異年齢保育のねらいと週案の作り方・年齢別例文まとめ
年上の子を「お世話係」にすると、その子の成長が止まることがあります。
異年齢保育のねらいとは何か・週案に書く前に押さえる基本
異年齢保育とは、年齢の異なる子どもたちが同じ空間で生活や遊びをともにする保育形態のことです。別名「縦割り保育」や「混合保育」とも呼ばれ、近年は小規模保育園を中心に多くの施設で導入が進んでいます。全国私立保育連盟の2024年調査によると、「年齢別を基本としながら部分的に異年齢保育を取り入れている」施設が約5割を占めており、今や多くの保育士が週案に異年齢保育のねらいを書く機会を持っています。
週案を書く前に、まず「なぜ異年齢保育を行うのか」というねらいの根拠を明確にしておくことが重要です。一般的に、異年齢保育の大きなねらいは「社会性・協調性を育み、異年齢の子ども同士がお互いによい影響を与え合うこと」とされています。具体的には次のような力を育むことが期待されています。
- 年上の子が年下の子に接することで思いやり・責任感・リーダーシップが育まれる
- 年下の子が年上の子の姿を見て憧れや向上心・模倣による学びが生まれる
- 異年齢の仲間と関わる中でコミュニケーション能力と自己表現が伸びる
- 少子化が進む現代において、保育園が異年齢交流の場として機能する
週案のねらいは「1週間で目指す子どもの変化や興味関心の高まり」を書くものです。つまり、「○○ができた」というゴール型の表現ではなく、「○○を楽しもうとする」「○○に関心を持つ」という過程型の表現が適切です。これは保育所保育指針でも、子どもの発達には個人差があるため「目標として達成を目的としない」という考え方が示されているためです。
週案の作成手順は、年案 → 月案 → 週案の順番が原則です。月案の内容を達成するために、1週間でできることを細分化するのが週案の役割です。つまり月案と切り離して週案を作ろうとすると、内容が空中分解しやすくなります。これが基本です。
週案に記載する主な項目は、日付・活動内容・ねらい・環境構成・子どもの姿・保育者の援助の6つです。異年齢保育の週案では特に「子どもの姿」に年齢ごとの予想行動を書いておくと、実際の保育がスムーズに進みます。活動当日に天候や出席状況が変わることも多いため、週案はあくまで「柔軟に変えられる指針」として活用するのが現場では一般的です。
こども家庭庁「保育所保育指針解説」異年齢編成による指導計画の考え方について(公式PDF)
異年齢保育のねらい・週案の年齢別例文(0歳〜5歳)
週案のねらいは、年齢ごとに発達段階が大きく異なるため、同じ活動でも文例の表現が変わります。コピペして使える例文を年齢別にまとめましたので、自園の子どもの姿に合わせてアレンジしてください。
【0歳児のねらい例文】
0歳児は、異年齢の子どもに「接する」ことで安心感と好奇心を育む段階です。週案のねらいは「楽しむ」「感じる」「関心を持つ」といった言葉を使います。
- 年上児の歌やリズムを聞いて、一緒に体を揺らす楽しさを味わう
- 優しく接してもらうことで安心感を持って過ごす
- 年上児の遊ぶ様子に興味を持ち、触れたり見たりしようとする
【1歳児のねらい例文】
1歳児は模倣が活発になる時期です。「まねする」「一緒に○○しようとする」という方向で書きましょう。
- 友だちや異年齢児が遊ぶ様子を見て、一緒に楽しもうとする
- 年上児の様子を見てまねることを楽しむ
- 歌を歌ったり体を動かしたりする一体感を楽しむ
【2歳児のねらい例文】
2歳児は自己主張が強くなる反面、仲間意識も芽生えてくる時期です。
- 歌やダンスを通して異年齢児との関わりを楽しむ
- 遊びの中で保育者や他児とのやりとりを楽しむ
- 年上児の言葉や動きを見てまねることを楽しむ
【3歳児のねらい例文】
3歳児は「年下の子への関わり方」を学び始める段階です。年下に声をかける・手伝おうとする姿をねらいに入れましょう。
- 絵本や歌遊びを通して異年齢児との関わりを楽しむ
- 年長児の言動を見て憧れの気持ちを持つ
- 年下児との関わり方や言葉のかけ方を知る
