やまのおんがくか歌で育む子どもの音楽表現と保育のねらい

やまのおんがくかの歌を保育に活かすねらいと実践ガイド

「やまのおんがくか」の歌詞に出てくる動物は、原曲のドイツ民謡には一匹も登場しない。

この記事でわかること
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歌の成り立ちと歌詞を完全理解

ドイツ民謡が原曲の「やまのおんがくか」。1964年にNHK「みんなのうた」で広まった歴史や、全5番の歌詞の内容を解説します。

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年齢別ねらいと振り付きのコツ

2歳児から5歳児まで、発達段階に合ったねらいの立て方と、子どもが自然に体を動かしたくなる振り付けのポイントを紹介します。

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合奏・発展活動のアイデア

カスタネット・タンバリン・鈴などを使った合奏への展開方法や、オリジナルの動物を考える創作活動まで、保育にそのまま使えるアイデアをまとめました。

やまのおんがくかの歌の成り立ちと原曲の意外な事実

 

「やまのおんがくか」は保育園・幼稚園でほぼ必ずと言っていいほど歌われる定番の童謡です。しかしこの歌には、保育士でもあまり知らない意外な背景があります。

原曲はドイツの民謡「Ich bin ein Musikante(私は音楽家)」で、シュヴァーベン地方の音楽家が自分たちの演奏技術を披露するという内容です。つまり原曲には動物が一匹も出てきません。リスもウサギも小鳥もタヌキも、すべて日本語詞を書いた水田詩仙(本名:黒沢隆朝)によるオリジナルの創作です。これはかなり意外ですね。

日本に広まったきっかけは1964年4月、NHKの音楽番組みんなのうた」での放送です。ダークダックスが歌い、服部克久が編曲したバージョンが全国に流れ、保育・教育の現場で一気に定着しました。放送から60年以上が経ったいまも色あせない人気を誇る理由は、繰り返し構造と擬音の豊かさにあります。

原曲ドイツ語版では「トランペット・バイオリン・ティンパニ・クラリネットフルート・ピアノ・トライアングル・ファゴット・ドラム」と9種の楽器が登場します。水田版(日本語詞)はこれを子ども向けに再構成し、山の動物4種と身近な楽器に絞っています。この「身近さへの翻案」こそが、幼児の想像力と合致した最大の理由と言えるでしょう。

参考:原曲「Ich bin ein Musikante」の歌詞内容と国際的な派生曲について

世界の民謡・童謡「山の音楽家 原曲 Ich bin ein musikante」

やまのおんがくかの歌詞と全5番の内容を完全解説

多くの保育現場では1番・2番・3番までで止めていることが少なくありません。じつは全部で5番まであります。

各番の内容を整理すると次のとおりです。

登場キャラクター 楽器 擬音
1番 山のこりす バイオリン キュキュキュッキュッキュ
2番 山のうさぎ ピアノ ポポポロンポロンポロン
3番 山のことり フルート ピピピッピッピ
4番 山のたぬき 太鼓 ポコポンポコポン
5番 山の仲間みんな 合奏 タタタンタンタン

歌詞の構造は「わたしゃ音楽家 山の〇〇 じょうずに〇〇をひいてみましょう」→擬音(楽器の音)→「いかがです」という繰り返しになっています。この繰り返し構造が、子どもが次の番の予測を立てながら歌える「予測可能な楽しさ」を生み出しています。

5番で「みんな一緒に合奏」という展開になる点も非常によくできた構成です。クラス全員で合奏するフィナーレにそのまま使えるからです。3歳児クラスの発表会などで、1〜4番を各グループが担当し5番で全員合流するという構成は、保育現場での実践例としてよく紹介されています。つまり発表会への展開が、歌の構造と自然に一致しているということですね。

歌詞のポイントをもう一つ押さえておきましょう。各番の最後に「いかがです」という問いかけが来ます。この一言は、子どもが「ねえ、どうだった?」と聴衆に誇らしく問いかける場面を生み出します。自己表現と他者への意識を同時に育てる仕掛けが、わずか3文字に込められています。

やまのおんがくかの歌における年齢別ねらいと導入のポイント

「やまのおんがくか」は2歳児から5歳児まで対応できる懐の深い歌です。ただし同じやり方でどの年齢にも使うのはもったいないです。年齢ごとに「ねらい」と「導入の仕方」を変えることで、その効果は大きく変わります。

  • 🐿️ 2歳児:擬音に合わせて体を動かす「模倣遊び」からスタートします。「キュキュキュ」「ポコポン」などの音声模倣は、言語発達と聴覚刺激を同時に行える活動です。ぬいぐるみや動物の絵カードを使いながら「今日はリスさんが来たよ!」と語りかけると、子どもたちの目が輝きます。
  • 🐰 3歳児:動物と楽器の対応関係を意識しながら歌えるようになる時期です。「うさぎはどんな楽器?」と問いかけることで、言語的な思考と音楽的なイメージを結びつける活動になります。実際にカスタネットや鈴を持たせて、擬音部分だけ鳴らす練習も効果的です。
  • 🎵 4歳児:楽器ごとに動作を工夫するなど、より創造的な表現遊びへ発展させる段階です。バイオリンを弓で弾くしぐさ、ピアノを弾く指の動き、フルートを吹く口元の動作など、それぞれのキャラクターになりきる「なりきり表現」が豊かになる年齢です。
  • 🥁 5歳児:「山の動物じゃなくて、自分たちで新しいキャラクターを考えてみよう」という創作活動に発展させることができます。「キリンはトロンボーン」「カエルはカスタネット」など、子どもたちが自分で考えた動物と楽器のペアは、想像力と言語表現の両方を鍛えます。

