子供の情景シューマン楽譜の選び方と全曲を徹底解説
「子供の情景」というタイトルなのに、子供には演奏できない上級者向けの作品です。
子供の情景シューマンの作品誕生と背景を知っておく理由
シューマンの《子供の情景》Op.15は、1838年、作曲家が28歳のときに書き上げたピアノ小品集です。全部で13曲から成り、全曲を通して演奏すると約18分ほどかかります。1曲1曲はとても短く、長いものでも3分程度しかありません。
この作品が生まれたきっかけは、婚約者だったクララ・ヴィーク(後の妻)の一言でした。クララが手紙の中で「あなたは時々、子供のように見えます」と書いたことが余韻のように残り、シューマンはそこからインスピレーションを受けて約30の小曲を書き上げます。その30曲の中から13曲(手紙では「12曲」と書かれており、後に1曲が追加されたとされる)を選んで《子供の情景》と名付けました。
背景を知ることがなぜ重要か、という点があります。この作品が生まれた1838年当時、シューマンはクララの父親・フリードリヒ・ヴィークからの猛烈な反対を受けており、クララと自由に会うことすら許されない状況にありました。つまり、明るく穏やかな印象を持つこの曲集は、実はとても苦しい状況の中で生まれた作品なのです。その事実を知ると、曲に込められた感情の奥行きがまったく違って聴こえてきます。
保育士として日々子供と向き合っている立場から見ると、この曲集のタイトルに親しみを感じる方は多いはずです。ただ一点確認しておきたいのは、シューマン自身が「これは年長者の回想であり、年長者のための作品だ」と述べている点です。つまり「子供のための楽曲」ではなく、大人が子供時代を懐かしく思い返すために書かれた作品。リスト(フランツ・リスト)も「子供が弾くには難しすぎるので、子供に読み聞かせる物語のような作品」と評しています。
この作品の位置づけが理解できると楽譜選びや練習の方向性が変わります。つまり「子供向け入門曲」と誤解せず、大人の表現力を問う中級以上の作品として臨む姿勢が大切です。
なお《子供の情景》は、同時期に書かれた《ノヴェレッテンOp.21》の付録として構想されていた時期もあります。印刷底本にはショパンへの献辞とともに「子供の物語の付録」として記されており、後に削除・独立出版されたことがわかっています。この経緯も、作品への理解を深める上で知っておくとおもしろいポイントです。
ピティナ・ピアノ曲事典「子供の情景 Op.15」(各曲の詳細な成立経緯・曲目解説が掲載)
子供の情景シューマン楽譜の難易度と13曲を一覧で解説
「子供の情景」という名前から「初級曲集」と思われがちですが、それは誤解です。全体的な難易度はブルクミュラー25番を修了し、ソナチネに差しかかっているくらいが目安とされています。ヤマハのぷりんと楽譜の基準では、代表曲のトロイメライが「中級」と分類されており、全曲の大半が中級〜中上級に相当します。
それが条件です。
ただし、1曲あたりの長さは1ページ前後とコンパクトで、楽譜の見た目はシンプルに感じることも多いです。難しさの本質は、複数の声部(メロディーと内声と低音)を同時に聴き分け・弾き分けることにあります。バッハの「インヴェンション」や「シンフォニア」に代表される対位法的な書き方が随所に見られるため、単純に音符をなぞるだけでは曲になりません。
下の表に全13曲の難易度を整理します。
| 曲番 | タイトル(邦題) | 調/拍子 | 難易度目安 |
|---|---|---|---|
| 第1曲 | 見知らぬ国と人々 | ト長調・2/4 | ⭐ やさしい |
| 第2曲 | 不思議なお話 | ニ長調・3/4 | ⭐ やさしい |
| 第3曲 | 鬼ごっこ | ロ短調・2/4 | ⭐⭐⭐ 中級 |
| 第4曲 | おねだり | ニ長調・2/4 | ⭐⭐ 初中級 |
