松谷みよ子の絵本と歌を保育士が使いこなす全知識
「歌いながら読むと子どもの反応が薄い」と感じているなら、あなたの読み方より絵本の「選び方」が問題かもしれません。
松谷みよ子の絵本「いないいないばあ」が735万部を超えた理由
松谷みよ子の絵本『いないいないばあ』は、1967年に童心社から刊行されて以来、2020年11月に累計出版部数735万部を突破し、日本の絵本として初めて700万部の壁を超えた記録的作品です。339刷という刷数も、国内絵本では前例のない数字です。これほど長期間にわたって読み継がれている背景には、「赤ちゃんの愛読書をつくりたい」という松谷みよ子と童心社の編集長・稲庭氏の共同発想がありました。
「歌のような言葉のリズム」が核心です。
本書は「くまちゃん いないいない…ばあ」という短い繰り返しの言葉だけで構成されています。これは赤ちゃんが日常的に経験する「いないいないばあ遊び」そのものを絵本化したものであり、初めて本を手にした0歳児でも内容を体感として理解できます。赤ちゃんは文字ではなく「経験との一致」で絵本を楽しむ生き物です。絵本の内容が自分の体験と重なったとき、反応が大きく変わります。
💡 保育士の現場では、「ばあ」の部分で絵本をさっと下げて子どもと目を合わせる動作をつけると、笑顔や声が出る確率が高まります。これは絵本が「コミュニケーションの道具」として機能している証拠でもあります。
「あかちゃんの本」シリーズ全9巻の内容は以下のとおりです。
| タイトル | ねらい・特徴 |
|---|---|
| いないいないばあ | あやし遊び・視線合わせ |
| いいおかお | 表情認識・感情理解 |
| もうねんね | 入眠・生活リズム |
| あなたはだあれ | 自己認識の芽生え |
| おさじさん | 食事・日常動作 |
| のせてのせて | 乗り物・ごっこ遊び |
| もしもしおでんわ | 言語・コミュニケーション |
| おふろでちゃぷちゃぷ | 生活習慣・入浴 |
| あかちゃんのうた | 歌・言葉のリズム |
保育の場で「今日は何の活動か」に合わせて1冊を選べる構成になっているのが、このシリーズの強みです。つまり9冊がセットで保育計画に使えます。
参考:松谷みよ子 あかちゃんの本シリーズ(童心社公式)
松谷みよ子の「あかちゃんのわらべうた」絵本で育つ4つの感覚
松谷みよ子の「あかちゃんのわらべうた」シリーズ(偕成社刊)は、全国各地のわらべ歌をベースに構成された全4巻の絵本です。タイトルは「あそびましょ」「いたいいたいはとんでいけ」「さよならさんかく またきてしかく」「えんやらりんごの木」です。これは単なる読み聞かせ絵本ではなく、保育士・親子が「一緒に体を使いながら楽しむ」ことを前提につくられています。
身体で覚えるのが基本です。
名古屋短期大学保育科教授の山下直樹氏(保育カウンセラー・臨床心理士・公認心理師)は、わらべうたが子どもの発達の土台となる4つの感覚を育てると指摘しています。
- 🤲 触覚:抱っこや手遊びを通じて、親子の安心感・信頼感を育む
- 🌙 生命感覚:歌遊びが生活リズムを整え、自律神経のバランスを促進する
- 🏃 運動感覚:体を動かす歌遊びが関節・筋肉のコントロール力を高める
- ⚖️ 平衡感覚:膝に乗せて揺らす歌遊びが空間認知と体のバランスを育てる
この4感覚はすべて、わらべうた絵本の「読みながら動く」体験から同時に得られます。絵本として目でも楽しめる点が、わらべうたを単独で歌うより効果的とされる理由のひとつです。
たとえば「えんやらりんごの木」は、歌に合わせて子どもを膝で揺らしながら読む絵本です。親子の体が密着するこの体験は、オキシトシン(信頼のホルモン)の分泌を促し、子どもの情緒の安定に直接つながるとされています。保育者と子どもの1対1の時間を意識的に作りたい場合、このシリーズは最適な選択です。
また「いたいいたいはとんでいけ」の歌詞のエピソードは興味深いです。松谷みよ子が次女のけがの際に「痛みがお山のおじいちゃんに飛んでいったら困る」という娘の言葉に奮起し、独自のわらべ歌として発展させたというのが誕生秘話です。子どもの感覚を丁寧に拾い上げた作家の姿勢が、このシリーズ全体に宿っています。
参考:わらべうたの発達効果について(マイナビ保育士)
松谷みよ子の絵本を歌いながら読む保育士向け実践テクニック
松谷みよ子の絵本の最大の特徴は「声に出すことで真価を発揮する」点にあります。絵本ナビなどのレビューを見ると、保育士や親御さんの声として「リズムをつけて読むと子どもの反応がまったく違う」「歌いながら読んだら大笑いした」というコメントが多数寄せられています。読み方次第で子どもの反応が劇的に変わります。
以下に現場で使える実践テクニックをまとめます。
① 「間(ま)」を大切にする読み方
『いないいないばあ』では「いないいない…」のあとに0.5〜1秒の間を置くのが鉄則です。期待感が膨らんだところで「ばあ!」と絵本を子どもに向けると、表情が変わります。「ばあ」を言うタイミングで保育士自身の顔も近づけると、より高い反応が得られます。
② 歌うように読む「節読み」
「あかちゃんのうた」や「あそびましょ」のように、もともと歌詞になっているテキストの絵本は、メロディーをつけて読むことで子どもが自然に口ずさむようになります。保育士が同じ歌を繰り返すと、2〜3回目から子どもが「知っている歌」として反応し始めます。これが言語発達の足がかりになります。
