ちょうちょうの歌を保育で活かす歌詞・由来・振り付け完全ガイド
「ちょうちょう」はスペイン民謡だとずっと教えられてきたが、実はドイツ民謡が正しい原曲です。
ちょうちょうの歌詞の意味と140年以上続く「改訂の歴史」
「ちょうちょう ちょうちょう 菜の葉にとまれ」——この歌詞を知らない日本人はほぼいないでしょう。でも、この歌が1881年(明治14年)から現在まで140年以上、一度も教科書から外れたことがない曲だということはご存知でしょうか。
現在の歌詞はこちらです。
| フレーズ | 内容のポイント |
|---|---|
| ちょうちょう ちょうちょう 菜の葉にとまれ | 蝶が菜の葉に降り立つ情景 |
| 菜の葉にあいたら 桜にとまれ | 春の移ろいを表す流れ |
| 桜の花の 花から花へ | 蝶が花を渡り歩く自由な様子 |
| とまれよ遊べ 遊べよとまれ | 繰り返しのリズムが心地よい締め |
ここで気になるのが「菜の葉」という表現です。実は国語学者の金田一春彦氏は、「卵を産みつけることを勧めるようでちょっとおかしい」と指摘したことがあります。蝶が「菜の葉」にとまるのは、多くの場合、産卵のためだからです。しかしこれは野村秋足が創作した表現ではなく、江戸時代からのわらべうたに「蝶々ばっこ 菜の葉に止まれ」という表現がすでに存在していました。原型は愛知県(当時の尾張・三河地方)に伝わる童歌「胡蝶」とされ、野村はそれを改作したにすぎないとも言われています。
つまり「ちょうちょう」の歌詞の作者は、厳密には不詳なのです。
また、現在歌われている歌詞は、発表当初とは異なります。明治14年に発表された初版では「桜の花の さかゆる御代に」という一節がありました。「御代」とは天皇が治める世のことで、GHQの方針により1947年(昭和22年)に「花から花へ」と改訂された経緯があります。140年以上歌い継がれる間に、歌詞が歴史の影響を受けてきたことがわかりますね。
保育者がこの背景を知っておくことで、子どもたちに「昔からずっと歌われてきた歌なんだよ」という導入ができ、歌への親しみをより深めることができます。
ちょうちょうの歌詞の成立過程については、同志社女子大学の研究コラムが詳しく解説しています。
ちょうちょうの歌の原曲「ドイツ民謡」の正体と幻の2〜4番
「ちょうちょう」をスペイン民謡だと子どもに教えていたら、それは今や誤りです。
長年「スペイン民謡」とされてきましたが、これは明治時代に日本へこの曲を紹介した教育学者・伊沢修二が「原曲はスペイン民謡」と紹介したことに由来します。しかし根拠となる資料がなく、研究が進んだ結果、現在ではドイツの古い童謡「Hänschen klein(ハンスちゃん、幼いハンス)」が正しい原曲とされています。作詞はドイツ東部・ドレスデンの教師フランツ・ヴィーデマン(1821〜1882年)によるものです。
「幼いハンス」の内容はこんなストーリーです。
- 1番:幼いハンスが旅に出る。母親は悲しみながらも見送る
- 2番:7年の放浪の末、日焼けした大人へと成長する
- 3番:故郷に帰ってきたが、誰にもハンスだと気づかれない。しかし母親だけがすぐに分かってくれる
これは「子どもが旅立ち、別れと再会を経験する」という教育的な物語です。日本の「ちょうちょう」とはまったく違う内容というのが面白いところです。
同じメロディが、米国では「Lightly Row(ボートの歌)」、英国では「笑う5月」、1977年のドイツ映画「戦争のはらわた」では子どもたちが歌う場面にも登場しています。
さらに驚くのが、「ちょうちょう」には幻の2〜4番が存在したという事実です。
- 2番(稲垣千頴作詞):スズメが朝に巣立つ内容「おきよ おきよ ねぐらの雀」
- 3番(作詞者不明):トンボが秋草にとまる内容「とんぼ とんぼ こちきて止まれ」
- 4番(作詞者不明):ツバメが古巣に帰る内容「つばめ つばめ 飛びこよつばめ」
2番はなんと「雀の歌」です。タイトルの主役・蝶々はどこへ行ったんでしょう? 1番と2番で作詞者が異なり、内容も大きく変わっています。
