環境音フリーな森の自然音を保育活動に活かす方法
「フリー」と書いてあっても、保育園で流すと著作権違反になる音源があります。
環境音フリー「森の音」が子どもの脳に与える科学的な効果
「森の音を流すと子どもが落ち着く」という声は保育現場でよく聞かれますが、これは根拠のある話です。
森の鳥のさえずり、木々のざわめき、小川のせせらぎといった自然音には、「1/fゆらぎ(エフぶんのいちゆらぎ)」と呼ばれる音の揺らぎパターンが含まれています。1/fゆらぎとは、音の強さが規則的すぎず、かつランダムすぎない”ちょうどいいリズム”のことで、人間の脳が無意識に「心地よい」と感じる構造を持っています。筑波技術大学の研究でも、自然音(小鳥の鳴き声・せせらぎ・木々のこすれる音)を聴くことで自律神経のバランスが整い、副交感神経が優位になることが確認されています。
これが保育活動に何をもたらすかというと、具体的には次のような変化です。
- 🌿 ストレスホルモン(コルチゾール)の低下:自然音を聴くことで、緊張や興奮を引き起こすコルチゾールのレベルが下がります。子どもが午後のお昼寝に入りにくいときや、活動の切り替え時間に特に効果的です。
- 🧠 α波の増加でリラックス&集中の両立:α波は脳がリラックスしながらも適度に覚醒している状態のときに出る脳波で、集中力と創造性に関係しています。森の環境音はこのα波を促しやすいとされています。
- 🐦 注意回復効果(ART理論):米国の注意回復理論(Attention Restoration Theory)では、自然環境の刺激は脳を疲れさせずに注意を向けさせるため、精神的な疲労からの回復が早まると説明されています。
つまり「環境音 フリー 森」で検索して使える音源を探すことは、子どもの心身の健康づくりに直結する保育士の行動です。それが基本です。
イギリスで行われた研究では、森林の近くに住む子どもほど認知能力やメンタルヘルスが優れているという結果が報告されており(GIGAZINE、2021年)、森という環境そのものが子どもに与えるプラスの影響は広く認識されつつあります。
自然の音を「あると雰囲気がいい」くらいのオプション扱いにしているとしたら、少しもったいないですね。
参考:森林が子どものメンタルヘルス・認知能力に与える影響についての研究紹介
森林の近くで暮らす子どもは認知能力やメンタルヘルスが優れている(GIGAZINE)
参考:自然音が自律神経に与える影響を調べた学術研究
自然音を聴くことによる自律神経機能に及ぼす効果に関する研究(筑波技術大学)
環境音フリー素材を保育園で使うときの著作権の注意点
「無料でダウンロードできる」=「保育園でそのまま使える」と思っていると、思わぬトラブルにつながるケースがあります。
フリー音源の「フリー」には、実は2種類の意味が混在しています。ひとつは「無料で入手できる(Free to download)」という意味、もうひとつは「著作権が放棄されていて自由に使える(Copyright-free)」という意味です。多くのフリー音源サイトは前者、つまり「ダウンロードは無料だが、著作権は放棄していない」というケースです。この違いが非常に重要です。
著作権法では、著作権侵害に対して「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」が定められています(著作権法第119条)。法人(保育施設の運営法人など)が違反した場合は「3億円以下の罰金」になる規定もあります。保育士個人が悪気なくBGMを流しただけでも、法人としての責任が問われる可能性があるということです。
では保育現場でフリーの森の環境音を使うとき、何を確認すればいいのでしょうか?
確認すべきポイントは大きく3つです。
- ✅ 「商用利用可」かどうか:保育園・保育施設は営利法人・社会福祉法人を問わず、有料でサービスを提供しているため「商用利用」に該当する可能性があります。「個人利用のみ可」とある音源は、たとえ無料でも保育現場での使用が禁止されているケースがあります。
- ✅ クレジット表記が必要かどうか:「作者名を表記すれば使用可」という条件がついている場合があります。動画や資料を保護者に配布する際は特に注意が必要です。
- ✅ 二次配布・改変が禁止されていないか:音源を編集して保育DVD等に組み込む場合は、改変の可否も確認しましょう。
商用利用可かどうかの確認は、各サイトの「利用規約」や「ご利用条件」ページを見ればわかります。面倒に思えますが、1回確認するだけで済みます。
著作権フリーの意味や注意点について詳しく解説されている法律事務所の解説ページ
著作権フリーの素材を利用するときの注意点とは?(直法律事務所)
環境音フリー・森の自然音が使えるおすすめサイト3選
保育士が安心して使える「環境音 フリー 森」の音源は、適切なサイトを選べば簡単に見つかります。
ここでは、商用利用が明確に許可されており、森・鳥・せせらぎ・風などの自然音が揃っている代表的なサイトを3つ紹介します。
① 効果音ラボ(soundeffect-lab.info)
無料の効果音・環境音が豊富に揃っており、春の野鳥のコーラス、軽井沢の鳥の声、小川のせせらぎ、草原の風音など、保育活動に使いやすい自然系の音源が多数あります。サイト内の「利用規約」では商用利用についての条件が明記されており、条件に従えば商用利用が可能です(再配布・音商標登録は禁止)。ダウンロード後すぐに使えるMP3形式で提供されているため、手間がかかりません。
