小規模保育で3歳になったら何が起きるか、保育士が知るべき全知識
「連携施設があれば転園は安心」と思っていると、実は約8割の小規模保育施設には連携施設がなく転園先が保証されていません。
小規模保育で3歳になったら「3号認定」はどうなるのか
保育所を利用するには、市区町村が交付する「支給認定」が必要です。この認定は子どもの年齢と家庭の状況によって3種類に区分されており、小規模保育の利用対象は「3号認定(0〜2歳・保育の必要性あり)」に限られています。つまり小規模保育は、制度上「3号認定児専用の保育の場」です。
問題は、2歳児クラスに在籍している子どもが年度の途中で3歳の誕生日を迎えたとき、認定区分が「2号認定」に切り替わる点です。どういうことでしょうか?
2号認定になった瞬間、その子どもは小規模保育の対象外になります。「じゃあ、誕生日当日に退園になるの?」と不安になる保護者も多いのですが、結論は市区町村の考え方次第です。
国(こども家庭庁、旧厚生労働省)の見解では、「年度途中で3歳になっても、退所させることで保護者や児童に不利益が生じるなら、年度末まで継続して保育できる」というスタンスです。根拠となるのは児童福祉法第6条の3・第10項(二)で、「満3歳以上の幼児に係る保育の体制の整備の状況その他の地域の事情を勘案して保育が必要と認められる児童」への保育ができると定められています。
ただし、最終的な判断権は市区町村にあります。「誕生日が来たら退園」と判断する自治体がある一方で、「年度末3月まで保育継続OK」とする自治体もあり、対応が分かれているのが現状です。年度末まで継続できる自治体が多数ですが、保育士として保護者に説明する際は「必ず居住自治体に確認してもらう」よう案内することが原則です。
| 認定区分 | 対象年齢 | 利用できる施設 |
|---|---|---|
| 1号認定 | 3〜5歳(教育のみ) | 幼稚園・認定こども園(1号) |
| 2号認定 | 3〜5歳(保育の必要あり) | 保育園・認定こども園(2号) |
| 3号認定 | 0〜2歳(保育の必要あり) | 保育園・小規模保育・認定こども園など |
3号認定が基本です。この認定区分を保育士自身がしっかり理解することで、保護者への説明が格段にスムーズになります。
小規模保育に携わる保育士にとって、この「認定の切り替えタイミング」は年度ごとに必ず直面する実務上の課題です。保護者が混乱しないよう、2歳児クラスになった時点から丁寧な情報共有を始めることが大切です。
こども家庭庁によるFAQ(事業者向け)では、年度途中の取り扱いについての考え方も確認できます。
こども家庭庁|小規模保育事業における3歳以上児の取り扱いに関するFAQ(PDF)
小規模保育3歳の壁──連携施設がない園の実態と保育士が知るべき数字
「連携施設があるから卒園後も安心です」と保護者に伝えられる小規模保育園は、実はそれほど多くありません。これは意外ですね。
総務省が2016年に実施した行政評価・監視の調査では、全国の小規模保育施設のうち卒園後の受け皿となる連携施設を確保できていない施設が27.2% に上ることが明らかになりました。さらに学術調査では「連携施設が確保できていない自治体が4割近くを占める」というデータも存在します。
連携施設とは、小規模保育の卒園後に子どもを受け入れるよう協定を結んだ保育所・幼稚園・認定こども園のことで、3つの役割が求められています。
- 🤝 保育内容の支援:集団保育を体験させるための合同行事・給食提供・健康診断の共同実施など
- 🔄 代替保育の提供:小規模保育の職員が急病などで対応できないときに保育を代行する
- 🏠 卒園後の受け皿:卒園した子どもを連携施設で優先的に受け入れる
ところが、現実には「連携施設を探したくても引き受け先がない」という状況が全国的に続いています。面積基準や保育士不足が原因で、既存の保育施設が新たな受け入れ枠を確保できないのです。連携施設の確保が難しい状況にある自治体では、「連携施設が確保できないなら小規模保育施設の設置を認めない」と判断するところさえあります。