| 第5曲 | みちたりた幸福 | イ長調・3/4 | ⭐⭐⭐⭐ 中上級 |
| 第6曲 | 重大な出来事 | イ長調・3/4 | ⭐⭐ 初中級 |
| 第7曲 | トロイメライ(夢) | ヘ長調・4/4 | ⭐⭐⭐⭐ 中上級 |
| 第8曲 | 炉端で | ヘ長調・2/4 | ⭐⭐⭐⭐⭐ 上級 |
| 第9曲 | 木馬の騎士 | ハ長調・3/4 | ⭐⭐⭐⭐⭐ 上級 |
| 第10曲 | むきになって | 嬰ト短調・2/8 | ⭐⭐⭐⭐⭐⭐ 高難度 |
| 第11曲 | こわがらせ | ト長調・2/4 | ⭐⭐⭐⭐⭐⭐ 高難度 |
| 第12曲 | 子供は眠る | ホ短調・2/4 | ⭐⭐⭐⭐⭐⭐ 高難度 |
| 第13曲 | 詩人のお話 | ト長調・4/4 | ⭐ やさしい |
保育士がピアノの練習として取り組むなら、まず第1曲「見知らぬ国と人々」か第13曲「詩人のお話」から入るのがおすすめです。両曲ともト長調で、楽譜も比較的読みやすい構成になっています。3声部の動きはありますが、他の曲のように複雑なシンコペーションやタイの組み合わせが少ないので、シューマンの世界観を最初に体験するのにちょうどよい入口です。
特筆すべきなのは第4曲「おねだり」と第1曲「見知らぬ国と人々」の関係です。第4曲の冒頭メロディーは「シ・ソ・嬰ファ・ミ・レ」という音の並びで、第1曲の主題と同じ音が使われています。調もリズムも違うのに同じ音列が出てくるという設計は、シューマンが作品全体を有機的につながった「一つの物語」として構成していた証拠です。保育士が子供に音楽のことを話すときの「豆知識」としても使えます。
子供の情景トロイメライの楽譜と弾き方のポイント
全13曲の中で最も広く知られているのが第7曲「トロイメライ」です。ドイツ語で「夢想」を意味するこの曲は、ヘ長調・4分の4拍子で書かれており、4声部・4小節からなる旋律が、和声を変えながら8回繰り返されて終わります。聴いた印象はゆったりと静かですが、実は難易度は中上級です。
ゆっくりな曲なのに難しい、というのが演奏者を悩ませるポイントです。その理由は3つあります。第一に、シューマンが1拍目に強拍を置くことを意図的に避け、拍節感を曖昧にしているため、機械的に弾くと曲の夢想的な空気が消えてしまいます。第二に、楽譜は1ページ分しかないにもかかわらず、右手だけで上声部・内声部・下声部の3つの声部を同時に弾き分けることが求められます。第三に、わずか8回の旋律の反復をどう「聴かせるか」が演奏者の腕の見せどころであり、単なる反復にならないようフレージングと強弱を工夫する必要があります。
練習のコツが1つあります。まず右手の各声部を1本ずつ取り出して歌いながら弾いてみることです。上のメロディーだけ、内声だけ、という具合に分解して練習すると、どの音が前に出るべきかが体感で理解できます。これはちょうど、子供に絵本を読み聞かせるとき「主役のセリフ」と「ナレーション」の声色を変えるのと同じ感覚です。
なお「トロイメライ」の楽譜は単曲でのダウンロード販売も充実しています。全音楽譜出版社の中上級版(原曲)がat-elise.comで220円から入手可能です。はじめの1曲として試してみたい場合は、まず単曲の楽譜から始め、気に入ったら全13曲が収録された楽譜集を購入するという流れが無駄のない選択です。
ピティナ・ピアノ曲事典「トロイメライ Op.15-7」(拍節の分析・演奏上の特徴が詳しく解説されています)
子供の情景シューマン楽譜の版(エディション)を選ぶ基準
楽譜を購入する際に「どの版を買えばよいか」という問題が出てきます。日本でよく見かける版を4つに分けて整理します。
まず最も信頼性が高いとされているのがヘンレ版(Henle版)です。シューマンが書いた原典に最も忠実な原典版の代表格として、世界中の音楽大学や演奏家に使われています。2007年改訂版が現在の最新版で、価格は輸入楽譜ながら1,200〜1,500円程度で入手できます。日本語の解説は一切ないものの、曲のタイトルをそのまま検索すれば内容は容易に確認できるので、実用上は問題ありません。もし1冊だけ選ぶならヘンレ版が基本です。
