ドイツ語の歌「野ばら」保育士が子どもに伝える歌詞と歴史

ドイツ語の歌「野ばら」を保育士が子どもへ伝える歌詞と歴史

「野ばら」をただの童謡だと思って教えていると、子どもの語彙力向上という最大のチャンスを見逃します。

🌹 この記事でわかること
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「野ばら」の歌詞と意味

ゲーテの詩を原作とするドイツ語歌詞の意味を、保育士がわかりやすく子どもへ伝えるポイントを解説します。

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シューベルトとウェルナー、2つの旋律の違い

「野ばら」には有名な2種類のメロディがあります。保育現場でどちらを選ぶべきか、その理由も紹介します。

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保育現場での活用アイデア

歌うだけでなく、絵本・ペープサート・季節の制作活動とも連動できる「野ばら」の活用術をまとめています。

ドイツ語の歌「野ばら」の原作はゲーテの詩|歌詞の意味と成立背景

 

野ばら(Heidenröslein)」の原作は、ドイツの文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテが1771年頃に書いた詩です。ゲーテはこの詩を、若き日に恋した少女フリーデリーケ・ブリオンへの想いを込めて書いたとされています。少年が野に咲くばらを見つけ、手折ろうとする。ばらは「折れば傷つくぞ」と警告するが、少年はかまわず折ってしまう——という内容です。

詩の構造はわずか3連で、各連は6行で構成されています。原語のタイトル「Heidenröslein」は「荒野(Heide)のバラ(Röslein)」を意味し、日本語の「野ばら」はこの直訳に近い訳です。

保育士として伝えるときは「野のバラが主役のお話」と紹介すると、子どもたちがイメージしやすくなります。つまり物語として語れる詩ということです。

ゲーテはこの詩をその後長らく手元に置き、1789年に初めて詩集に発表しました。初稿から20年近く経ってから公開された作品であり、それだけ彼にとって大切な詩だったと言えます。保育の場でも「作った人がとても大切にしていた詩」と伝えるだけで、子どもの聴く姿勢が変わります。これは使えそうです。

項目 内容
原題 Heidenröslein(ハイデンレースライン)
作詩 ヨハン・W・フォン・ゲーテ(1771年頃)
詩集収録 1789年「詩集(Gedichte)」
詩の構成 3連・各6行
テーマ 少年と野ばらの出会いと別れ

ドイツ語の歌「野ばら」の作曲者はシューベルトとウェルナーの2人いる

「野ばら」と聞いて思い浮かべるメロディは人によって異なります。実はこの詩には代表的な作曲が2つ存在するからです。

1つ目はフランツ・シューベルトが1815年に作曲したバージョン(D257)です。シューベルトはこの年だけで144曲もの歌曲を書いており、「野ばら」もその一つとして残されています。短調的な翳りも持つ叙情的なメロディで、クラシックの声楽曲としてコンサートやCDでよく耳にするのはこちらです。

2つ目はハインリヒ・ウェルナーが1829年に作曲したバージョンです。こちらの方が明るく親しみやすい旋律で、日本の学校教育や保育現場で広く使われているのはウェルナー版です。文部省唱歌や教科書に採用されてきた歴史があります。結論は「保育現場ではウェルナー版が主流」です。

保育士として子どもに教える場合、ウェルナー版を選ぶのがほぼ間違いありません。リズムが一定で音域も狭く(ドからラの範囲に収まることが多い)、幼児が歌いやすい音域設計になっています。一方でシューベルト版は音域が広く、転調もあるため幼児向けとしては難易度が高めです。

  • 🎵 シューベルト版(D257, 1815年):叙情的・演奏会向き・音域広め
  • 🎵 ウェルナー版(1829年):明るく親しみやすい・教育現場で主流・幼児向き

どちらが「正しい」かではなく、場面に合わせて選ぶことが大切です。

ドイツ語の歌「野ばら」の日本語訳詞|近藤朔風訳と保育で使いやすい歌詞の特徴

日本で最も広く歌われている「野ばら」の日本語詞は、近藤朔風(こんどう さくふう)が明治時代に訳したものです。近藤は明治・大正期に活躍した訳詞家で、「菩提樹」「魔王」など多くのドイツ歌曲を日本語に移しています。野ばらの訳詞は日本語として美しいリズムを持ちながら、原詩の情景をほぼ忠実に再現しています。

