音楽療法士の資格と費用を保育士向けに徹底解説
通信講座で取った資格では、保育現場でほぼ評価されません。
音楽療法士の資格は国家資格ではない:種類と特徴を整理
保育士として働きながら「音楽療法士」の資格取得を検討している方は、まず資格の全体像を正確に把握しておくことが重要です。結論から言うと、音楽療法士は現時点で国家資格ではありません。日本には音楽療法に関する国家資格が存在せず、複数の民間団体がそれぞれ認定する民間資格が乱立している状態です。
現在、日本で代表的な音楽療法士の資格は主に以下の2つです。
| 資格名 | 認定団体 | 取得方法 | 更新 |
|---|---|---|---|
| 日本音楽療法学会 認定音楽療法士 | 一般社団法人日本音楽療法学会 | 認定校の卒業+筆記・実技・面接試験 | 5年ごと |
| 協議会認定音楽療法士(専修・1種・2種) | 全国音楽療法士養成協議会 | 加盟校のカリキュラム修了 | 5年ごと |
これに加えて、保育・幼児教育に特化した「こども音楽療育士」(全国大学実務教育協会認定)、また通信スクールが提供する「メンタル心理ミュージックアドバイザー」「音楽療法カウンセラー」といった民間資格も存在します。資格の種類が多いのは確かです。
この中で保育・医療・福祉の現場で広く認知されているのが、日本音楽療法学会認定の「認定音楽療法士」です。施設側がこの資格証明を求めるケースも見られ、専門性の証明として機能しています。一方、数万円の通信講座で取得できる民間資格は、取得のハードルは低い分、現場での評価も限定的になるのが実情です。
保育士としてキャリアアップを目指すなら、どの資格をどの目的で取るのかを事前に整理しておくことが、時間とお金の無駄遣いを防ぐ第一歩です。
音楽療法士の資格種類については、日本音楽療法学会の公式サイトでも詳しく案内されています。
日本音楽療法学会|音楽療法士とは(認定資格の概要・受験資格の条件)
音楽療法士の資格取得ルート別費用:通信講座から音楽大学まで
音楽療法士の資格取得費用は、学び方によって驚くほど差があります。費用が大きい順に3つのルートを見ていきましょう。
🎓 ①音楽系大学・短大で学ぶ(最も本格的)
音楽大学の音楽療法専攻で学ぶ場合、入学金・授業料・実習費・コンサート代・衣装代なども含めると、4年間の総費用は600万円〜800万円以上になることがあります。新卒1年目の手取り月収がだいたい17〜18万円程度だとすると、4年分の学費を稼ぐのに実に30年以上かかる計算です。日本音楽療法学会の認定校でカリキュラムを修了すると、認定試験の受験資格を得られます。卒業と同時に就職活動もできるので、専任の音楽療法士を目指したい人にとっては最も確実なルートです。
🏫 ②音楽療法専門学校・養成講座(中間的なルート)
2〜3年制の専門学校や、学会認定の養成講座を通じて学ぶ方法です。卒業までの費用相場は約100万〜300万円程度。国立音楽院(東京)の音楽療法学科の場合、2年制昼間部で1年次が約132万円、2年次が約112万円、合計約244万円が目安です。スクーリング(通学)もあるため、実践力も養われます。社会人が既存の職場を辞めずに通えるかどうかは、学校ごとの日程設定によって異なるため、事前確認が必要です。
📱 ③通信講座(最も費用を抑えられる)
最も費用が低いのが通信講座です。SARAスクールが提供する「音楽療法カウンセラー」&「メンタル心理ミュージックアドバイザー」の2資格同時取得コース(プラチナコース)は79,800円。一般社団法人Loveセラピープロジェクトの通信講座は通常139,800円ですが、キャンペーン時に79,800円で受講できる場合があります。最短2ヵ月で修了できるものも存在し、スキマ時間を活用して学べるのが魅力です。ただし、前述のとおり現場での評価は限定的です。
保育士の場合、夜勤がなく平日の勤務が多いことを考えると、通信+スクーリングの組み合わせが現実的な選択肢となります。
見落としがちな「資格維持費」:取得後にかかる継続費用
資格を取った後のことまで計算している人は少ないです。
音楽療法士の資格は取得がゴールではありません。日本音楽療法学会の認定音楽療法士の場合、資格の有効期限は5年で、更新には継続的なコストがかかります。これを知らずに資格を取ると、取得後の出費で後悔することになります。
更新に必要な主な継続費用は次のとおりです。
- 📅 毎年の学会年会費:年間数千円〜1万円程度
- 🔄 5年ごとの更新申請料・更新認定料:数万円
- 🎤 学術大会や講習会への参加費:1回あたり数千〜数万円(旅費交通費も含む)
