放課後児童クラブの資質向上研修で保育士が得する全知識
保育士資格があると、16科目中4科目が最初から免除されます。
放課後児童クラブの資質向上研修とは何か:制度の基本を理解する
「資質向上研修」という言葉を聞いて、「認定資格研修と何が違うの?」と疑問に思う方は少なくありません。まずここを整理しておくことが大切です。
放課後児童クラブに関わる研修には、大きく分けて2種類があります。ひとつは「放課後児童支援員認定資格研修」で、都道府県知事が認定する公的資格を取得するための研修です。もうひとつが今回のテーマである「放課後児童支援員等資質向上研修」で、すでに放課後児童クラブに従事している職員が、経験年数やスキルに応じてさらなる知識・技術を習得するための現任研修に位置づけられています。
資質向上研修の根拠となるのは、「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」第8条第2項です。この条文では「放課後児童健全育成事業者は、職員に対し、その資質の向上のための研修の機会を確保しなければならない」と義務が定められています。つまり、事業者には研修の機会を提供する法的義務があり、職員は積極的に受講することが求められているということです。
研修は基本的に「初任者研修(従事1年〜5年未満)」「中堅者研修(5年以上)」「管理者・リーダー研修」の3段階で構成されています。それぞれが現場レベルに合った内容になっており、経験年数に応じた研修を受けることで、育成支援の質が体系的に高まる仕組みです。
実施主体は主に都道府県ですが、近年は区市町村レベルでも実践的な内容の研修が開催されています。救急措置や食物アレルギー対応、発達障害のある子どもへの支援など、日々の現場ですぐに役立つ内容が豊富に含まれています。これは保育所での研修とはまた異なる、学童保育ならではの専門性を高められる点が特徴です。
参考リンク(こども家庭庁:放課後児童クラブの研修体系と制度全般についての公式情報)
放課後児童クラブの資質向上研修で保育士資格が活きる科目免除の仕組み
保育士として働いてきた経験は、放課後児童クラブの認定資格研修で大きな武器になります。これは知らないと損する情報です。
放課後児童支援員認定資格研修は全16科目・合計24時間(1科目90分)で構成されていますが、保育士資格を持っている場合、「子どもを理解するための基礎知識」分野に含まれる以下の4科目が免除されます。
- 科目4:子どもの発達理解
- 科目5:児童期(6歳〜12歳)の生活と発達
- 科目6:障害のある子どもの理解
- 科目7:特に配慮を必要とする子どもの理解
4科目分の免除は合計6時間(90分×4)に相当します。研修全体が4日間で行われることを考えると、1日半分の受講が省けるほどのボリュームです。東京都の募集案内によれば、2日目の研修日がまるごと保育士資格保有者には免除対象となるほど、実質的な負担軽減につながります。
実際に研修を受けた支援員の体験談では、「2日目は保育士資格所有者はすべての科目が免除のため、参加者の1/4程度が保育士だったことがわかった」という報告もあります。保育現場で培った子どもへの発達理解がそのまま評価される仕組みになっているわけです。
ただし、免除対象科目であっても受講自体は可能です。学童期の子どもの特徴や発達は保育園児とは異なる部分も多いため、「免除でも念のため受講する」という選択肢も有効です。免除されている科目を積極的に受講することは、学童保育の専門性をさらに深める機会になります。
認定資格研修の受講料は原則として無料(自治体により異なる場合あり)で、テキスト代の実費(1,000〜3,000円程度)のみ自己負担が一般的です。コストを抑えて資格が取れる、というのが基本です。
参考リンク(東京都:認定資格研修の科目免除や申込方法の詳細が確認できる)
東京都福祉局|放課後児童支援員認定資格研修 募集案内(令和6年度版)
放課後児童クラブの資質向上研修と処遇改善:2科目受講が給与に直結する理由
資質向上研修の受講が、そのまま給与アップにつながる制度があることを知っていますか?ここが多くの保育士・支援員が見落としやすいポイントです。