1947年(昭和22年)に文部省が発行した教科書「一ねんせいのおんがく」で2番以下がすべて廃止され、現在の1番のみの形になりました。これは「ちょうちょう」と無関係な動物の描写を排除し、曲の主題を明確にするためとされています。
「ちょうちょう」の幻の歌詞については、ダイヤモンドオンラインの記事が詳しく解説しています。
ちょうちょうの歌の年齢別のねらいと保育への取り入れ方
「ちょうちょう」は2歳児から5歳児まで幅広い年齢に使える曲です。ただし、年齢によってねらいと導入の仕方が変わります。それぞれ整理しておくと、保育計画が立てやすくなります。
| 年齢 | ねらい | 導入のヒント |
|---|---|---|
| 2歳児 | 蝶の羽ばたきを模倣し、動きと言葉を結びつける | 「ちょうちょってどんな動きかな?手をひらひらしてみよう」 |
| 3歳児 | 「菜の葉」「桜の花」という言葉と身体表現を一致させる | 「菜の葉がかざぐるまみたいにふわふわ揺れているね」 |
| 4歳児 | 春の自然への観察力・表現力を深める | 「桜の花はどんな色?蝶々はどこへ飛びたいかな?」 |
| 5歳児 | 自分なりの蝶の動きを考え、創作表現を楽しむ | 「今度は違う色の花に止めてみよう。どう動かす?」 |
2歳児には「飛ぶ・止まる」という動きのコントラストがポイントです。手をひらひらさせて「とまれ」の言葉に合わせて止める、という単純な動作が、言葉とからだを結ぶ良い体験になります。
3歳児以上になると「桜」「菜の葉」という言葉のイメージを広げながら、春の季節感を体で表現することが可能になります。意外ですね。3歳でも春の自然情景を言葉でイメージできるのです。
4・5歳児では、「蝶々はなぜ菜の葉に止まるの?」という問いかけを添えることで、自然観察への入口にもなります。散歩で本物の蝶を見つけたときに「ちょうちょうの歌みたいだね!」と繋げると、子どもの気づきが一気に豊かになります。
おすすめの季節は4〜5月です。菜の花や桜が咲き、実際に蝶を見かける時期と重なるため、歌と体験がリンクしやすい最高のタイミングといえます。
ちょうちょうの歌の手遊び・振り付けのコツと実演ポイント
「ちょうちょう」の振り付けは、大きな動きよりも「しなやかさと静けさ」を重視するのが基本です。
手遊びの基本的な動きは次のとおりです。
- 🦋「ちょうちょう ちょうちょう」:両手の親指を重ね、残りの指を羽のようにひらひらさせる(蝶の形)
- 🌿「菜の葉にとまれ」:両手の指先を合わせてゆっくり下に降ろし、葉に触れるように止める
- 🌸「桜にとまれ」:手をゆっくり左右に移動させ、花から花への移動を表す
- ✋「花から花へ」:手を左右に大きくゆっくりスイングさせる
- 🌟「とまれよ遊べ」:再び指先を止め、次に軽くひらひらと動かす
ポイントは「止まる」と「動く」のメリハリです。ずっとひらひらさせているだけでは、歌の情景が子どもたちに伝わりません。「とまれ」の言葉に合わせて静止するだけで、子どもたちの集中がぐっと高まります。
また、この曲はずっと八分音符が続く構造になっています。つまり、テンポが均一に刻まれる曲なのです。テンポ感やリズムをしっかり感じながら演奏することが大切で、同時にメロディには強弱や表情をつけて盛り上がりを作ることが歌の世界観を豊かにします。
保育者が語りかけるように歌うことで、子どもたちに自然と春の情景が伝わります。これは使えそうです。特に2〜3歳の子どもには、保育者が表情豊かに歌うことがそのまま「モデル」になります。
アレンジとして、「キツネみたいなちょうちょ」「クモみたいなちょうちょ」など、いろんな形のちょうちょを手で表現するバリエーション手遊びも存在します。4〜5歳児クラスで飽きを感じ始めたとき、こうしたアレンジを加えると再び盛り上がります。
振り付き動画の実演は、ほいくnoteの近藤夏子さんによる解説が参考になります。
