音楽鑑賞教育の雑誌を保育士が選び現場で活かす方法
音楽鑑賞活動を「なんとなく流している」だけだと、子どもの発達機会を年間で数十時間分も無駄にしているかもしれません。
音楽鑑賞教育の雑誌が保育士にとって重要な理由
保育現場で音楽といえば「ピアノを弾く」「歌を教える」というイメージが強いと思います。しかし実は、音楽を「聴く」という鑑賞活動こそ、子どもの非認知能力を大きく育てるとされており、保育士としての専門性が問われる分野でもあります。
文部科学省が示す幼保連携の指針においても、音楽を聴いて感じ取り、イメージをふくらませる活動は「表現」領域の重要なねらいとして位置づけられています。つまり、保育士が音楽鑑賞をただ「流す」だけでなく、子どもの反応を観察し、発問によって感受性を引き出す役割を担うことが求められているのです。
ところが実態として、保育士養成課程の音楽授業は「演奏技術」に比重が置かれがちで、鑑賞指導の方法を体系的に学ぶ機会は少ないのが現状です。これを補う手段として注目されるのが、音楽鑑賞教育に特化した専門雑誌です。専門誌は現場の先生による実践事例や、研究者による裏づけある論考が掲載されており、保育士が自分の力で鑑賞活動の質を高められる情報源となっています。
それが保育士のスキルアップに直結するということですね。
音楽鑑賞教育の専門誌を読む最大のメリットは、「発問の引き出し」が増えることです。子どもが音楽を聴いているとき、「何が聞こえた?」「どんな気持ちがした?」といった声かけひとつで、子どもの言語表現や感受性の伸びが大きく変わります。専門誌にはこうした発問の技術が豊富に掲載されており、保育士が明日からすぐ使える実践的な知識として活用できます。
| スキル | 雑誌なしの場合 | 雑誌活用の場合 |
|---|---|---|
| 発問の引き出し | 「何が聞こえた?」のみ | 感情・身体・イメージ等多角的な発問ができる |
| 選曲の根拠 | 好みや慣れで選ぶ | 発達段階や音楽的特性を踏まえた選曲ができる |
| 活動のねらい設定 | 「楽しむ」だけ | 非認知能力・言語力・感受性など具体的なねらいを設定できる |
季刊「音楽鑑賞教育」雑誌の特徴と保育士への活かし方
日本で最も権威ある音楽鑑賞教育の専門誌として知られているのが、公益財団法人 音楽鑑賞振興財団(通称:音鑑)が発行する季刊「音楽鑑賞教育」です。もともとは学校音楽科の先生向けに編集されていますが、幼児教育・保育の現場でも応用できる内容が多く含まれています。
この雑誌の大きな特徴は、毎号1つの特集テーマを深掘りする構成にあります。たとえば2024年4月号(Vol.57)の特集テーマは「発問が変える子どもの学び」でした。主体的・協働的で深い学びにつながる発問の技術を、小学校低学年から高等学校までの実践事例とともに具体的に解説した内容です。こうした発問の考え方は、幼児への問いかけにも十分応用できます。
定期購読する場合は「音楽鑑賞教育マイスター会員」への入会が必要です。年会費は5,500円(税10%込)で、年4冊が手元に届きます。単号ずつ購入するよりも費用を抑えられる点も魅力です。会員特典として、掲載された指導案やワークシートをウェブで閲覧できるほか、セミナーを会員割引価格で受講でき、映像教材のストリーミング配信も利用できます。つまり年5,500円で複数の学習リソースにアクセスできるということです。
コスパが良いですね。
特に「ワークシートのウェブ配信」は、保育士にとって実用性が高いポイントです。鑑賞活動後に子どもが絵や言葉で感想を表現するシートを用意することで、活動の振り返りと記録が同時にできるようになります。記録は指導計画の改善にも直接つながります。
参考になるウェブサイトはこちらです。
公益財団法人 音楽鑑賞振興財団(ONKAN)の公式サイト。季刊誌の購読申し込みや会員特典の詳細が確認できます。
