かたつむり輪唱の歌を保育で実践する完全ガイド
「かたつむり」の輪唱は5歳未満では聴覚的に難しく、無理に導入すると子どもの自信を損なう可能性があります。
かたつむり輪唱の歌の歌詞と音楽的な特徴
「かたつむり」は1911年(明治44年)に文部省が刊行した「尋常小学校唱歌」第一学年用に掲載された、歴史ある文部省唱歌です。作詞・作曲者は不詳とされていますが、100年以上にわたって子どもたちに歌い継がれています。今日の保育現場でも梅雨の季節を代表する定番曲として、0歳児から年長クラスまで幅広く活用されています。
歌詞は1番と2番から構成されています。歌詞の冒頭にある「でんでんむしむし」は「出よ出よ虫虫」が転じた言葉とする説があり、かたつむりに対して「早く出てきて!」と呼びかける意味が込められているとも言われます。
| 番 | 歌詞 |
|---|---|
| 1番 | でんでんむしむし かたつむり/おまえのあたまは どこにある/つのだせ やりだせ あたまだせ |
| 2番 | でんでんむしむし かたつむり/おまえのめだまは どこにある/つのだせ やりだせ めだまだせ |
1番の「あたま」と2番の「めだま」は五十音順(あ→め)で覚えると混乱しません。これが基本です。
歌詞に登場する「つの」「やり」「あたま」「めだま」がそれぞれかたつむりのどの部分を指すのか、保育士として正確に把握しておくと子どもへの説明がスムーズになります。「つの」は下側の小さな触角(触覚器官)、「めだま」は上側の大きな触角の先端にある目、「あたま」は殻から出てきた全体部分を指します。「やり」については、昭和52年に発行された金田一春彦・安西愛子の著書『日本の唱歌(上)明治篇』に「先端に目玉のついている大きな触角のこと」と明記されており、このとらえ方が学術的には主流です。
音楽面では、2拍子・ハ長調で書かれており、♯も♭もないため楽譜が非常に読みやすい構成です。「タッカ」と呼ばれる付点8分音符のリズムが多用されており、この弾むようなリズムが軽快さと躍動感を生み出しています。もともとは♯2つのニ長調で作られていましたが、後にハ長調に改められた経緯があります。ピアノが苦手な保育士さんにとっても弾きやすい曲として知られており、練習しやすい点も保育現場で長く愛される理由のひとつです。
参考リンク(歌詞の意味・ピアノ指導のヒント)。
かたつむり輪唱のやり方と保育への導入ステップ
輪唱とは、同じメロディーを複数のグループが時間差で歌い始め、音が重なり合うことでハーモニーを生み出す歌い方です。「かたつむり」は短くシンプルなメロディーのため、輪唱の入門曲として非常に適しています。
保育で輪唱を導入するときは、次のステップで進めるのがおすすめです。
- ✅ ステップ1:全員でしっかり歌えるようにする──まずは全員でユニゾン(同じパート)で何度もくり返し歌い、歌詞・メロディー・テンポを体にしみ込ませます。子どもたちが自信を持って歌えるようになってから次のステップへ進みます。
- ✅ ステップ2:2グループに分ける──クラスを「Aグループ」と「Bグループ」の2つに分けます。席の列やカラーバッジなど視覚的にわかりやすく分けると混乱が少なくなります。
- ✅ ステップ3:タイミングをずらして歌う練習──Aグループが先に歌い始め、Bグループは「でんでんむしむし」の最初の1フレーズ分(2小節分)後からスタートします。保育士が指揮役となり、Bグループが入るタイミングを手でサインを出して知らせます。
- ✅ ステップ4:音が重なる瞬間を体感させる──2つの歌声が重なったとき、保育士も「聴こえた?きれいな音が重なったね!」と言葉で伝えることで、子どもたちが達成感と喜びを感じやすくなります。
つまり、「全員でしっかり歌える」ことが輪唱成功の最大の前提条件です。
最初のうちはテンポをいつもより少しゆっくりめに設定するのが有効です。速すぎると後から入るグループが追いつけず、混乱の原因になります。テンポが安定してきたら少しずつ通常の速さに戻しましょう。保育士がピアノで伴奏しながら進める場合、拍を打ちやすい「タン・タン」のシンプルな伴奏形にすると子どもたちがリズムに乗りやすくなります。
また、輪唱に慣れてきたら「かえるのがっしょう」と組み合わせる「パートナーソング」にも挑戦できます。「かたつむり」と「かえるのがっしょう」は和音進行が合致しているため、同時に歌うときれいなハーモニーが生まれます。これはいきなり取り組むのではなく、両方の歌を単独で十分歌い込んでから試みるのが原則です。
参考リンク(輪唱・合奏アイデアなど)。
6月に楽しめそうな歌・童謡〜カエルやかたつむりなど梅雨にちなんだ歌など11曲〜|ほいくる
かたつむり輪唱は何歳から?年齢別の指導ポイント
「かたつむり」の歌はどの年齢でも楽しめますが、「輪唱」に取り組むベストなタイミングは年長クラス(5〜6歳)以降です。これは意外ですね。3〜4歳でも歌えるからと輪唱に早めに踏み切ると、子どもが混乱して歌への苦手意識を生んでしまうリスクがあります。
年齢別のかかわり方は以下のとおりです。
- 🐣 0〜1歳児:保育士がゆっくりした歌声で聴かせ、手でかたつむりの形を作りながら子どもの体をそっとなぞってあげましょう。歌に対する心地よさ・安心感を育む段階です。