2023年の制度改正を経て、連携施設の「卒園後の受け皿確保」については市町村長が著しく困難と認めた場合に設定不要とする経過措置も設けられました。しかし、それはあくまで行政手続き上の話です。保護者の側では「転園先が見つからない」という不安は何も解消されていません。
痛いですね。保育士として「卒園後のことは保護者が自分で何とかすればいい」とはなかなか言えない現実があります。
だからこそ、2歳児クラスの担任や主任保育士は遅くとも2歳の夏ごろ(7〜8月) には転園先の情報収集を始めるよう保護者に伝えることが重要です。1月・2月には認可保育所の申し込みが締め切られる自治体が大半であり、後手に回ると転園先が見つからないまま年度末を迎えます。
総務省|子育て支援に関する行政評価・監視(家庭的保育等の連携施設確保状況PDF)
小規模保育で3歳になったら転園先はどこ?保育士が保護者に伝える3つの選択肢
転園先の選択肢は大きく3つに分かれます。それが基本です。
| 転園先 | 認定区分 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 認可保育園(保育所) | 2号認定 | 保育時間が長い。長期休暇なし。入所は指数(点数)による選考。 |
| 幼稚園 | 1号認定 | 14時頃までの標準保育。夏休み・冬休みあり。預かり保育を利用すれば延長可。 |
| 認定こども園 | 1号または2号認定 | 保育と教育の両機能を持つ。認定区分によって利用できる定員枠が異なる。 |
就労している保護者の多くは保育時間の長い認可保育園を希望します。しかし、認可保育園の3歳児クラスには大きな落とし穴があります。いいことですね、という話ではありません。
認可保育園の3歳児クラスは、そのほとんどが前年度からの持ち上がり進級です。0〜2歳から在籍している子どもたちがそのまま3歳児クラスに上がるため、新規で入れる空き枠がほとんどない園も多い。これが「3歳の壁」が生まれる根本的な構造です。
そのため保護者には、認可保育園だけに絞るのではなく、幼稚園の預かり保育や認定こども園も選択肢に入れるよう早い段階で情報提供することが大切です。幼稚園には「新2号認定(幼稚園に通いながら保育の必要性を認定される制度)」という仕組みがあり、一定の要件を満たせば保育料の助成を受けながら預かり保育を長時間利用することができます。
これは使えそうです。保護者が「幼稚園=保育時間が短い」という固定観念を持っている場合、新2号認定の制度を丁寧に説明するだけで選択肢が一気に広がります。
また、認可保育園の転園申し込みでは「保育指数(点数)」による選考が行われます。小規模保育を卒園した子どもには、自治体によって転園時に加点(プラス点数)が与えられる制度があります。たとえば自治体によっては卒園加点として「+2点」が付与されるケースもあり、これが転園の際の大きなアドバンテージになることもあります。加点の有無や点数は自治体ごとに異なるため、保育士として「窓口に相談してみてください」と案内することが一番の近道です。
内閣府|よくわかる「子ども・子育て支援新制度」(認定区分の詳細)
小規模保育から転園する子どもへの影響と、保育士にできるケア
制度や手続きの話が続きましたが、ここで視点を変えましょう。転園は子どもにとってどんな影響をもたらすのか、保育士として知っておきたい点があります。
小規模保育は定員6〜19人の少人数制という特性上、子どもは特定の保育士と非常に密な関係を築きます。0歳や1歳から預けられている場合、保育士との関係は愛着形成(アタッチメント)の中心を担っていることも少なくありません。
3歳での転園は、子どもにとって「慣れ親しんだ保育士との別れ」と「初めての大人数集団への適応」が同時に訪れるタイミングです。厚生労働省の研究では、施設変更(転園)そのものが親子間のアタッチメントの安定性に直接大きなダメージを与えるとは言い切れないとされています。しかし、環境変化に敏感な3歳前後の時期に、なじんだ保育者との分離が重なることで「登園しぶり」や情緒不安定が一時的に表れる子どもが少なくないことも現場の実態です。