音楽鑑賞教育の雑誌を読む際に押さえたい幼児発達の基礎知識
音楽鑑賞の専門誌を保育に活かすには、幼児の発達段階への理解が前提になります。一般に「4〜5歳は耳の力が最も発達する時期」と言われており、音楽の基礎力である音感(ドレミ・リズム・強弱・調性などを聴き取る力)を育てるのに最適な時期とされています。ベネッセの調査や音楽教育研究でも、この時期に多様な音楽体験を積むことで、脳の聴覚野における神経細胞の数が増えることが明らかになっています。
つまり、4〜5歳での音楽鑑賞活動は特に重要です。
一方で、乳幼児期(0〜3歳)も音楽との関わりが脳の発達に大きく影響します。JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)の研究では、音楽養育環境が乳幼児の内受容感覚発達に関わるメカニズムの解明が進んでおり、音楽は情動の調節や社会性の基盤形成にも深く関与することが示されています。これは「感情のコントロール」「共感力」といった非認知能力に直結する発見です。
鑑賞指導では「聴くだけ」で終わらないことが重要です。専門誌に掲載される実践事例の多くは、以下のような流れで構成されています。
- 🎶 導入:絵本や身体動作で音楽のイメージを事前に喚起する
- 👂 鑑賞:短い曲や音楽の一節を繰り返し聴かせる(1〜2分程度が幼児には適切)
- 💬 発問・表現:「どんな動物が出てきそう?」「体が動いたのはどの部分?」などの問いかけで言語・身体表現を促す
- 🎨 振り返り:絵や言葉で感じたことを表現させて記録に残す
この4ステップが基本です。専門誌を読むことで、各ステップの質を高める具体的なアプローチが学べるようになります。
音楽鑑賞教育の雑誌から学ぶ保育現場での選曲と指導の実際
鑑賞活動で最も悩むのが「どの曲を選ぶか」という問題ではないでしょうか。ヤマハ音楽研究所が行った国内外のデータ精査による研究(2021〜2022年度)では、子どもの音楽発達曲線が明らかにされており、年齢ごとに聴き取れる要素が異なることが示されています。
たとえば3歳前後では音の「高低」や「速い・遅い」といった基本要素の聴き分けが発達し、4〜5歳になると「強弱」「音色の違い」「繰り返しパターン」などをより精緻に感じ取れるようになります。つまり選曲は「好き嫌い」ではなく、「今の子どもたちが聴き取れる音楽的要素が含まれているか」で選ぶのが基本です。
クラシックの選曲例としては以下のような曲が実践でよく挙げられます。
- 🎻 サン=サーンス「動物の謝肉祭」:各曲が動物に対応しており、子どもがイメージを持ちやすい
- 🎹 チャイコフスキー「くるみ割り人形」組曲:リズムやテンポの変化が豊かで身体表現を促しやすい
- 🎺 プロコフィエフ「ピーターと狼」:楽器ごとに登場人物が割り当てられており、音色の聴き分けにつながる
- 🎵 ヴィヴァルディ「四季」:季節のイメージと結びつけやすく、年長児の感受性を刺激する
こうした選曲の理由と保育への活かし方の解説が、音楽鑑賞教育の専門誌には豊富に掲載されています。これは使えそうです。
専門誌の連載「教材発見」「市販ディスクを教材に」などのコーナーは、保育士にとっても参考になるコンテンツです。ONKANウェブネット上では、会員向けにこれらのバックナンバー記事が閲覧できる環境が整っています。選曲で迷ったときに検索して使うというアクションひとつでリサーチが完結します。
参考になるウェブサイトはこちらです。
幼児の音楽発達曲線に関するヤマハ音楽研究所の研究データが確認できます。
ヤマハ音楽研究所|音楽学習に重要な能力の発達〜音楽を聴き分ける力
保育士だけが持てる「音楽鑑賞教育雑誌」の独自活用視点
ここからが、他のブログではあまり紹介されない独自の観点です。学校教師向けに作られた音楽鑑賞教育の専門誌を、保育士がそのまま読んでも活用できるか不安に感じる方もいるかもしれません。その答えは「読み方を変えれば十分活用できる」です。