「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業」は、放課後児童支援員が勤続年数や研修実績等に応じて賃金改善を受けられる仕組みです。こども家庭庁・文部科学省が令和7年12月にまとめた「放課後児童対策パッケージ2026」でも、「収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置」として明記されています。
重要なのは、この処遇改善の対象となる研修として資質向上研修を位置づける自治体が増えていることです。たとえば神奈川県の令和7年度の資質向上研修では、「キャリアアップ処遇改善の対象となる研修として受講する場合の修了要件は、合計2科目以上を同一年度に履修すること」と明示されています。
つまり、1年間に資質向上研修を2科目以上受ければ、月額9,000円相当の賃金改善の対象になりえるということです。年換算すると10万円を超える金額差につながる可能性があります。これは大きいですね。
さらに令和8年度予算案では、キャリアアップ処遇改善事業に勤続年数「3年」の区分を新たに設けることが盛り込まれています。これにより、比較的経験が浅い職員であっても、研修受講を通じた処遇改善がより受けやすくなります。保育士として転職し、学童保育での経験が3年に達したタイミングでの研修受講は、キャリアアップの大きなターニングポイントになるわけです。
処遇改善の対象になるかどうかは、勤務先の運営事業者がどの補助制度に申請しているかによっても変わります。研修を受ける前に、勤務先の管理者や市区町村の担当窓口に確認するアクションをとっておくのが確実です。
参考リンク(こども家庭庁:処遇改善の制度と研修要件が確認できる)
放課後児童クラブの資質向上研修の内容:初任者・中堅者・管理者でここが違う
資質向上研修は「どのステージにいるか」で学ぶ内容がまるで変わります。段階の違いを把握しておくことが、研修を最大限に活かす第一歩です。
初任者研修(従事1年〜5年未満が目安)では、放課後児童クラブの制度と一般原則の理解、子どもの権利と育成支援の基本、日常的な事故やけがの予防と対応、食物アレルギーの理解、保護者との連絡のとり方といった現場の基礎力を固める内容が中心です。「まず現場で生き残るための知識」を体系的に整理できる機会と捉えるとよいでしょう。
中堅者研修(従事5年以上が目安)では、発達障害を含む障害のある子どもへの個別支援、虐待対応や要保護児童対策地域協議会との連携、保護者からの苦情・要望への対応、後輩職員への指導・助言など、より専門的かつ組織的なテーマが扱われます。「チームを動かす立場」に向けたスキル習得が求められます。
リーダー・管理者研修では、事業運営や法令遵守(コンプライアンス)の計画策定、リスクマネジメント、研修受講計画の策定と評価、小学校・地域組織との連携強化など、施設全体を運営する視点が問われます。運営委員会や保護者会を主体とした施設では、このレベルの知識が特に欠かせません。
研修形式も多様化しています。集合研修(OFFーJT)に加え、茨城県などではオンライン形式(eラーニング)の初任者研修が導入されており、中堅者研修の一部科目のみ集合形式とするなど、現場の都合に合わせた受講が可能になっています。時間的な制約がある職場でも研修参加のハードルが下がっているのは、保育士から転職した方にとっても心強い変化です。
なお、「職場内研修(OJT)」と「職場外研修(OFFーJT)」を組み合わせて計画的に実施することが、事業者の義務として明確に定められています。研修は個人任せではなく、事業者全体で取り組むべき仕組みとして制度化されているという点は、職員側も知っておくべき事実です。
参考リンク(厚生労働省:研修体系の整理と各段階の研修内容の目安が確認できる)
こども家庭庁|放課後児童クラブに従事する者の研修体系の整理(PDF)
放課後児童クラブの資質向上研修で保育士が見落としがちな独自視点:OJTの「指導的立場」問題
ここは検索上位の記事ではほとんど触れられていない、現場でリアルに問題になっているポイントです。
放課後児童クラブでは、職員が継続して勤務する年数が非常勤の場合で平均3年程度というデータがあります(こども家庭庁の研修体系資料より)。入れ替わりが激しいため、職場内でのOJTを継続的に実施しにくい現場が多くあるのが実態です。