② VSQ plus+(vsq.co.jp)
「山・草原・森」「川・滝・水音」など、自然環境音のカテゴリが細かく分類されています。サイトトップに「商用利用も無料」と明記されており、利用条件が非常にわかりやすいのが特長です。保育士がサッと確認してすぐに使いやすいサイトです。
VSQ plus+ – 環境音・自然音カテゴリ(商用利用無料)
③ DOVA-SYNDROME(dova-s.jp)
BGM(音楽)素材がメインですが、「穏やかな森」「森へ」など自然のイメージを持つ作品が多く、環境音BGMとして保育のお昼寝や制作活動のBGMに向いています。登録不要でダウンロード可能で、基本的に無料・商用利用可です(一部クレジット表記が必要な作品あり)。
DOVA-SYNDROME – フリーBGM・自然系音楽素材(無料・商用利用可)
なお、上記3サイトいずれも定期的に利用規約が更新される場合があります。使用前に最新の利用規約を確認するのが原則です。「前に使えたから今回も大丈夫」という判断は、思わぬトラブルのもとになります。これだけ覚えておけばOKです。
環境音フリー「森の音」を保育活動の場面別に活用するアイデア
森の環境音を「なんとなく流す」のと、「場面に合わせて意図を持って使う」のとでは、子どもへの効果が大きく変わります。
🌙 お昼寝・休息の時間
入眠を促す場面では、音量を絞った「雨音+森のざわめき」や「夜の森」系の環境音が有効です。音のリズムが単調すぎず、かつ刺激的でもないため、子どもの脳がリラックス状態(α波優位)に移行しやすくなります。音量の目安は、大人がぼんやり聴こえる程度(30〜40デシベル前後)が適切です。工事現場の音(80デシベル前後)と比較すると、その静けさのイメージがつきやすいかと思います。
🎨 制作・お絵描きタイム
集中を促したい制作活動の場面では、「小鳥のさえずり+木の葉のこすれる音」のような軽やかな環境音がおすすめです。音楽のようにメロディが展開しないため、子どもの思考を遮らずに済みます。BGMとして使うのではなく、あくまで「音の壁紙」として控えめに流すのがコツです。これは使えそうです。
📖 絵本の読み聞かせ・導入活動
森を舞台にした絵本(「もりのなか」「ぐりとぐら」など)の前の導入として、1〜2分ほど森の環境音を流すと、子どもの気持ちが物語の世界に引き込まれやすくなります。音を使った「場づくり」として、読み聞かせの質が上がるという現場の声も多くあります。
🏃 運動・外遊びの振り返り
運動後に室内でクールダウンするとき、汗を拭いたりしながら「川のせせらぎ」を流すと、心拍数の低下を促す効果が期待できます。体の興奮を音で落ち着かせるという使い方です。
🌿 自然観察・季節の話題の導入
春なら「野鳥のコーラス」、夏なら「ミンミンゼミの声」、秋なら「虫の鳴き声」というように、季節に合った森の環境音を導入に使うことで、子どもが「今の季節の自然」に意識を向けるきっかけになります。先述の効果音ラボには「春の山」「夏の山」「夜の田舎」など、季節別・時間帯別の自然音が揃っているため、この使い方に非常に向いています。
場面ごとに使い分けることで、同じ「森の環境音」でも子どもへの働きかけが変わります。まずは1場面から試してみるのが、無理なく続ける方法です。
環境音フリー素材を使う上で保育士だけが気づける「音環境デザイン」という視点
「音源を流す」という行為には、保育士が意識していない落とし穴が実はあります。
騒音制御工学の専門家たちが保育施設の音環境について指摘しているのは、「BGMを足すことで音の層が増し、かえって声が聞き取りにくくなる」という逆説的な問題です。日本騒音制御工学会の資料でも、保育施設の音環境は一般的に「声の響きすぎ」が問題とされており、さらにBGMを重ねると子ども同士の会話が聞き取りにくくなり、保育士の声も届きにくくなるケースがあると報告されています。
この問題は「音源の音量を下げる」だけで対処できます。具体的には、流す環境音の音量を会話音量(60デシベル前後)の半分以下、つまり30デシベル前後を目安にすることです。30デシベルというのは、深夜の静かな住宅街で感じる音の大きさと同じくらいのレベルで、「耳を澄ますと聞こえる」程度です。
また、森の環境音を流す位置にも工夫が必要です。天井付近のスピーカーから出すよりも、棚の上など子どもの頭の高さより少し上に小型のBluetoothスピーカーを置いて「ゾーン」として音が漂う場所を作ると、特定のエリアだけ森の雰囲気になる「音の環境構成」が生まれます。
| 活動場面 | 推奨する森の音の種類 | 音量の目安 |
|---|---|---|
| お昼寝 | 雨音・夜の森 | 〜30dB(図書館よりさらに静か) |
| 制作活動 | 鳥のさえずり・風 | 30〜40dB(深夜の住宅街レベル) |
| 絵本導入 | 季節の森・朝の鳥 | 40dB前後(静かな室内の話し声) |
| クールダウン | せせらぎ・川の音 | 30dB前後 |
「音環境を整える」という考え方は、まだ多くの保育現場に普及していない独自の視点です。しかし、子どもの情緒安定や集中力への影響を考えると、保育士が「どんな音源を選ぶか」だけでなく「どう配置して、どの音量で流すか」まで考えることが、より質の高い保育環境につながります。音を「足す」だけでなく「設計する」という発想が重要です。
参考:保育施設の音環境問題についての専門家の解説