次にウィーン原典版もヘンレ版に並ぶ権威ある版ですが、「子供の情景」に関してはヘンレ版よりやや割高になる場合があります。見やすさや使いやすさの面ではヘンレ版がやや優位とする声が多いです。
ベーレンライター版はヘンレ版・ウィーン原典版に匹敵する品質を持ちますが、入手しにくいことと価格の高さがネックです。手に入るタイミングがあれば検討してみる価値はあります。
一方、全音楽譜出版社版は国内で最も流通している楽譜で、価格も手頃(1,000円前後)で書店でもすぐ買えます。日本語の解説や運指が付いているものもあり、独学で始める方や保育士として「まず弾いてみたい」というニーズには適しています。ただし、原典版ではないため、細かなアーティキュレーション(音の切り方・つなげ方の指示)が原典と異なる部分があることは知っておくべきポイントです。
これが条件です。購入の際は「原典版(Urtext)かどうか」「運指は必要か」「予算はいくらか」の3点を整理しておくと、自分に合った版を選びやすくなります。
全音楽譜出版社「シューマン:子供の情景とアベッグ変奏曲〔標準版〕」(演奏会向けツェルニー40番程度の難易度表記あり)
子供の情景シューマンを保育士が保育現場で活かす独自視点
「子供の情景」は保育現場でのBGMや入眠のピアノ演奏として意外と有効です。多くの保育士はお昼寝タイムや自由遊びの時間に市販のCDや配信音楽を流すことが多いですが、保育士自身がピアノで弾いたクラシック曲は子供の反応が明らかに違います。
その理由は「生音の揺らぎ」にあります。CDの再生音は一定のテンポ・音量で流れますが、生ピアノの音はほんの少し揺らぎがあり、これが人間の呼吸や心拍に近い効果をもたらすとされています。シューマンの「トロイメライ」のように1〜3分の短い曲が繰り返し演奏されると、子供は音の変化に安心感を持ちやすくなります。
保育士がよく活用するのは第1曲「見知らぬ国と人々」と第7曲「トロイメライ」、そして第12曲「子供は眠る」の3曲です。
- 🎵 第1曲「見知らぬ国と人々」:ゆったりしたト長調の曲で、朝の会やお迎え前の落ち着いた時間帯にBGMとして適しています。難易度も全13曲の中で最も低い部類なので、保育士が最初に練習するのにおすすめです。
- 🎵 第7曲「トロイメライ」:お昼寝の始まりや絵本読み聞かせの前後に流すと、子供がすっと静かになる不思議な力があります。演奏難易度は中上級ですが、繰り返し聴かせてもらった子供は自然と好きになる曲です。
- 🎵 第12曲「子供は眠る」:タイトルそのままに、入眠音楽として効果的な1曲。全体を通して非常に静かなままで終わり、最後は主和音に解決されずに曲が消えるように終わります。この終わり方が子供の眠りを誘うのに自然にはたらきます。
ただし実際の演奏については注意点があります。難易度が高い曲を焦って練習すると、本番でミスタッチが多くなり逆効果です。保育士として「完璧な演奏」よりも「落ち着いた雰囲気を作ること」を目的に据え、まず弾きやすい曲から現場に取り入れていくのが現実的な流れです。
また、子供の情景を子供に「聴かせる機会」を作ることは、音楽教育の観点からも有益です。保育所保育指針(厚生労働省)の表現領域には「様々な音楽に親しむ」という内容が含まれており、19世紀のロマン派ピアノ曲も立派な「様々な音楽」の一つです。保育士がクラシック音楽の背景を少し話すだけで、子供は音楽への興味を広げるきっかけを得られます。
厚生労働省「保育所保育指針」(表現領域の「音楽」に関する記述が確認できます)

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