レチタティーヴォの意味とアリアとの違いをオペラの歴史で解説

レチタティーヴォの意味・アリアとの違いを種類から歴史まで解説

「レチタティーヴォの試験問題を解こうとしたのに、アリアとの区別が曖昧なまま勉強して、保育士試験の音楽問題で1点を落とした人が8割以上います。」

🎶 この記事でわかること
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レチタティーヴォの正確な意味と語源

イタリア語「recitativo」の起源から「叙唱」という日本語訳まで、試験で使える知識を整理します。

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アリアとの決定的な違い

感情を歌い上げる「アリア」と物語を進める「レチタティーヴォ」。混同しやすい2つの役割の違いをわかりやすく解説します。

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セッコ・アッコンパニャートの種類と歴史

2種類のレチタティーヴォの違いと、16世紀から現代にいたる音楽的な変遷を保育士試験対策の視点からまとめます。

レチタティーヴォの意味と語源:「叙唱」とはどういうことか

 

「レチタティーヴォ(recitativo)」は、イタリア語で「朗読する・せりふを述べる・芝居をする」を意味する動詞「recitare(レチターレ)」が形容詞化した言葉です。日本語では「叙唱」や「朗唱」と訳されます。クラシック音楽の歌唱様式のひとつで、オペラオラトリオカンタータなどの大規模な声楽作品の中で使われます。

ひと言で言えば、「歌うというより、話すように歌う部分」です。

具体的なイメージとしては、普通の台詞より音程がついているものの、アリアのように美しい旋律を歌い上げるわけでもない、その中間のスタイルです。リズムは比較的自由で、極端に高い音や音の繰り返しを避けながら、言葉の自然なイントネーションやアクセントに沿って歌い進めます。英語では「recitative(レシタティーブ)」、ドイツ語では「Rezitativ(レツィタティーフ)」、フランス語では「récitatif(レシタティフ)」と表記します。

保育士試験の「保育実習理論」の音楽問題では、毎年何らかの音楽用語が出題されます。レチタティーヴォはその中でも出題実績のある用語のひとつです。「叙唱=話すように歌う様式」という定義は、まずここだけ覚えておけばOKです。

Wikipedia「レチタティーヴォ」:語源・定義・歴史・種類を網羅した基本情報

保育士試験に出る音楽用語は速度標語や強弱記号が多くを占めますが、「レチタティーヴォ」「カンタービレ」「ブリランテ」のようなやや難しめの用語も過去問に登場しています。音楽の細かい知識が問われる問2・問6あたりを攻略するうえで、こうした歌唱様式の用語を把握しておくことは、確実な得点につながります。

16世紀のフィレンツェでオペラが誕生した当初は、すべての台詞がこの朗唱的なスタイルで歌われていました。まだアリアとレチタティーヴォが明確に分かれていない時代は「モノディ」と呼ばれる様式が主流で、ヴィンチェンツォ・ガリレイ(1520〜1591)が「古代ギリシアの演劇のように、一人が語る音楽があってもよい」と提唱したことが発展の起点となりました。やがて中期バロック時代に入ると、旋律美を中心としたアリアと、朗唱的なレチタティーヴォに役割が明確に分かれていくことになります。

レチタティーヴォとアリアの違い:物語を進めるか、感情を歌い上げるか

レチタティーヴォとアリアは、オペラの2大要素です。この2つの違いを理解するとオペラ全体の構造が見えてきます。

まず「アリア」は、登場人物がその時々の感情や心情を歌い上げる部分です。美しい旋律があり、拍手が起こるのもアリアが終わった直後が大半です。一方、「レチタティーヴォ」は物語を進めるための会話・状況説明を担います。台詞に近く、歌詞が聞き取りやすいことが重要で、音楽よりも言葉が優先されます。

整理するとこうなります。

項目 レチタティーヴォ アリア
主な役割 物語・状況の説明、会話 感情・心情の表現
旋律性 低い(セリフに近い) 高い(美しいメロディ)
リズム 自由(言葉に従う) 規則的・整然としている
伴奏 通奏低音のみ、またはオーケストラ オーケストラ全体
物語の時間 物語が進む 物語は一時停止

一般的なオペラの流れでは、「レチタティーヴォで状況を説明→感情が高まったところでアリアへ」という流れが多くみられます。つまりレチタティーヴォは、アリアの「土台」や「助走路」のような役割を担っているのです。これは便利ですね。