保育士にできることは3つです。
- 📝 引き継ぎの丁寧な記録:その子のこだわり・安心グッズ・苦手な場面など、次の園の担任が即座に活用できる情報を「児童票・保育経過記録」として丁寧にまとめる
- 💬 転園前の保護者面談:転園後に登園しぶりや情緒不安定が出ることがあることを事前に伝え、「一時的なことだから見守ってほしい」と伝えることで保護者の焦りを軽減する
- 🌱 子どもへの「お別れの時間」の設定:突然のお別れよりも、「新しい大きい園に行くんだね」と子ども自身が見通しを持てるような声かけや行事(お別れ遠足・クラスでのお祝いなど)を行う
特に重要なのが引き継ぎ記録です。転園先の保育士が「この子は初日から何を不安がるか」を知っているかどうかで、慣れ保育のスムーズさが大きく変わります。小規模保育で長く関わったからこそ書ける細かい情報が、転園先では何よりの宝になります。
3歳の転園は「終わり」ではなく「バトンタッチ」だという意識を、チーム全体で共有することが保育の質を守ることにつながります。
小規模保育の3歳以降はどうなる?2026年施行の法改正を保育士が読む
「小規模保育=3歳で必ず終わり」という常識が、2026年4月から変わります。これは保育業界全体にとって注目すべき制度改正です。
2025年(令和7年)4月に成立した改正児童福祉法により、「満三歳以上限定小規模保育事業」が全国で設置可能になりました。これは3〜5歳の子どものみを対象とした小規模保育事業で、2026年4月1日から施行されます。
| 比較項目 | 従来の小規模保育 | 満三歳以上限定小規模保育(2026年〜) |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 0〜2歳(原則) | 3〜5歳のみ |
| 定員規模 | 6〜19人 | 6〜19人(同様) |
| 連携施設 | 原則必要(受け皿確保) | 受け皿としての連携施設確保は不要 |
| 保育士の資格要件 | A型:全員保育士資格 | 保育士資格が必要(3歳以上の保育経験が求められる) |
この改正が生まれた背景には、「3歳の壁」解消という明確な政策目的があります。2016年にNPO法人フローレンスなどの市民活動が国家戦略特別区域での実証実験として3〜5歳限定小規模保育事業を提案し、2023年から特区での試験運用が始まり、2025年の法改正で全国展開が実現しました。約9年越しの政策実現です。
保育士にとっての変化は小さくありません。いくつかのポイントに注意が必要です。
- ✅ 3〜5歳を受け入れる場合は保育カリキュラムの刷新が必要:0〜2歳とは発達段階がまったく異なり、遊びの質・ことばの発達・運動機能が大きく変化する時期。保育士として幼児保育の視点が求められます。
- ✅ 施設・設備の整備が課題:0〜2歳専用設計の施設では、3歳以上の運動量に対応する空間確保が難しいケースがあります。新規開設園では設計段階から対応が必要です。
- ✅ 既存の0〜2歳小規模保育との併設も検討可能:0〜2歳の小規模保育事業と3〜5歳限定小規模保育事業を同じ法人で運営することで、一貫した保育を提供できる体制を構築できる可能性があります。
この制度はまだ2026年4月施行であり、現場への浸透はこれからです。保育士として「卒園後の行き先がない」という保護者の悩みに対して、新しい選択肢が生まれることを先取りして伝えられると、信頼関係の構築にもつながります。
2026年4月が条件です。施行前の開設を進める事業者は、こども家庭庁の告示・通知を継続的にチェックしておきましょう。
こども家庭庁による改正法の解説ページは以下から確認できます。
こども家庭庁|令和7年4月に成立した改正児童福祉法について(保育関係)
また、NPO法人全国小規模保育協議会も政策提言と最新情報を発信しています。
NPO法人全国小規模保育協議会|政策提言ページ(連携施設・3歳以上対応)

小規模保育のつくりかた: 待機児童の解消に向けて