冒頭の「わらべは見たり、野なかの薔薇」という一節は、ゲーテの原詩「Sah ein Knab ein Röslein stehn(少年はばらが立っているのを見た)」の直訳です。「わらべ」という古語が使われているため、現代の子どもには少しわかりにくい場合があります。

保育現場では「わらべ=子ども」「野なか=野原の中」と簡単に言い換えて説明すると理解が進みます。説明は短くて十分です。歌詞の意味を全部説明しようとせず、1番の1フレーズだけ解説するくらいがちょうど良いです。

ドイツ語の原詞では各連の最後に「Röslein, Röslein, Röslein rot, Röslein auf der Heiden(赤いばら、赤いばら、荒野のばら)」という繰り返し(リフレイン)があります。日本語訳でも「野ばら、野ばら、赤い野ばら」に相当する部分がリフレインとして使われており、子どもたちが一番早く覚えるのもこのフレーズです。繰り返しのある歌は記憶に定着しやすいのが原則です。

ドイツ語の歌「野ばら」を保育に活かす|季節・絵本・制作活動との連動アイデア

「野ばら」は春から初夏(5〜6月)にかけてのばらの開花シーズンに合わせて取り上げると、歌と実物の体験を結びつけられます。保育園や幼稚園の近くに花壇やばらが咲いている公園があれば、散歩がてら実物を見せながら歌うと効果的です。視覚・聴覚を同時に使う活動は記憶への定着が強い傾向があります。

制作活動との連動では、折り紙や画用紙でばらの花を作り、歌いながら飾りつけるという流れが保育士に人気です。完成した作品に「野ばら」の歌詞の一節を添えると、展示物としての完成度も上がります。

絵本との連動も有効です。「野ばら」をテーマにした絵本としては、ゲーテの詩を絵本化した作品がいくつか国内外で出版されています。読み聞かせのあとに歌を歌う流れにすると、子どもが物語の余韻の中で歌に入れます。いいことですね。

ペープサートや人形劇に使う場合は、「少年」「ばら」「後悔する少年」という3つの場面を作るだけでも成立します。3連構成のシンプルな詩なので、劇化しやすい点が保育教材として優れています。

  • 🌸 5〜6月の春の歌として取り上げる
  • ✂️ 折り紙・画用紙でばらを制作してから歌う
  • 📚 絵本の読み聞かせ→歌へつなぐ流れで活用
  • 🎭 ペープサートで3場面を演じる(少年・ばら・後悔)
  • 🚶 散歩中に本物のばらを見ながら歌う

保育士だけが知っておきたい「野ばら」独自の視点|詩が伝える「命と後悔」の教育的意味

「野ばら」は一見すると美しい春の歌ですが、詩の内容を丁寧に読むと「命を軽く扱うことへの後悔」が描かれています。少年はばらの「折ったら傷つけるぞ」という警告を無視し、結果としてばらを傷つけてしまいます。これは「衝動のままに行動した結果、取り返しのつかないことが起きる」という教訓的な物語構造です。

この視点は、幼児期における感情調整の学びと深く連動しています。衝動性が高く自己制御を学んでいる幼児期(3〜6歳)に、歌を通じて「気持ちを抑えることの大切さ」を間接的に伝えられる素材として機能します。直接「ダメです」と言わなくても、物語と歌が代わりに伝えてくれます。

日本の保育カリキュラムにおける「道徳的・社会的な発達」の領域(文部科学省「幼稚園教育要領」の「人間関係」「言葉」「表現」3領域に関連)とも一致する内容です。つまり「野ばら」は単なる音楽活動ではなく、複数の領域を横断できる教材ということです。

保育士がこの視点を持って歌唱指導に臨むと、ただ歌を教えるだけでなく、歌い終わった後に「ばらはどんな気持ちだったかな?」と問いかける展開が生まれます。子どもの言語化能力と共感力を同時に引き出す問いになります。

このような詩の奥にある教育的テーマを意識して扱う保育士は、同じ歌でも子どもへの伝わり方がまったく変わります。歌の力は深いですね。

文部科学省「幼稚園教育要領解説」(表現・言葉・人間関係の領域解説)

※「野ばら」のような情緒的な歌や詩を活用した保育活動が、どの教育領域に対応するかを確認する際の参考として。

青空文庫(近藤朔風訳詞など日本語訳の確認に)

※近藤朔風によるドイツ歌曲の日本語訳詞テキストを無料で確認できます。著作権切れの訳詞を保育資料として利用する際の確認に活用できます。


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