達に与える効果(科学的背景)
「楽しいから歌う」だけでも十分ですが、歌が子どもの発達に与える効果を知っておくと、保護者への説明や保育計画の根拠として使えます。意外な事実ですが、歌とリズムは言語発達の主要なドライバーの一つとして研究でも支持されています。
言語・語彙の発達については、国立音楽大学などの研究でも「歌の中の言葉は旋律に助けられ、子どもの語彙獲得を促す」と指摘されています(芦屋大学紀要より)。「へんしん!カブトムシのうた」の場合、「だっぴ(脱皮)」「せいちゅう(成虫)」「ようちゅう(幼虫)」という難易度の高い単語が、歌のリズムに乗ることで自然と記憶されやすくなります。通常の会話だけでは3〜4歳児が覚えにくいこれらの語句が、繰り返しのサビとともに定着するのです。
リズム感と身体協調性については、鹿児島大学の実践的研究(2021年)において「手遊びは保育の5領域すべてにわたって有用性がある」と報告されています。歌に合わせて体を動かすことは、単なる運動にとどまらず、音とタイミングを合わせる「拍感覚」の形成にもつながります。
感情の安定と社会性については、東洋大学の研究で「保護者が歌いかけることで乳児の音声知覚・認知が発達する」と報告されており、保育士が感情を込めて歌うことは、子どもの情緒的安定に直接影響することが示されています。
つまり「カブトムシのうた」を歌うことは、楽しさだけでなく、語彙・リズム・感情の3つの発達に同時に働きかける活動だということです。これは使えそうです。
保育に音楽活動を取り入れる意義については、以下の資料が参考になります。
芦屋大学「幼児の表現活動を支える保育者の歌唱についての一考察」(PDF・研究論文)
保育士だけが知っておきたいカブトムシのうた・歌の独自活用術
保育士向けのサイトやYouTubeでよく紹介されているのは「振り付けを覚えよう」「歌詞を確認しよう」という内容がほとんどです。ところが、「歌をどう保育の流れに組み込むか」という視点まで言及されることは少ないのが現状です。ここでは現場で実際に役立つ、少し踏み込んだ活用法を紹介します。
①「移行場面」でのブリッジとして使う
保育現場では、活動から活動への切り替えが難しい場面があります。例えば外遊びから室内活動に戻るとき、子どもたちの気持ちを切り替えるきっかけとして「とんとんとんとんカブトムシ」を1曲歌うことで、自然に注目を集めることができます。歌によって「次の活動が始まる」という合図になるため、声を張り上げなくても静かな移行が実現します。これが実践的な効果です。
②「夏の虫さがし活動」の前後につなぐ
6月〜7月の保育活動で虫さがしや虫観察をおこなう際、活動前に「へんしん!カブトムシのうた」を歌うことで、「今日は何を見に行くのか」という目的意識が子どもの中で高まります。また観察後に再び歌うことで、「見てきたものが歌詞と一致する」という経験が記憶の定着を助けます。歌が観察の「前後の枠組み」になるわけです。
③ 歌のあとに「問い」を投げかける
「ようちゅうは 2かい だっぴして おおきくなる」という歌詞を歌ったあとに、「脱皮って何だろう?自分たちの皮もむけるかな?」と問いかけることで、子どもから自然な疑問が生まれます。この「歌→問い→気づき」という流れは、科学的思考の芽生えにつながります。5歳児クラスでは特に有効なアプローチです。
④ ボーカロイド英語版を紹介する
「ゆめある」チャンネルには「カブトムシのうた」の英語版(ボーカロイド)も存在します。年長クラスや英語教育に取り組む園で「同じ歌なのに言葉が違う」という体験をさせると、言語への興味のきっかけになります。日英の歌詞を比べる活動は、外国語への自然な興味を引き出す入り口として活用できます。
⑤「うたカード」として掲示する
歌詞の各ステージ(たまご・ようちゅう・さなぎ・せいちゅう)をイラストカードにして壁面に掲示しておくと、歌を歌う際にカードを指差しながら確認できます。視覚と聴覚を同時に使うことで、発達段階に個人差がある子どもたちも、それぞれのペースで内容を理解できます。絵カードの準備が難しい場合は「ゆめある」のYouTube動画のアニメが代替として使えます。
保育活動の「その先」を工夫することが、歌の教育効果を何倍にも高めるということです。