年齢別指導で特に注意したいのは、4歳ごろからリズムへの同期(テンポに合わせて体を動かす)が本格的に発達し始めるという点です。九州大学や城南大学の研究によると、乳児の脳は生後3〜4か月の時点で音楽と相互作用する準備ができている一方、リズムへの正確な同期は3〜4歳でも難しく、5〜6歳でも十分には発達しきっていないとされています。これが基本です。

つまり「2歳児なのにリズムが合わない」と焦る必要はまったくありません。擬音の声の出し方を楽しむことそのものが、正しいねらいに合致しているということです。

参考:幼児の音楽表現と指導法に関する専門的内容

幼児が音楽を通して表現することについて(文京学院大学紀要・PDF)

やまのおんがくかの振り付きと手遊びの具体的なやり方

「やまのおんがくか」の振り付きは、各動物が楽器を演奏する動きを体で表現するのが基本です。動作を決めすぎず、子どもが「自分ならどう弾く?」と考える余地を残すと、表現力が大きく育ちます。

各番の基本的な動作イメージは次のとおりです。

  • 🎻 1番(バイオリン):左腕を水平に伸ばして「弓を持つ手」を右でこするようにする。「キュキュキュ」の部分でテンポに合わせて腕を動かす。
  • 🎹 2番(ピアノ):両手を胸の前に出し、指を動かして鍵盤を弾くしぐさ。「ポポポロン」で指を細かく動かすと子どもが喜ぶ。
  • 🎶 3番(フルート):両手を横笛を持つように口元に当て、「ピピピ」でほっぺを膨らませながら吹くしぐさ。
  • 🥁 4番(太鼓):両手でバチを持つしぐさをして「ポコポン」のリズムでたたく動作。体全体でリズムをとると盛り上がる。
  • 🎊 5番(合奏):1〜4番の動作を交えながら全員で体を動かす「お祭り感覚」で締めくくる。

導入のタイミングについて、よく「歌を完全に覚えてから振り付けを教える」という順番で進める保育士もいますが、実はこれは逆でもうまくいきます。最初から「動きながら歌う」形で導入すると、体の動きが記憶の手がかりになり、歌詞を覚えるスピードが上がるという特徴があります。これは使えそうです。

特に2〜3歳児クラスでは、最初から歌詞を覚えさせようとせず、擬音部分の動作だけを先に教えるアプローチが効果的です。「キュキュキュのところだけ一緒にやろう」とピンポイントで誘うと、子どもが「あ、自分にもできる!」という達成感を感じやすくなります。

参考:振り付き動画(ほいくnote公式)

やまのおんがくか|まな&ゆうによる振り付き動画(ほいくnote)

やまのおんがくかの歌から広がる合奏・発展活動アイデア

「やまのおんがくか」は、歌として楽しんだあとに多様な活動へと展開しやすい点でも保育士に支持されています。合奏・制作・創作の3つの方向で発展させることができます。

① 楽器を使った合奏への展開

保育現場でよく使われる楽器には、カスタネット・タンバリン・鈴・太鼓などがあります。「やまのおんがくか」は各番ごとに異なる楽器が登場するため、グループ分けして担当楽器を決める「パート別合奏」との相性が抜群です。たとえば1番のリス担当グループはカスタネット、2番のウサギ担当グループは鈴、という形で分担するだけで本格的な合奏活動になります。

マイナビ保育士の週案文例でも、4歳児10月の音楽遊びの活動として「鈴・カスタネット・タンバリン・太鼓などの楽器を用意し、好きな楽器を選び交代しながら楽しめるようにする」という環境構成が実例として紹介されています。実際の現場での使われ方です。

② 手作り楽器制作との連携

「やまのおんがくか」を歌う前の制作活動として、手作り楽器を作ることが多くの保育園で実践されています。ペットボトルに小豆を入れたマラカスや、厚紙と輪ゴムを組み合わせた簡易ギターなど、身近な素材で楽器を作り、完成したものを使って歌と合奏するという流れは、制作・音楽・表現を横断した充実した活動になります。

3歳児クラスの発表会演目として「手作り楽器で山の音楽家を合奏」という実践は多く紹介されており、地域の方や祖父母への発表の場でも喜ばれやすい演目として定番化しています。これは保育士として押さえておきたい情報です。

③ 歌詞の創作・オリジナル動物版

5歳児に特に有効なのが、「自分たちのオリジナル山の音楽家を作ろう」という創作活動です。ぞうがトロンボーンを演奏する・カエルがカスタネットを叩く・スズムシが鈴を鳴らす、といったように子どもたちが動物と楽器の組み合わせを考え、そのキャラクターの擬音を自分たちで作ります。

この活動は、歌遊びが「想像力・言語表現・論理的な発想(大きい動物には大きい楽器など)」を育てる知育活動に発展する典型例です。保育での「やまのおんがくか」の可能性は、歌うだけにとどまらないということですね。

参考:生活発表会でのやまのおんがくか合奏実践例

定番から応用まで!生活発表会・お遊戯会のプログラムアイデア(保育士しごとnet)

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