更新ポイントを貯めるには、学術大会への参加や研究発表、学会主催の講習会への参加が求められます。つまり、保育士として働きながら認定音楽療法士の資格を維持するためには、年に1〜2回は研修や大会に参加する時間と費用を確保し続ける必要があります。
一方、臨床音楽協会の「臨床音楽士」資格の場合は、認定証交付・登録費11,000円(税込)+年間更新手数料5,500円(税込)と、比較的シンプルな構造です。NPO法人日本ナラティブ音楽療法協会では、5年ごとの更新料が1回2万円(2回で合計4万円)と明示されている団体もあります。
資格を選ぶ際は、取得時のコストだけでなく維持コストも含めた総合計を見積もることが大切です。10年間資格を維持した場合、更新費用だけで10〜20万円超になるケースもあります。コストパフォーマンスで考えれば、維持費も原則です。
認定音楽療法士である理由〜資格の意味するところ(現役認定音楽療法士による資格維持の実態)
保育士が音楽療法士の資格を取るメリットと活かせる場面
保育士が音楽療法の知識を持つことは、今の保育現場では大きな強みになります。発達に課題のある子どもや、情緒面での支援が必要な子どもの数は年々増加しており、保育施設でも療育的なアプローチを求められる場面が増えているからです。
音楽療法が保育現場で有効な場面は、具体的に次のようなものが挙げられます。
- 🎵 ADHD傾向の子どもへの集中力サポート:リズム打楽器を使った活動は、衝動性の軽減に有効とする研究(Rickson)があります。
- 🧠 感覚統合を促す音楽遊び:体を動かしながら音を聴く活動は、感覚統合の視点からも有効です。
- 💬 言語発達が気になる子どもへの歌唱活動:発声・構音の練習を楽しい形で実施できます。
こうした専門的なアプローチは、保育士免許のみでは対応が難しいグレーゾーンの子どもへの支援に直結します。現場での評価が変わりますね。
また、キャリアの観点でも重要です。音楽療法士+保育士のW資格を持つことで、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスへの転職の選択肢が広がります。これらの施設は保育園よりも処遇が良いケースもあり、給与面のメリットも期待できます。実際、音楽大学の卒業生が音楽療法士と保育士のW資格を活かして障害児施設で活躍している事例も報告されています。
音楽療法の効果について、保育現場向けにわかりやすくまとめた参考情報があります。
保育プラス|保育の現場にも役に立つ音楽療法(子ども向け音楽療法の効果と活用例)
保育士が音楽療法士資格を取るなら「こども音楽療育士」という選択肢
実は、保育士に最も親和性が高いのが「こども音楽療育士」という資格です。これは一般財団法人全国大学実務教育協会が認定する民間資格で、子どもを対象に音楽を用いた療育を専門とします。
この資格の特徴を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 認定団体 | 一般財団法人全国大学実務教育協会 |
| 対象 | 子ども(障がいや発達に課題のある子を含む) |
| 取得方法 | 認定校(4年制大学・短大)の所定カリキュラム修了 |
| 通信取得 | ❌ 不可(通信や独学では取得できない) |
| 活躍の場 | 保育施設、療育施設、特別支援学校など |
注意点は、通信や独学では取得できないという点です。これは意外に知られていません。認定機関の加盟校に在籍して規定の科目・単位を修了することが条件となっているため、現職の保育士が取得するには社会人入学や認定校への転学を検討する必要があります。
一方で、「こども音楽療育士」は保育の現場に特化した内容であり、日本音楽療法学会の認定音楽療法士のように多年にわたる更新ポイントの取得義務が相対的に少ない点はメリットといえます。保育士の業務と直結する内容を学べるため、日々の保育に即活かしやすい内容です。
現職保育士が資格取得を検討する場合の現実的な手順としては、まず通信講座(SARAスクールなど)で音楽療法の基礎知識を習得し(約6〜8万円)、その後、認定校への進学や養成講座の受講を検討するという2段階のアプローチが費用と時間の両面で合理的です。これが条件です。
こども音楽療育士の詳細は以下で確認できます。
LITALICO発達ナビ|こども音楽療育士になるには?資格取得方法とカリキュラム(取得条件・仕事内容の詳細)

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