自然短音階・和声短音階・旋律短音階の違いと保育現場での活かし方
旋律短音階は、上行と下行で音が変わる唯一の音階です。
自然短音階とは:短音階の基本と「ラシドレミファソラ」の仕組み
短音階を理解するには、まず「音階」という概念から整理しておく必要があります。音階とは、曲の主音から1オクターブ上の同じ音までの間に使われる音を、高さの順に並べたものです。西洋音楽では12種類の音高がありますが、そのすべてを均等に使うわけではなく、主音とよく調和する音を選んで音階を構成します。
自然短音階は、その短音階の中でもっとも基本的な形です。主音から「全音・半音・全音・全音・半音・全音・全音」という順序で音を並べます。調号なしの例として最もわかりやすいのが、「ラ」から始まるイ短調の音階「ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ」です。これはピアノの白鍵だけを使う音の並びで、誰でも弾いて確認しやすい音階です。
自然短音階が基本形と呼ばれる理由は、長音階との対応関係にあります。ハ長調「ドレミファソラシド」の第6音「ラ」から同じ音を使って音階を弾くと、そのままイ短調の自然短音階になります。これを「平行調」と言い、ハ長調とイ短調は調号がどちらも0個という共通点があります。
短調の曲は自然短音階を土台にして成り立っています。
ただし、自然短音階には一つ弱点があります。それは「導音がない」という点です。長音階では第7音が主音の半音下に位置し、そのため次の主音へ向かう強い引力が生まれます。この第7音を「導音」と呼びます。しかし自然短音階では第7音と主音の距離が全音分あるため、引力が弱く、フレーズの区切りや曲の締まりが感じにくくなります。この課題を解決するために生まれたのが、次に紹介する和声短音階です。
参考:短音階全体の仕組みをより詳しく学べます。
短音階とは?意味と種類 自然短音階・和声短音階・旋律短音階の違い|HARMONIA LIBRARY
和声短音階とは:第7音を半音上げて「導音」を作る理由
和声短音階は、自然短音階の第7音だけを半音上げて作った音階です。「和声的短音階」とも呼ばれ、英語ではハーモニックマイナースケール(Harmonic Minor Scale)と言います。
イ短調で具体的に見てみましょう。自然短音階の「ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ」に対して、和声短音階は第7音「ソ」を半音上げて「ソ♯」にした「ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ♯・ラ」となります。「ソ♯」は主音「ラ」の半音下であり、長音階と同じ構造の「導音」として機能します。つまり「解決したい」「主音に向かいたい」という引力が生まれるわけです。
この変化は、和音(コード)を作るうえで特に重要です。短調の属和音(V度の三和音)はもともと「ソ・シ・レ」ですが、和声短音階を使うと「ソ♯・シ・レ」になります。これにより属和音が長三和音となり、主和音への終止感が大幅に強まります。楽曲の区切りや感動的な場面に欠かせない響きが作れます。
つまり「和音の響きを整えるための音階」が原則です。
一方で、和声短音階特有のクセもあります。第6音「ファ」と第7音「ソ♯」の距離が「全音+半音(増2度)」に広がってしまいます。通常の音階では全音か半音の間隔が基本であり、増2度は特殊な音程です。独特のエキゾチックな響きが生まれるため、アラビア音楽や中東系のサウンドに近い印象になります。これが魅力でもある反面、メロディとして歌うには少し歌いにくい面があります。
厳しいところですね。
この「歌いにくさ」を改善するために登場したのが、旋律短音階です。
参考:和声短音階の構造と調号について詳しい解説があります。
旋律短音階とは:上行形と下行形が異なる唯一の音階のしくみ
旋律短音階(旋律的短音階)は、和声短音階の増2度の音程を解消するために生まれた音階です。英語ではメロディックマイナースケール(Melodic Minor Scale)と言います。
具体的には、自然短音階の第6音と第7音の両方を半音上げます。イ短調で言えば「ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ♯・ソ♯・ラ」です。第6音「ファ」を「ファ♯」に、第7音「ソ」を「ソ♯」に上げることで、第6音と第7音の間が「増2度」から「長2度(全音)」に戻り、歌いやすいなめらかな音の流れになります。
これが旋律短音階の基本です。
旋律短音階の最大の特徴は、「上行形と下行形で音が異なる」点です。上行のとき(低い音から高い音へ)は第6・7音が半音上がった形を使いますが、下行のとき(高い音から低い音へ)は自然短音階の形に戻します。なぜ下行では元に戻るのかというと、「導音は主音に向かって上行するときにだけ機能する」からです。下降する際には主音に向かう引力が不要なため、わざわざ第7音を上げる意味がなくなります。
| 音階の種類 | 第6音 | 第7音 | 上行形 | 下行形 |
|---|---|---|---|---|
| 自然短音階 | ファ(そのまま) | ソ(そのまま) | 同じ | |
