ブラームスの子守歌オルゴールを保育士が使いこなす方法
オルゴールの音量が大きすぎると、子どもの聴覚が過敏になり逆に覚醒してしまいます。
ブラームスの子守歌オルゴールが保育現場で選ばれる理由
ブラームスの子守歌は、1868年にヨハネス・ブラームスが作曲した楽曲です。正式名称は「ウィーゲンリート(Wiegenlied)作品49-4」といい、150年以上にわたって世界中で子守歌として親しまれています。
その旋律が持つ「穏やかな3拍子」は、人間の呼吸や心拍に近いリズム構造を持ちます。研究によると、60〜80BPM(1分間の拍数)の音楽は副交感神経を優位にし、リラックス状態を促すことがわかっています。ブラームスの子守歌はおよそ72BPMで演奏されることが多く、この条件にぴったりあてはまります。
つまり「眠くなる音楽」として科学的な裏付けがあるということです。
オルゴールがとくに保育現場で好まれる理由は、その音色の特性にあります。オルゴールは金属製の弁(コム)を弾くことで音を出す仕組みで、倍音成分が豊富な「純粋な音」を出します。電子音やCDよりも耳に刺激が少なく、乳幼児の繊細な聴覚にやさしいのが大きなポイントです。
保育士が選ぶ理由はほかにもあります。
- 電源不要で、棚や布団の近くにさっと置ける手軽さ
- 音量が自然に一定で、誤って大音量にするリスクがない
- 視覚的にも「睡眠の時間」を子どもに伝えるシグナルになる
- 壊れにくく、保育室の備品として長期間使える
これは使えそうです。手軽さと安全性が揃っている点は、忙しい保育現場では大きな強みになります。
ブラームスの子守歌オルゴールの音量と距離の目安
多くの保育士は「小さく鳴らせば大丈夫」と考えがちですが、実際には距離と音量の組み合わせが重要です。
乳幼児の聴覚感度は成人の約2倍とも言われており、大人が「ちょうどいい」と感じる音量が、子どもにとっては刺激過多になるケースがあります。WHO(世界保健機関)は乳幼児向けの音環境として、45dB以下を推奨しています。これはささやき声程度の音量で、図書館の館内よりもさらに静かなレベルです。
音量が大きすぎると、子どもの聴覚が過敏になり逆に覚醒してしまいます。
オルゴールを子どもの頭から50cm以内に置く場合は、音が直接耳に届くため、とくに注意が必要です。一般的なオルゴールの至近距離での音圧は50〜60dBになることも多く、これは推奨値を超えます。
推奨される使い方の目安は以下の通りです。
- 布団から1〜1.5m離れた棚の上に置く(机の端から腕2本分ほどの距離)
- 布団全体に音が届くよう、部屋の中央寄りに配置する
- 壁際に置くと音が反響して音圧が上がるので避ける
- 子どもが眠りについたら、タオルや薄い布をオルゴールにかけて音を抑える
45dB以下が条件です。この数値を頭に入れておくだけで、配置の判断がしやすくなります。
音量チェックには無料のスマートフォンアプリ「騒音計」を活用するのも手です。実際の保育室で計測することで、感覚ではなくデータで管理できます。
ブラームスの子守歌オルゴールの種類と選び方のポイント
オルゴールには弁の数(音符数)によって音の豊かさが変わります。18弁・20弁・30弁・72弁などのラインナップがあり、弁の数が多いほど音域が広く、原曲に近い演奏ができます。
18弁のオルゴールはもっともシンプルで価格も1,000〜3,000円程度と手頃です。ただしブラームスの子守歌の旋律を完全に再現するには20弁以上が必要で、18弁では音が省略されることがあります。保育現場用として購入するなら、20弁〜30弁を目安にすると旋律のゆがみがなく、子どもが旋律を認識しやすくなります。
20弁以上が基本です。旋律の完成度が睡眠導入の効果にも影響します。
素材もポイントになります。木製ケースのオルゴールは音の響きが柔らかく、保育室の雰囲気にもなじみます。プラスチックケースは軽くて落としても壊れにくいですが、音が少し金属的になる傾向があります。
保育士向けのオルゴール選びで押さえたい比較ポイントをまとめます。
| 項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 弁の数 | 20弁以上を推奨(旋律の完成度) |