ここで問題になるのが「指導的立場の人材が育っていない」という悪循環です。放課後児童クラブのOJTは、ただ仕事を続ければ自然にスキルが身につくものではありません。スーパービジョン(専門的な指導・監督)の観点から、経験のある指導的立場の職員が意図的に関わることが重要だと、こども家庭庁の研修体系資料でも明示されています。
つまり、中堅者研修や管理者研修を受けた職員が現場にいなければ、新任職員がいくら初任者研修を受けても、職場で実践的な技術が定着しにくい状況が生まれます。知識として学んだことを現場で活かすには、「受けた知識を実際の場面で試しながら指導してもらえる環境」が不可欠なのです。
保育士として乳幼児施設での経験が豊富な方が学童保育に転職した場合、「先輩がいない」「相談できる人がいない」という状況になるケースがあります。これは個人の問題ではなく、事業者レベルの課題です。
こうした状況に備えるためには、所属先の管理者が研修受講計画を立てているかを入職時に確認することが有効です。計画がない場合でも、日本放課後児童指導員協会や各都道府県の資質向上研修を自ら申し込むことで、外部からのスーパービジョンの機会を補うことが可能です。
| 研修の種類 | 主な対象 | 実施主体 | 処遇改善との関連 |
|---|---|---|---|
| 認定資格研修(16科目・24時間) | 資格未取得の支援員等 | 都道府県・政令市 | 資格取得=手当・配置要件に直結 |
| 資質向上研修(初任者) | 従事1〜5年未満 | 都道府県・市町村 | 2科目以上でキャリアアップ加算対象 |
| 資質向上研修(中堅者) | 従事5年以上 | 都道府県・市町村 | 同上 |
| 資質向上研修(管理者) | リーダー・責任者 | 都道府県 | 施設評価・運営改善に反映 |
参考リンク(日本放課後児童指導員協会:研修の企画・運営状況と受講方法が確認できる)
放課後児童クラブの資質向上研修を受けるための申込手順と注意点
研修に「申し込もう」と思ったとき、実際の手順を知らないと迷ってしまいがちです。ここは具体的に押さえておきましょう。
資質向上研修と認定資格研修のいずれも、基本的な申込の流れは共通しています。まず、自分が勤務する放課後児童クラブが所在する市区町村の担当窓口(放課後児童クラブ担当課)に受講の承認を得るところからスタートします。その後、各都道府県や委託先の研修実施機関(LECなど)のウェブサイトから申込フォームへ入力するか、書類を郵送・FAXで提出します。
申込の際に必要な主な書類は「受講申込書」「本人確認書類(住民票・免許証等)」「受講資格確認書類(資格証・実務経験証明書など)」の3点が基本です。保育士証もここでの提出資料になります。科目免除を受けるためには、保育士証や各種資格証のコピーを必ず添付することが条件です。
注意が必要なのは、申込期間が短く設定されていることです。たとえば東京都の場合、第1期の申込期間はおよそ1か月程度で終了します。申込を見逃した場合、次の期まで待つ必要があり、年度をまたぐと処遇改善の条件である「同一年度内2科目以上」を満たせない可能性も生じます。処遇改善につなげたい方は特に注意が必要です。
また、「一部科目修了証」には有効期限があり、交付日から1年間という制限があります。年をまたいで少しずつ受講する計画は立てにくい仕組みになっていることも覚えておいてください。
研修を申し込んだ後は、受講決定通知が届くまで待ちます。定員を超えた場合は抽選となることもあり、特に都市部では受講希望者が多いため、可能な限り早めの申込が得策です。研修当日は15分以上の遅刻で「欠席扱い」となる科目もあるため、余裕をもって会場に向かうことが大切です。
- 📋 STEP1:市区町村の担当窓口に受講承認を得る
- 📝 STEP2:都道府県・委託機関のサイトから申込書を提出(FAX or 郵送or Web)
- 📄 STEP3:保育士証・本人確認書類・実務経験証明書などを添付
- 📬 STEP4:受講決定通知を受け取り、日程・会場を確認する
- 🎓 STEP5:全科目を受講し、修了証を受け取る(約1ヶ月後に郵送)
勤め先が公設公営か民設民営かによって申込先が変わることもあります。所属施設の管理者に確認してから手続きを進めるのが原則です。
参考リンク(神奈川県:令和7年度の資質向上研修の概要・申込方法・処遇改善との関連が確認できる)