専門誌に掲載されている「小学校低学年向けの事例」は、5〜6歳の年長児の保育活動とほぼ重なります。低学年向けの実践事例で示されている「音楽のどこに着目させるか」「どのような問いかけが効果的か」という視点は、保育現場でもそのまま使える考え方です。さらに重要なのは、専門誌が示す「発問理論」を保育士の自分の言葉に置き換える練習ができることです。
また、保育士には学校の先生にはない大きな強みがあります。日々の自由遊びや生活の中で、子どもが音に反応する瞬間を目撃できる立場だという点です。専門誌を読んでいる保育士は、子どもが風の音に立ち止まったとき、鳥の声に顔を向けたときに「これが音楽鑑賞の入口だ」と気づけます。教室の中で行う「授業」としての鑑賞だけでなく、日常の音体験を豊かにするという視点が、保育士ならではのアプローチです。
これが保育士の最大の強みです。
専門誌のバックナンバーを活用する際には、特に以下のテーマを検索すると保育への応用例が見つかりやすいです。
- 📌 「身体表現と鑑賞の連携」:動きながら聴く活動は、特に3〜5歳に適している
- 📌 「音楽づくりと鑑賞の融合」:子ども自身が音を作る体験と聴く活動をつなげる事例
- 📌 「発問が変える子どもの学び」(Vol.57特集):問いかけの技術が直接保育に応用できる
なお、保育士向けの音楽指導書として定評のある音楽之友社の雑誌「教育音楽」(月刊・小学版/中学高校版)も、鑑賞教育に関する記事が定期掲載されており、補助教材として参照する価値があります。複数の専門誌を組み合わせて読むことで、視野を広げながら現場に活かせる情報を効率よく蓄積できます。
参考になるウェブサイトはこちらです。
音楽之友社の教育音楽雑誌についての詳細情報は公式サイトで確認できます。
音楽鑑賞教育の雑誌を保育士が継続活用するためのコツ
専門誌を手に入れても「読む時間がない」「どこから使えばいいかわからない」という声は少なくありません。鑑賞活動の改善は、大きく変える必要はなく、まず「1回の鑑賞活動に1つの発問を加える」だけから始めるのが現実的です。
継続のコツは3つあります。
1つ目は、雑誌が届いたら最初に「特集記事の実践事例」だけを読むことです。研究論文や評論は後で読むとして、まず現場の先生が「何を、どう子どもに聴かせ、何を問いかけたか」という部分だけ目を通す習慣をつけると、読む負担が大幅に減ります。
2つ目は、付箋とメモを使って「使える発問集ノート」を作ることです。専門誌から拾った発問のフレーズをノートや付箋に書き留めておくだけで、翌日の保育準備が格段に楽になります。日常的に使える発問が10個あれば、1年間の鑑賞活動はほぼカバーできると言っても過言ではありません。
10個の発問があれば十分です。
3つ目は、ONKANウェブネット上の「音楽鑑賞教育Q&A相談室」コンテンツを活用することです。現場の先生が実際に抱く疑問に対して専門家が回答する形式で、保育士にとっても実情に近い問答が多く掲載されています。読んで疑問を解消するという使い方ができます。
継続してこそ情報が力になります。専門誌を読む時間を「月に30分だけ」と決めてしまうのが最も続くやり方です。専門誌1冊を1年かけてじっくり読む保育士のほうが、毎号届いても流し読みして終わる人より、確実に現場での実践力が上がります。効率よく使うことが原則です。
まとめると、季刊「音楽鑑賞教育」をはじめとする音楽鑑賞の専門誌は、保育士が鑑賞活動の「質」を高めるための最も手軽で確実な情報源です。年会費5,500円という手の届きやすい費用で、指導案・ワークシート・映像教材・セミナー割引まで含まれる「マイスター会員」制度は、コスパ面でも優秀です。保育の音楽活動に悩んでいる方は、まず1号手に取ることを検討してみてください。