ちょうちょうの歌のピアノ伴奏を保育士がラクに弾くコツ
「ちょうちょう」のピアノ伴奏は、コード2つあれば弾けます。
使うコードはCとG7(またはGM)の2つです。ハ長調で演奏する場合、この2コードだけで全曲を伴奏することができます。コード2つというのはどれくらい簡単かというと、ピアノ初心者が1週間練習すれば十分マスターできるレベルです。
具体的な構成はこうなっています。
- 🎹「ちょうちょう ちょうちょう 菜の葉にとまれ」→ C(ドミソ)で進む
- 🎹「菜の葉にあいたら 桜にとまれ」→ C・G7を交互に
- 🎹「桜の花の 花から花へ」→ CとG7
- 🎹「とまれよ遊べ 遊べよとまれ」→ C・G7・Cで締め
左手はコードを和音で押さえるだけでOKです。難しいアルペジオ(分散和音)にしなくても、シンプルな和音のみで子どもへの弾き歌いとして十分成立します。
また、後半の4小節を前奏として使う方法もあります。前奏が決まるだけで子どもたちが「あ、ちょうちょうだ!」と反応してくれるため、活動への導入がスムーズになります。前奏は2小節でも十分です。
ピアノが苦手な保育者に多いのが、「弾きながら歌えない」という悩みです。対策は1つで、まず片手ずつ練習し、右手のメロディが音を見ずに弾けるレベルになってから合わせることです。右手のメロディが体に染みつくと、自然と左手コードを添えながら歌えるようになります。
「移調したい」という場合も、CとG7の関係(主音とドミナント)を他の調に置き換えるだけなので、コードの仕組みを一度理解しておくと応用が効きます。余裕があれば、FコードもあわせてC・F・G7の3コードを覚えておくと、多くの童謡をカバーできます。
コード2つで弾ける楽譜の詳細と使い方は、保育塾のサイトで無料確認できます。
ちょうちょうの歌を使った保育活動のアイデア【独自視点:自然観察と連動させる】
「ちょうちょうの歌を歌う」だけで終わらせていたら、半分しか活用できていません。
この歌が最も力を発揮するのは、歌と戸外遊び・自然観察を組み合わせたときです。春の散歩中に本物の蝶を見つけたとき、子どもが「ちょうちょうだ!」と気づくのは自然な反応ですが、そのタイミングで「菜の葉にとまれって歌があったね」と声をかけると、歌と体験がリンクします。これが言葉の発達と情操教育を同時に促すひとつの仕掛けになります。
具体的なアイデアをいくつか挙げます。
- 🌿 自然観察→歌→制作のサイクル:散歩で蝶を観察 → 保育室でちょうちょうを歌う → 蝶の制作活動(折り紙・スタンプなど)につなげる
- 🎨 歌詞の情景を描く活動:「菜の葉ってどんな形?桜はどんな色?」と問いかけながら、歌詞の情景を絵に描く(3〜5歳向け)
- 🦋 なりきり遊び:「ちょうちょうになってとまれの合図で止まろう」という即時反応ゲーム(1〜3歳向けのリトミック的な活動にも)
- 📖 絵本との連動:蝶や春の自然が出てくる絵本の前後に「ちょうちょう」を歌うことで、活動に一体感が生まれる
「なりきり遊び」は、子どもが「ちょうちょう」の歌詞を体験として吸収するきっかけになります。歌うだけでなく、体を使って表現することが、幼児の言語発達や身体認識にとってプラスになるとされています。
さらに「幻の2〜4番」の知識を活かすこともできます。「2番は雀の歌、3番はとんぼの歌があったんだよ」と子どもに話しながら、それぞれの季節(秋・夏)の生き物を歌い分けるアクティビティにすることも可能です。春のちょうちょう→夏のとんぼ→秋のつばめと、季節の変化を歌でたどる活動として年間を通じて使えます。
また、2010年には「ちょうちょう」が保育士試験の実技課題曲にも選ばれています。保育現場での実践力という意味でも、この曲を深く理解しておく価値は大きいといえます。
「ちょうちょうの歌」は、歌詞の意味・歴史・振り付け・ピアノ伴奏・保育活動との連動という5つの軸で考えることで、保育の中での活用の幅が大きく広がります。この一曲を深く知ることが、春の保育を豊かにする第一歩です。