たとえば物語の中で「戦地に赴いた彼が亡くなった連絡が来た」という状況をレチタティーヴォで説明し、その後に「悲しみのアリア」を歌うという流れが典型的です。レチタティーヴォがないと、突然アリアが始まってしまい、聴衆が状況を理解できなくなります。

アリアとレチタティーヴォを区別する際に便利なのが、「伴奏の厚さ」です。レチタティーヴォは基本的に伴奏がシンプルで、歌詞を明瞭に聞き取れることが優先されます。一方、アリアには豊かなオーケストラ伴奏がつきます。オペラを観る機会があれば、伴奏の厚さに注目してみると、どちらがレチタティーヴォかすぐに判断できます。

静岡国際オペラコンクール公式ブログ「アリアとレチタティーヴォ」:両者の役割の違いと歴史的変遷を専門家が詳述

レチタティーヴォの2種類:セッコとアッコンパニャートの特徴

レチタティーヴォはひとつではなく、大きく2種類に分かれます。この区別も試験対策として押さえておくべきポイントです。

① レチタティーヴォ・セッコ(recitativo secco)

「セッコ(secco)」はイタリア語で「乾いた」という意味です。通奏低音(チェンバロなど)だけが伴奏する、シンプルなレチタティーヴォです。チェンバロは現代のグランドピアノに似た見た目ですが、構造が異なり弦をはじいて音を出す楽器で、音は少し金属的で音が伸びません。「ジャラン!」と弾いた後に歌い手がセリフのように歌い進める、あのイメージです。

歌詞が非常に聞き取りやすいという利点があり、独り言・会話・状況説明など「重要だが感情的なピークではない場面」に使われます。バロック期のオペラや18世紀ナポリ楽派の作品に多く、オペラ・ブッファの軽妙なやり取りでも効果的でした。モーツァルト以前のオペラ作品に特に多く見られます。19世紀になるにつれ徐々に使われなくなり、1850年ごろまでにはほぼ消滅します。

② レチタティーヴォ・アッコンパニャート(recitativo accompagnato)

「アッコンパニャート(accompagnato)」は「伴奏付き」を意味します。英語の「アカンパニー(accompany)」と同語源なので、意味が覚えやすいですね。管弦楽(オーケストラ)全体が伴奏するレチタティーヴォで、「レチタティーヴォ・ストロメンタート(器楽付き)」とも呼ばれます。

18世紀のオペラでは、主要な登場人物の重要なシーン——例えばドラマティックな独白や激白の場面——に使われました。セッコに比べて音楽的な表現が豊かで、感情の盛り上がりを演出できます。19世紀中期以降はこちらが主流になります。

この2種類の違いは「チェンバロのみ」か「オーケストラ全体」かで判断できます。

レチタティーヴォ・セッコに慣れていない現代の演奏者にとって、即興的な伴奏を求められる点は難しいポイントです。現代の演奏では通奏低音を担当するチェンバロ奏者が、歌い手を邪魔しない程度に自由にアレンジを加えながら演奏します。ここで演奏者の個性やセンスが光ります。

レチタティーヴォの歴史:16世紀の誕生から現代までの変遷

レチタティーヴォの歴史をたどると、オペラそのものの進化が見えてきます。これは面白いですね。

16世紀:モノディからの誕生

オペラの発祥はイタリア、フィレンツェです。1597年に上演されたヤコポ・ペーリ作曲の歌劇《エウリディーチェ》が、最初のレチタティーヴォを含むオペラとされています。この時代の音楽は、複数が同時に歌う複声音楽(ポリフォニー)が主流でしたが、「何人も同時に歌うと歌詞がわからない」という問題があり、一人が語るように歌う「モノディ」が生まれました。レチタティーヴォはこのモノディから発展した様式です。

17〜18世紀:バロックの全盛期

音楽の中心がフィレンツェからヴェネツィア、そしてナポリへと移ります。18世紀のナポリは「世界の音楽の首都」と呼ばれるほどの音楽都市でした。この時代に活躍したアレッサンドロ・スカルラッティらナポリ楽派の作曲家たちによって、アリアとレチタティーヴォの役割分担が明確化されます。なかでも興味深いのは、当時のイタリアではレチタティーヴォ部分だけを専門に書く作曲家がいた、という事実です。つまり現代のように一人の作曲家が全曲を担当するのは当然ではなかったのです。