【4歳児のねらい例文】
4歳児は、年下児への思いやりと年上児への憧れを同時に持つ時期です。「橋渡し」的な役割が多いのが特徴です。
- 年下児に対して優しく声をかけようとする
- 集団遊びを通して異年齢児との関わりを楽しむ
- 年上児に憧れの気持ちを持ち、その姿を真似しようとする
【5歳児のねらい例文】
5歳児は最年長として自覚を持ち、リーダーシップを発揮する段階です。ただし「させる」のではなく「自然に」という視点が大切です。
- 異年齢児と関わりながら、さまざまな遊びに取り組む
- 年下児に合わせながら遊びをゆっくり進めようとする
- ルールや決まりを理解し、年下児に示そうとする
月案のねらいよりも「週単位で達成できる具体的な姿」に絞って書くのが週案のポイントです。5歳児なら「最年長として積極的に関わろうとする」は月案レベルの表現で、週案では「○○ゲームで年下児にルールを教えようとする」のように活動を限定した形にすると精度が上がります。つまりこの絞り込みが週案の質を決めます。
マイナビ保育士「週案の書き方・コツ&ねらい・内容の記入例」各年齢の書き方のポイントと記入例を確認できます
異年齢保育の週案に使える活動例とねらいの組み合わせ方
週案のねらいは活動内容と必ずセットで考えます。「何をするか」が決まれば、ねらいの言葉も自然に出てくるからです。ここでは、異年齢保育に取り入れやすい活動例と、それに対応するねらいの書き方を紹介します。
🏪 お店屋さんごっこ(2〜5歳向け)
お店の人役とお客さん役に分かれて遊ぶごっこ遊びは、異年齢での役割分担が自然に生まれる人気の活動です。年上の子が店員を担当し、年下の子に「いらっしゃいませ」などの言葉を優しく教える場面が見られます。
ねらいの例文:「それぞれの役割になりきり、異年齢の子どもとコミュニケーションを取ることを楽しむ」
保育者の援助:「年上の子が自然に年下の子をフォローできるよう、保育者は直接指示せず、見守りながら言葉かけを提案する」
🎵 リトミック遊び(2〜5歳向け)
音楽に合わせて体を動かすリトミックは、年齢に関係なく参加しやすい活動です。年上の子が手本を見せ、年下の子がそれを見てまねをするという自然な学び合いが生まれます。手拍子・足踏み・打楽器を組み合わせると、各年齢が無理なく参加できます。
ねらいの例文:「音楽のリズムに合わせて体を動かすことを楽しみ、異年齢の友だちとの一体感を感じる」
🚂 じゃんけん列車(3〜5歳向け)
シンプルなルールながら、年上の子が年下の子にやり方を教える場面が自然に生まれます。「背の高さが違いすぎて肩をつかめない」といったトラブルを週案の予想子どもの姿に書いておくと、保育者の援助を事前に準備できます。
ねらいの例文:「ルールを守りながら遊ぶ楽しさを知り、年下の友だちとゆっくり一緒に楽しもうとする」
🎨 感触アート・ダイナミック絵画(2〜5歳向け)
模造紙を床に敷いて、絵の具や素材で自由に描く活動です。正解がない活動なので、年齢による優劣が出にくく、異年齢が対等に楽しめるのが特徴です。年上の子が「面白い描き方」を見せ、年下の子が真似することで遊びが広がります。
ねらいの例文:「身近な素材の感触を楽しみながら、自由に表現することを楽しむ」
活動を週案に書き込む際は、「環境構成」の欄に「玩具の数を人数分用意する」「エリア分けをして誤飲リスクを防ぐ」といった安全面の配慮も忘れずに記載しましょう。これは必須です。特に0〜2歳児が参加する場合、小さな部品のある玩具は別のエリアに移動させる対策が不可欠です。
保育士ワーカー「異年齢保育の週案を作成しよう!」年齢別のねらい文例と活動内容の詳細が確認できます
異年齢保育の週案でよくある3つの失敗と対策
週案作成で手が止まる原因のほとんどは、「書き方のパターンがわからない」か「ねらいが抽象的すぎる・具体的すぎる」かのどちらかです。ここでは、現場で起こりがちな失敗と、その対策を紹介します。
❌ 失敗①:ねらいが月案と同じ表現になってしまう
月案のねらいは「1か月の方向性」を示すため、どうしても抽象的になります。週案のねらいはそれをさらに絞り込み、「この1週間の活動でどんな姿を目指すか」という具体性が必要です。