| ケース素材 | 木製は音が柔らか、プラスチックは耐久性重視 |
| ゼンマイ巻き | 1回巻きで何分鳴るか確認(2〜3分が目安) |
| サイズ | 棚に収まるコンパクトサイズが使いやすい |
| 価格帯 | 保育用途なら2,000〜8,000円程度が現実的 |
また、近年はオルゴールに似た電子音源の「オルゴール風サウンド」も普及しています。電源が必要ですが、音量調整やリピート機能があり管理しやすいのが利点です。ただし本物のオルゴールと電子音では音の質感が異なるため、子どもの反応を見ながら使い分けるのが賢明です。
ブラームスの子守歌オルゴールを使った睡眠導入の手順と注意点
睡眠導入にオルゴールを効果的に使うには、「音を鳴らすだけ」では不十分です。音・光・温度・ルーティンの4要素をセットで整えることで、子どもの脳が「眠る準備」を自動的に始めます。
まず「睡眠のルーティン化」が最重要です。毎日同じ流れ(絵本→オルゴール→就寝)を繰り返すと、子どもの脳は音を聞いた時点で眠気を準備しはじめます。これは条件付け(古典的条件づけ)の原理で、平均して2〜3週間で定着するとされています。
ルーティンが条件です。音楽単体よりも、一貫した流れが効果を高めます。
睡眠導入の手順の例を示します。
- 部屋の照明を60〜70%程度に落とす(直射日光をカーテンでさえぎる)
- 室温を夏は26〜28℃、冬は20〜22℃に設定する
- 布団に子どもを横にし、保育士が背中を軽くトントンする
- オルゴールをゆっくりゼンマイを巻いて鳴らす(急いで巻かない)
- オルゴールが止まるまで一定のリズムでトントンを続ける
- 子どもの呼吸が深くなったらトントンをゆっくり止める
ゼンマイを「急いでガリガリ巻く」音そのものが子どもを起こすことがあります。巻くときはゆっくり、静かに行うことが大切です。
注意点として、毎回同じオルゴール曲を使い続けることで「音=眠る合図」が強化されますが、保育士が変わっても同じオルゴールを使うことで一貫性が保たれます。担任が変わる年度替わりのタイミングでは、引き継ぎ事項としてオルゴールの使用方法を申し送りに含めておくと安心です。
保育士だけが知るオルゴールの意外な活用法と卒業のタイミング
オルゴールは睡眠導入だけでなく、情緒が不安定な子どもを落ち着かせる「感情調整ツール」としても使えます。これはあまり知られていない活用法です。
泣き止まない乳児に対し、声かけを一時中断してオルゴールを鳴らしたところ、30秒以内に泣き声が収まったという保育士の実践報告は少なくありません。これは「聴覚優位の注意転換」と呼ばれる現象で、強い感情状態にある子どもの注意を音に引きつけることで、感情の波を落ち着かせます。
意外ですね。泣き止まないときに試せる選択肢が増えます。
また、登園拒否や分離不安が強い子どもに対し、親から離れる瞬間にオルゴールを鳴らして「安心できる音のアンカー」として使う方法もあります。特定の曲と「安心・安全」の体験を結びつける手法で、愛着形成をサポートする保育心理学の考え方にもとづいています。
オルゴールに「依存しすぎる」状態への対応も必要です。
- 2〜3歳になったらオルゴールなしでも眠れる練習を少しずつ取り入れる
- オルゴールの音量を段階的に下げ、最終的になくても眠れる状態を目指す
- 就学前(5〜6歳)には音なしで眠れることを目標にする
卒業は段階的が原則です。急に取り上げると逆に睡眠が乱れることがあります。
オルゴールの活用に関心が深まった場合、日本音楽療法学会が公開している「音楽と乳幼児発達」に関する資料も参考になります。保育士資格の更新研修でも音楽療法的アプローチが取り上げられることがあるため、定期的に情報をアップデートしておくと保育の質向上につながります。
日本音楽療法学会 – 音楽療法の基礎知識と乳幼児への適用に関する情報が掲載されています(H3「オルゴールの意外な活用法」の参考)

Grigory Sokolov recital – Schubert, Beethoven, Rameau and Brahms – Berliner Philharmonie