③ 少人数(1〜3人)で読む
山下直樹教授の提言によれば、大人数での一斉読み聞かせより、1〜3人との少人数読み聞かせのほうが情緒・心身の発達への効果が高いとされています。松谷みよ子のわらべうた絵本は、特に「触れ合い」を前提とした内容が多いため、膝の上に乗せたり手を握ったりしながら読める小グループでの実施が推奨されます。
④ 場面や時間帯に合わせた1冊選び
生活場面ごとのおすすめは以下のとおりです。
| 場面 | おすすめ絵本 |
|---|---|
| 朝の会・登園時 | 『いないいないばあ』(視線合わせ・コミュニケーション) |
| 食事の前後 | 『おさじさん』(食への期待感を高める) |
| お昼寝前 | 『もうねんね』(入眠のルーティン化) |
| 入浴・水遊び | 『おふろでちゃぷちゃぷ』(生活動作の楽しさ) |
| ふれあい遊び | 『えんやらりんごの木』(身体接触・揺れ遊び) |
この選び方をルーティン化すると、子どもが「この絵本が来たら〇〇の時間だ」と感じるようになり、生活リズムの安定にもつながります。つまり絵本が時間の合図になります。
保育士の声かけの質を上げたい場合は、絵本の文章を丸暗記する必要はありません。まず「この本は何のためのもの?」というねらいを1つ決めてから読むだけで、自然と声のトーンや間の取り方が変わってきます。
保育士が知っておくべき松谷みよ子の絵本と歌の著作権ルール
「著作権なんて保育園には関係ない」と思っているなら、それは大きな誤解です。2012年4月、松谷みよ子は公式ホームページにて「すべての二次使用をしばらくの間、中止する」という声明を発表しました。この声明の内容は非常に重要で、保育士として確認しておく必要があります。
内容を正確に把握することが条件です。
❌ 二次使用として「禁止」または「許可が必要」なもの:
- 絵本原画の展示(美術館・こども園での展示含む)
- 電子書籍化・DVD化・映像化
- 翻訳・舞台化
- 助成金を受けた読み聞かせや朗読会
- 読み聞かせの録音・録画(第三者への公開・販売目的)
✅ 引き続き「自由に行える」もの:
- 保育園・幼稚園・学童保育内での通常の読み聞かせ
- 助成金が発生しない自主的な読み聞かせ
- 小学校・中学校・高校での授業内使用
- 大学の研究目的での使用(販売は許可不要・ただし画像取り込みは原則不可)
保育士が特に注意すべきなのは「助成金が絡むイベント」です。たとえば地域の子育て支援イベントや公共施設でのおはなし会で、会場費や謝礼などの助成金が発生している場合は、松谷みよ子作品を使うことができません。これを知らずに使ってしまうと、施設や保育士個人への問い合わせ・中止要請が来るリスクがあります。
なお、2015年以降、著作権管理は長女の瀬川たくみ氏が引き継いでいます。助成金の発生しない通常の読み聞かせは無料で自由です。日常保育での使用は問題ありません。
参考:松谷みよ子公式ホームページ「二次使用について」

保育士試験にも出る!松谷みよ子の絵本と歌の独自活用アイデア
保育士試験(保育実習理論)では、松谷みよ子の作品名と作者・出版社の紐づけが出題されています。具体的には「いないいないばあ」「きつねのよめいり」「ちいさいモモちゃん(モモちゃんシリーズ)」「おふろでちゃぷちゃぷ」などが問われた実績があります。作品名だけでなく、出版社名(童心社・偕成社)もセットで覚えておくのが試験対策の基本です。
「知っているつもり」が一番危ないです。
試験対策の観点とは別に、現役保育士にとって実用的なのが「絵本と歌の組み合わせ活用」です。松谷みよ子の「あかちゃんのうた」(童心社刊)は、わらべうた調の詩を複数収録した絵本で、1日1つのうたを繰り返すことで乳児クラスの言語刺激になります。同じ歌を3日続けると子どもが先取りして声を出し始める、という保育士からの報告もあります。
また、「えんやらりんごの木」を親子参観の場で活用する保育士も増えています。保護者に歌詞カードを渡し、先生と一緒に子どもを膝の上で揺らす体験を共有することで、家庭でも同じ絵本を手に取ってもらえる機会が生まれます。絵本の貸し出しリストに加えるだけで家庭連携が強化できます。
さらに、0歳クラスの担任であれば「絵本+わらべうた+ボディタッチ」の3点セットを意識することが効果的です。名古屋短期大学の山下直樹教授は「大勢で一斉に歌うより、1〜3人と触れ合いながら歌う方が発達効果は高い」と明言しています。これは個別の関わりを大切にする現代の保育観とも一致します。
松谷みよ子作品の保育活用まとめチェックリスト 🗒️
- ✅ 「あかちゃんの本」9冊を生活場面ごとに配置する
- ✅ 読み聞かせは「間」と「節読み」を意識する
- ✅ わらべうた絵本は少人数+ボディタッチで読む
- ✅ 親子参観では歌詞カードを配って保護者参加型にする
- ✅ 助成金が発生する場合は二次使用の可否を必ず確認する
- ✅ 試験対策として出版社名(童心社・偕成社)もセットで暗記する
現場のルーティンに松谷みよ子の絵本・歌を組み込むことで、保育の質と子どもの発達支援の両方に手応えが生まれます。1冊の選び方を変えるだけで、子どもとの関係性が変わることもあります。まずは今日の担当クラスの生活場面に合う1冊を、上の表から選んでみてください。
参考:保育実習理論における絵本の出題ポイント(保育士試験対策サイト)


