ソナチネアルバムのやるべき曲と選び方・順番
全部の曲に取り組もうとすると、習得に3年以上かかることがあります。
ソナチネアルバムとは?やるべき曲を知る前の基礎知識
ソナチネアルバムとは、18〜19世紀のクレメンティ、クーラウ、ディアベッリ、ハイドンなどの作曲家によるソナチネ(小さなソナタ)を集めた教則本です。全2巻構成で、第1巻に約36曲、第2巻にも同程度の曲が収録されています。
ピアノ学習の世界では「バイエル→ブルクミュラー→ソナチネアルバム→ソナタアルバム」という流れが長年のスタンダードです。つまり中級手前のステップに位置します。
保育士を目指す学生や現職の保育士にとっても、ソナチネアルバムに取り組む意味は大きいです。和音の処理、指の独立、フレーズの歌わせ方など、保育現場のピアノ伴奏に直結するスキルが凝縮されています。
ただし全曲を網羅する必要はありません。優先順位が重要です。
ソナチネアルバムのやるべき曲・定番5選と難易度
ソナチネアルバムの中でも、特に取り組む価値が高いとされる定番曲があります。以下に代表的な5曲を難易度順で整理しました。
| 曲名・作曲家 | 難易度目安 | 学べるポイント |
|---|---|---|
| ソナチネ Op.36-1(クレメンティ) | ★★☆☆☆ | 右手の旋律とスケール感覚の基礎 |
| ソナチネ Op.20-1(クーラウ) | ★★★☆☆ | 長いフレーズの処理と左手の安定 |
| ソナチネ Op.55-1(クーラウ) | ★★☆☆☆ | 両手のバランスと歌うようなタッチ |
| ソナチネ Op.151-1(ディアベッリ) | ★★☆☆☆ | 明快なリズムと音楽的な表現力 |
| ソナチネ ハ長調 Hob.XVI/1(ハイドン) | ★★★☆☆ | 古典的な様式感と装飾音の扱い |
この5曲だけ押さえても得られる技術量は相当なものです。
クレメンティのOp.36-1は、ソナチネアルバムの「入口」として最もよく使われます。テンポが速すぎず、右手のスケールパッセージが自然に身につく構造になっています。クーラウのOp.20-1は、第1楽章が長めで集中力を問われますが、仕上げたときの達成感は格別です。
保育士として必要な「伴奏力」を意識するなら、クレメンティとディアベッリを中心に練習するのが効率的です。左手の動きがシンプルで、右手の表現に集中しやすい構造になっています。
ソナチネアルバムの曲を選ぶ際の練習順と進め方のポイント
やるべき曲を選ぶだけでなく、どの順番で進めるかも大切です。闇雲に難しい曲から始めると、挫折につながります。
おすすめの進め方は次の3ステップです。
- まずクレメンティのOp.36シリーズ(No.1〜6)を難易度順に取り組む
- 次にクーラウのOp.55シリーズで左右のバランスを鍛える
- 慣れてきたらクーラウOp.20やハイドンで古典的な表現力を高める
クレメンティのOp.36は全6曲で構成されており、No.1〜3が初心者寄り、No.4〜6が中級に近い難易度です。まるで難易度が階段のように設計されているため、順番通りに取り組むだけで実力が積み上がります。
1曲にかける練習期間の目安は、週3〜4回の練習ペースで2〜4週間程度です。これが基本です。
無理に全楽章を仕上げる必要はありません。第1楽章だけを丁寧に仕上げることでも、技術的なリターンは十分得られます。特に時間が限られている保育士・保育学生は「第1楽章だけを深く」という方針が現実的です。
ソナチネアルバムのやるべき曲で保育士が特に注目すべき技術要素
保育士がソナチネアルバムに取り組む目的は、演奏会での披露ではありません。日常の保育現場でのピアノ伴奏力を高めることです。その視点で見ると、特に意識すべき技術が3つあります。
① 左手の安定(バス音+和音の処理)