- 🐥 2〜3歳児:保育士の手遊びを真似しながら歌います。「つのだせ」の部分で両手の人差し指を額の上に立てる、「あたまだせ」でおでこをなでるなど、歌詞に合った動作をつけると楽しく覚えられます。対象年齢の目安は2歳からとされています。
- 🐤 4歳児(年中):テンポに合わせてしっかり歌えるようになり、2拍子のリズムを手拍子や打楽器で表現する活動も楽しめます。輪唱の前段階として「エコー唱(保育士が歌ったフレーズを子どもが繰り返す)」を取り入れると、「聴いて・歌う」習慣がつきます。
- 🐓 5〜6歳児(年長):2グループに分かれた輪唱に挑戦できる時期です。自分のパートを維持しながら他のグループの歌声を同時に聴く力が育っているため、輪唱特有の「ずれを楽しむ」感覚が味わえます。
人間の聴覚が最も発達するのは4〜5歳ころだと言われています。この時期に「自分の声」と「仲間の声」を同時に意識して歌う輪唱の経験は、聴覚の発達を効果的にサポートします。聴く力が育つ重要な時期を、輪唱という活動で最大限に活かせるのが年長クラスの大きな強みです。
参考リンク(年齢別おすすめ歌・対象年齢の目安)。
かたつむり輪唱が育てる子どもの力と保育士としての視点
輪唱は「楽しい歌遊び」にとどまらず、子どもの発達に対して複合的な効果をもたらします。これは使えそうです。保育の場で意識的に輪唱を取り入れることで、単なる「歌の時間」以上の学びをデザインできます。
輪唱がもたらす主な効果は次のとおりです。
- 👂 聴く力(傾聴力)の育成:自分が歌いながら他のグループの声を聴き続けるという二重作業が、聴覚の選択的注意力を鍛えます。日常の保育でも「友だちの話をちゃんと聴く」力の基礎につながります。
- 🤝 協調性・社会性の育成:自分のパートを守りながら全体のハーモニーを作るという経験は、「自分の役割を担いながらチームに貢献する」という協調性そのものです。集団生活の中で育む社会性に直接結びつきます。
- 💪 自己肯定感・達成感:輪唱が成功した瞬間の「できた!」という達成感は強い自己肯定感を育てます。特に少人数グループで声が合ったときの喜びは、子どもたちの音楽への前向きな姿勢を引き出します。
- 🎵 音感・リズム感の発達:「タッカ」リズムを体に刻みながら歌い続けることで、2拍子のリズム感が自然と身につきます。ヤマハ音楽振興会の調査によると、3〜6歳にわたって絶対的な音程知覚能力が発達し、4〜5歳の間にメロディーの音程演奏能力が著しく向上するとされています。
また、輪唱は「失敗しても恥ずかしくない活動」として設計しやすいのも特長です。みんなで歌っているので、一人が少し外れてもすぐにリカバリーできます。失敗しても大丈夫な環境が基本です。保育士が楽しそうに指揮を振り、笑顔でかかわることで、子どもたちは安心して声を出し、挑戦できます。
東京藝術大学のコミュニティアートセンターによるまとめでは、音楽活動を通じて「自己肯定感」「コミュニケーション能力」「集中力」「社会性」の4つが同時に高まることが示されています。輪唱はその典型的な活動例として位置づけられます。
参考リンク(音楽活動が育む力・保育と音楽の研究資料)。
子どもの心を育む音楽活動|東京藝術大学コミュニティアートセンター(PDF)
かたつむり輪唱に合わせた保育アレンジと発展遊び
「かたつむり」の輪唱は、そのままの形だけでなく、保育のさまざまな場面や子どもの興味に合わせてアレンジできる懐の深さが魅力です。ここでは、現場ですぐに使えるアレンジアイデアを紹介します。
🎭 リトミック的な動きを加える
「かたつむり」に合わせて子どもたちが床を這うようにゆっくり動き回り、保育士が突然ピアノの音を変えたら「殻の中に閉じこもる」動きを取ります。音の変化に即座に反応する「即時反応」の練習になり、聴く力を遊びの中で自然に鍛えることができます。椅子に座ったまま上半身だけで動く形にすれば、スペースが限られた場面でも実施できます。
🎼 変奏曲ゲームで曲想を感じる
「かたつむり」をわざとゆっくり・低い声で歌うと「悲しいかたつむり」になり、速く・高い声で歌うと「元気なかたつむり」になります。「このかたつむりはどんな気持ちかな?」と問いかけながら聴き比べる活動は、音楽を形づくる要素(速さ・高さ・強弱)への気づきを生み出します。音楽の先生や小学校への接続を意識した活動としても活用できます。
🎤 パートナーソング(同時歌唱)への発展
輪唱に十分慣れてきたら「かえるのがっしょう」と同時に歌う「パートナーソング」へとステップアップできます。「かたつむり」と「かえるのがっしょう」は和音の構造が互いに合致しており、2曲を同時に歌うときれいなハーモニーが生まれます。発表会や音楽集会での見せ場として活用するのにも向いています。
🌂 梅雨の環境構成とセットで展開する
壁面にかたつむりやあじさい、雨粒などの装飾を施しながら、歌と環境を連動させると子どもたちの興味がより高まります。図鑑でかたつむりの体のしくみを見てから「つの」「めだま」がどこにあるかを確かめ、歌詞と照らし合わせると「なるほど!」と理解が深まります。保育のねらいと「かたつむり」の歌を丁寧に結びつけることで、音楽活動が生活や遊びと有機的につながっていきます。
参考リンク(かたつむりのリトミック・遊びアレンジの具体的なピアノ楽譜付き)。
『かたつむり』ピアノ楽譜と練習動画セット|音楽遊びアレンジも紹介|ほいくis

Ravensburger テンポかたつむり