この時代のレチタティーヴォは主にレチタティーヴォ・セッコで、チェンバロ奏者だったスカルラッティの影響もあり、チェンバロ伴奏のスタイルが定着しました。

18〜19世紀:変革の時代

グルック(1714〜1787)はオペラ改革を推進し、彼の作品『オルフェオとエウリディーチェ』ではすべてのレチタティーヴォが管弦楽によって伴奏されます。これは当時としては革新的でした。ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱」第4楽章の冒頭では、声楽が登場する前にチェロとコントラバスによる器楽のレチタティーヴォが登場します。これは「楽器が人間の声のように語る」という表現で、当時の聴衆に大きな衝撃を与えました。

有名なビゼー作曲の《カルメン》(1875年初演)は、もともと地の台詞が入る「オペラ・コミック」形式でした。ところが初演後3ヶ月でビゼーが亡くなり、その後エルネスト・ギローがレチタティーヴォに書き直して再上演したところ、これが広まって現在の版として定着しました。台詞をレチタティーヴォに変えるだけで、作品全体のイメージが根本的に変わる——これがレチタティーヴォの持つ力を示す好例です。

19世紀後半以降:消滅と融合

19世紀後半になると、ヴェルディやワーグナーの作品では、アリアとレチタティーヴォの境界が曖昧になっていきます。特にワーグナーは後期の楽劇で「無限旋律」を導入し、レチタティーヴォとアリアの区別が消えていきました。レチタティーヴォ・セッコは19世紀前半にほぼ姿を消し、現代のオペラ——ヴェルディやプッチーニの作品——にはチェンバロによるレチタティーヴォはほとんど登場しません。

opera-diva.com「レチタティーヴォの歴史」:セッコ・アッコンパニャートの特徴とオペラ史の変遷をわかりやすく解説

レチタティーヴォが保育士試験に出たら:覚え方と独自視点でのまとめ

保育士試験の「保育実習理論」では、音楽用語の問題が毎年ほぼ確実に出題されます。その問題はひとつのミスが合否を左右することもある、見落とせない1点です。

レチタティーヴォを試験のために覚えるなら、以下の3点に絞ります。

  • ✅ 意味:「叙唱」。話し言葉で語るように歌う様式
  • ✅ 使われる場所:オペラ・オラトリオ・カンタータの中で、アリアの前や間に使用
  • ✅ アリアとの違い:アリアは感情表現、レチタティーヴォは物語進行

ここが基本です。

保育士試験では「レチタティーヴォ」そのものの定義を問う問題だけでなく、「カンタービレ」「ドルチェ」「ブリランテ」などの音楽用語と並べて、その意味の組み合わせを正しく選ばせる問題が多く出題されます。つまり「他の用語と混同しないこと」が重要です。特に似た雰囲気の用語として「アリオーゾ(arioso)」があります。これはレチタティーヴォとアリアの中間的な歌唱様式で、「アリア風の」という意味です。混同しないように注意しましょう。

独自視点として注目したいのが、レチタティーヴォと「保育現場での語りかけ」の意外な共通点です。

レチタティーヴォは「言葉の意味を明確に伝えながら、音楽的な抑揚もつける」という構造を持っています。これは実は保育士が子どもに話しかける際のトーンと非常に近い性質を持っています。絵本の読み聞かせや手遊び歌の「歌と語りの中間」のような部分は、まさにレチタティーヴォ的な表現です。音楽の歴史的用語でありながら、保育現場における「声の使い方」を意識するヒントとしても活用できます。

音楽用語の暗記が苦手な方には、スマートフォンのフラッシュカードアプリ「Quizlet」が活用できます。自分だけのカードセットを作成し、すき間時間に繰り返せるため、短期間での定着に向いています。「レチタティーヴォ=叙唱=話すように歌う」という関連づけを1枚のカードにして繰り返すだけで、試験本番での正答率は上がります。

保育士試験対策サイト「保育実習理論 音楽用語まとめ」:過去問頻出の音楽用語を速度・強弱・奏法・曲想に分類して整理した一覧ページ

試験では、カタカナ表記の音楽用語と日本語の意味を正確にリンクさせることが求められます。「レチタティーヴォ=叙唱」という対応関係は1セットで覚えるのが原則です。また「recitativo(イタリア語)→ recitare(朗読する)→ せりふを述べる→ 叙唱」という語源の流れを頭に入れておくと、ど忘れしたときでも語源から意味を復元できます。


第6変奏: Recitativo