| 和声短音階 | ファ(そのまま) | ソ♯(半音上げ) | 同じ | |
| 旋律短音階 | ファ♯(半音上げ) | ソ♯(半音上げ) | 上行形を使う | 自然短音階に戻す |
旋律短音階の上行形だけ見ると、実は第3音以外が長音階とほぼ同じ構成になります。ハ短調の旋律短音階上行形「ド・レ・ミ♭・ファ・ソ・ラ・シ・ド」と、ハ長調「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」を見比べると、違いは第3音(ミ♭か、ミか)だけです。これが旋律短音階の独自の響きを生んでいます。意外ですね。
参考:旋律短音階の上行形・下行形の違いと試験での注意点が詳しく載っています。
自然短音階・和声短音階・旋律短音階の簡単な覚え方と混乱しない整理術
3種類の短音階は、一見複雑に見えますが、整理してしまえばシンプルです。「自然→和声→旋律」の順に「変化が積み重なる」と考えると覚えやすくなります。
まずは自然短音階(ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ)を基準として頭に入れます。次に和声短音階は「第7音だけ半音上げる」、旋律短音階の上行形は「第6音と第7音の両方を半音上げる」という変化として覚えます。
- 🌿 自然短音階:変化なし。「ラシドレミファソラ」がそのまま基本形。
- 🎼 和声短音階:第7音だけ♯。「ソ→ソ♯」にする。上行・下行ともに同じ形。
- 🎶 旋律短音階:第6・7音を♯。「ファ→ファ♯、ソ→ソ♯」。ただし下行は自然短音階に戻す。
「下行は自然短音階に戻す」という旋律短音階の特性は、試験でも問われやすいポイントです。下行形を旋律短音階のままにしてしまう間違いが多く、この1点だけで得点を落とすケースがあります。「下りるときはナチュラルに戻る」と一言で覚えておくと忘れません。
また、3種類の短音階をイ短調(主音=ラ)で並べると以下のようになります。
- 自然短音階:ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ
- 和声短音階:ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ♯・ラ
- 旋律短音階(上行):ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ♯・ソ♯・ラ
- 旋律短音階(下行):ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド・シ・ラ(=自然短音階の下行)
これだけ覚えれば大丈夫です。
他の調に移っても、「第6・7音の変化ルールを当てはめる」だけなので、一度理解してしまえばどの調でも応用できます。保育実習理論の音楽問題で短音階が出題されたとき、このルールを思い出すだけでスムーズに解けます。
参考:保育士試験に出る調の覚え方と音階の仕組みをまとめています。
捨てない!保育実習理論 音楽【ゼロから覚える】徹底講座⑧|保育園採用ナビ
保育士が知っておきたい:短調の曲で3種類の短音階が実際にどう使われているか
「短音階を覚えたはいいが、実際の曲でどう使われているのかピンとこない」という声はよく聞きます。これは抽象的な音階の知識を具体的な音楽と結びつけていないことが原因です。
短調の楽曲は、3種類の短音階を場面に応じて使い分けながら成り立っています。すべての短調の曲が1種類の短音階だけで作られているわけではなく、旋律のなめらかさを求める場面では旋律短音階、和音の終止感を出す場面では和声短音階が使われています。
楽曲の中で使い分けられているということですね。
わかりやすい例が「和声短音階」の響きです。第6音と第7音の間に増2度が生まれるため、エキゾチックな中東・アラビア風の雰囲気になります。テレビ番組や映画で「砂漠の場面」「不思議な雰囲気」を演出する音楽には、この和声短音階が意図的に使われることが多いです。子どもたちに音楽の雰囲気を伝える際の参考になります。
一方、旋律短音階は歌のメロディの中で自然に使われていることが多く、なめらかなフレーズに隠れています。クラシックの歌曲やバロック音楽のメロディを分析すると、上行フレーズに旋律短音階、下行フレーズに自然短音階が組み合わされているパターンが頻繁に見られます。
また、保育の現場で歌う子どもの歌にも短調の曲は存在します。「おつかいありさん」「めだかのがっこう」など、短調を基調とした楽曲にはそれぞれの短音階の特徴が埋め込まれています。楽譜を読む際に「この音に臨時記号がついているのはなぜか」と考えるクセをつけると、音楽の構造が見えるようになります。これは使えそうです。
保育士として子どもに音楽を伝える立場であれば、3種類の短音階の違いを「音の色の違い」として体感しておくことが大切です。自然短音階は落ち着いた暗さ、和声短音階はエキゾチックな緊張感、旋律短音階はなめらかさという、それぞれ異なる色彩を持っています。ピアノを弾きながら3種類の音階をイ短調で弾き比べてみると、ちょうど3色の絵の具を見比べるように、違いが耳に染み込んでいきます。
参考:短音階の種類と役割、楽曲への応用まで詳しく解説しています。