たとえば月案が「異年齢の友だちと関わることを楽しむ」であれば、週案では「お店屋さんごっこを通して年上の友だちと言葉を交わして遊ぼうとする」のように、活動名と期待する姿を組み合わせた表現にしましょう。この絞り込みができれば大丈夫です。
❌ 失敗②:5歳児を「お世話係」にしてしまう
5歳児が年下の子の面倒ばかり見る状況が続くと、5歳児自身が「遊べていない」と感じ、疲弊やストレスにつながる可能性があります。これは保育者が意図せず「○○してあげてね」と指示し続けることで起きやすいパターンです。
週案の保育者援助欄には「年上の子の自発性を尊重し、強制しない」「年上の子も思い切り身体を動かせる活動を確保する」と明記しておくことが重要です。お世話を義務にしない、これが原則です。
❌ 失敗③:担任同士でねらいを共有していない
異年齢保育は複数クラスが合同になることが多く、各担任がばらばらのねらいで動くと、保育の方向性がちぐはぐになります。特に「ねらい」と「保育者の援助」の部分は、週案を書いた後に担任間で必ず確認・すり合わせをすることが大切です。厳しいところですね。
週案作成後に5分でも担任間で「今週何を大切にするか」を話し合う時間を確保するだけで、子どもへの関わりの一貫性が格段に上がります。この確認の時間が条件です。
| よくある失敗 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| ねらいが抽象的すぎる | 月案のコピペになっている | 活動名+期待する姿をセットで書く |
| 5歳児が消耗する | お世話を義務化している | 自発性を尊重し、年上向け活動も確保 |
| 担任間の連携不足 | 週案のすり合わせをしていない | 週はじめに5分の確認タイムを設ける |
【独自視点】異年齢保育の週案に「子どもの発言」を記録する方法が週案の質を変える
多くの保育士が週案の「子どもの姿」欄に書くのは「予想される行動」だけです。しかし、実際の現場では子どもたちが思わぬ発言をしたり、保育者が想定しなかった関わり方をすることが多くあります。そこで、週案の「振り返り」または「評価」欄に「実際に子どもから出た言葉・行動」を1〜2件記録しておく習慣が、次週の週案を書く際の質を大きく変えます。これは使えそうです。
たとえば、お店屋さんごっこの活動後に「○○ちゃん(2歳)が初めて自分から『ください』と言えた」という記録を残しておくと、次週のねらいを「言葉でやりとりすることへの意欲を高める」と自然に発展させられます。子どもの実際の姿がそのまま次のねらいのヒントになるわけです。
また、5歳児の子どもが「なんで○○はできないの?」と言ってしまった場面も記録しておくと、「年下児への声のかけ方を知る」というねらいを次週に組み込む根拠になります。週案は「書いて終わり」にしない。この姿勢が大切です。
郡山市公立保育所が公開している書類作成マニュアルでは、「月案のねらいや内容・子どもの姿を踏まえて週のねらいを立て、週のねらいを達成するための内容を考える」という立案の流れが明記されています。この「子どもの姿を踏まえる」というプロセスこそが、記録と次の計画をつなぐ最重要ステップです。
実際の言葉を記録する習慣をつけるには、活動後すぐにメモする方法が現実的です。スマートフォンのメモアプリや付箋を活用して「今日の印象に残った子どもの言葉・行動」を活動直後に1〜2行だけ書き留めておくと、週末の週案振り返りの精度が上がります。記録は短くていいです。大事なのは「続けること」と「次の計画に反映させること」の2点だけです。
異年齢保育の週案は、書いた内容が「子どもの実際の姿」とどのくらい一致していたかを検証することで、保育者自身の観察眼と計画立案力も磨かれていきます。毎週の小さな振り返りが、1年後には大きな保育の差につながります。
郡山市公立保育所「書類の書き方マニュアル」週案の立案の流れと項目の書き方が実務的に解説されています(公式PDF)

暮らしの保育: 異年齢保育の先に見えてきたもう一つの保育論