保育の現場では、右手で旋律を弾きながら左手で伴奏を支えるスタイルが基本です。ソナチネのほとんどの曲には、左手でアルベルティ・バス(ドミソドミソのような分散和音)が登場します。これを安定して弾けるようになると、どんな伴奏譜でも応用が利きます。
② 指の独立(右手のパッセージ)
クレメンティやクーラウの曲には、右手で速いスケールや連続した16分音符が出てきます。指が独立していないと音がつぶれてしまいます。ソナチネで鍛えることで、保育現場でテンポ感のある伴奏ができるようになります。
③ フレーズの歌わせ方(音楽的な表現)
ただ音を並べるだけでは子どもの心には響きません。保育現場のピアノは、子どもが歌いたくなるような「推進力のある伴奏」が求められます。ソナチネではフレーズのまとまりを意識して弾く練習ができます。
これは使えそうです。
特にアルベルティ・バスのコントロールは、保育で頻出する「おもちゃのチャチャチャ」「にじ」などの伴奏にそのまま応用できます。
ソナチネアルバムを保育士視点で活かす独自の練習法
ここからは少し視点を変えます。ソナチネアルバムを「教則本として消化する」のではなく、「保育のピアノ力を底上げするツール」として使う方法を紹介します。
よくある練習法は「片手ずつ→両手でゆっくり→テンポを上げる」という流れですが、保育士には少し違うアプローチが有効です。
「左手だけで歌える練習」がポイントです。
左手パートだけを弾いて、その音楽としての流れが聞こえるかどうかを確認します。左手が「伴奏の自動化」に近い状態になって初めて、右手の旋律表現に意識を向けられるからです。保育士の多くは右手の練習に時間をかけますが、左手を先に仕上げる方がトータルの習得が早くなります。
つまり左手の先行練習が鍵です。
もう一つのポイントは「曲の冒頭8小節を完璧にする」ことです。全体をなんとなく通すより、冒頭8小節を指が勝手に動くレベルまで仕上げる方が、本番での安定感が増します。保育のピアノ伴奏は最初の4〜8小節で子どもの集中が決まるため、この感覚は現場でも直結します。
練習時間が1日15〜20分しかない場合でも、この「冒頭8小節集中法」と「左手先行練習」を組み合わせれば、4〜6週間で1曲仕上がります。
参考にできる音源や楽譜の確認には、以下のようなリソースが役立ちます。
IMSLP(国際楽譜ライブラリー):ソナチネアルバム収録曲の楽譜を無料で参照できます。クレメンティやクーラウの原典版楽譜を確認したいときに便利です。
全音楽譜出版社:日本でよく使われるソナチネアルバムの版元。難易度表記や運指のアドバイスが日本語で確認できます。
ソナチネアルバムで挫折しないための曲数と目標設定の考え方
「ソナチネアルバムはやるべき曲が多くて何から手をつければよいかわからない」という声はよく聞きます。全曲に取り組もうとして途中で止まってしまうケースが非常に多いです。
まず現実的な目標から始めましょう。
保育士・保育学生に向けて言えば、ソナチネアルバムで「やるべき曲」は第1巻の前半6〜8曲で十分です。具体的には下記が最低ラインの目安です。
- クレメンティ Op.36-1(第1楽章)
- クレメンティ Op.36-3(第1楽章)
- クーラウ Op.55-1(第1楽章)
- ディアベッリ Op.151-1(第1楽章)
この4曲・4楽章を丁寧に仕上げることで、保育現場で求められるピアノ力の基礎は十分に整います。全36曲をこなすことにこだわる必要はありません。
目標は「4曲仕上げること」だけで大丈夫です。
なお、保育士養成校の実技試験でソナチネアルバムの曲が出題される場合、最も頻出なのはクレメンティのOp.36-1とクーラウのOp.55-1です。この2曲だけは念入りに準備することをおすすめします。
進捗を可視化するには、各楽章ごとに「①片手完成→②両手完成→③テンポ通り→④表現まで」の4段階チェックリストを手帳や練習ノートに書いておくのも効果的です。保育実習前など、限られた時間で集中的に練習するときに特に使えます。


