ソナタアルバムの難易度と保育士向け活用ガイド
ソナタアルバムの「上」を買えば、難しい曲が揃っているから上達が早い──それは大きな誤解で、「上」に収録されたソナタを無計画に練習すると、仕上げに平均3〜4ヶ月余計にかかります。
ソナタアルバムの難易度レベルと「上・下」の違いを徹底整理
ソナタアルバムは、全音楽譜出版社をはじめ複数の出版社から「上巻・下巻」の2冊構成で出版されているピアノ曲集です。収録されている作曲家は主にハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンの3大古典派で、それぞれ難易度の幅が非常に広いのが特徴です。
一般的に「下巻」がより易しく入門向け、「上巻」がより難しく中〜上級向けとされています。ただしこれは目安に過ぎません。実際には「下巻」の中にも指のポジション移動や両手の独立性が求められる難曲が含まれており、「上巻なら全部難しい」という単純な話ではないのです。
難易度の目安として、一般的に使われるピアノ学習のグレード換算(ヤマハ・カワイなど)では以下のように整理されます。
- 🟢 入門〜初級(グレード8〜7相当):ハイドンのソナタ Hob.XVI/G1、Hob.XVI/C1 など比較的短くシンプルな構造の曲
- 🟡 中級(グレード6〜5相当):モーツァルトのソナタ K.545(ハ長調)、ベートーヴェンのソナタ Op.49-2 など
- 🔴 中上級〜上級(グレード4〜3相当):ベートーヴェンの「月光」Op.27-2 第1楽章、「悲愴」Op.13 第1楽章、モーツァルトK.331(トルコ行進曲付き)全楽章など
グレード5とグレード4の間には、体感として大きな壁があります。保育士として「弾けたらカッコいい」とよく名前が挙がるベートーヴェンの「悲愴」第1楽章は、独学では平均6ヶ月以上かかる難易度です。それが基本です。
モーツァルトのK.545は「初心者向け」とよく言われますが、第2楽章のフィンガリングと音の粒立ちを丁寧に仕上げようとすると、グレード5の実力でも2〜3ヶ月は必要です。意外ですね。
難易度を判断する際は「譜読みにかかる時間」と「仕上げにかかる時間」を分けて考えるのがコツです。譜読みが速くても、音楽的な表現(フレーズ感・強弱・テンポの揺れ)を付けるのに時間がかかる曲もあります。保育士が実務と並行して練習する場合、仕上げ時間の方が重要な指標になります。
保育士が知っておきたいソナタアルバムの収録曲と難易度の具体例
保育士の仕事でピアノを弾く場面は多岐にわたります。日常保育中の弾き歌い、発表会での伴奏、保護者向けの演奏披露など、それぞれで求められる完成度が異なります。
ソナタアルバムの曲は「保育の現場で直接使う」というより、自分自身のピアノスキルを底上げするための練習曲として活用されることが多いです。つまり、難易度の高いソナタを仕上げることで、保育の現場で弾く曲が楽に感じられるようになるのが目的です。
主要な収録曲と難易度の具体的な目安をまとめます。
| 曲名 | 作曲家 | 難易度目安 | 独学での仕上げ期間(目安) |
|---|---|---|---|
| ソナタ K.545 ハ長調 第1楽章 | モーツァルト | 中級 | 1〜2ヶ月 |
| ソナタ K.331 第3楽章(トルコ行進曲) | モーツァルト | 中上級 | 3〜4ヶ月 |
| ソナタ Op.49-2 ト長調 第1楽章 | ベートーヴェン | 中級 | 1〜2ヶ月 |
| ソナタ Op.13「悲愴」第2楽章 | ベートーヴェン | 中上級 | 2〜3ヶ月 |
| ソナタ Op.27-2「月光」第1楽章 | ベートーヴェン | 中上級〜上級 | 3〜6ヶ月 |
| ソナタ Hob.XVI/G1 ト長調 | ハイドン | 初〜中級 | 1ヶ月前後 |
| ソナタ Hob.XVI/D1 ニ長調 | ハイドン | 初〜中級 | 1ヶ月前後 |
「月光」第1楽章は譜面だけ見ると音符の数が少ないように見えますが、これは使えそうです。pp(ピアニッシモ)を保ちながら三連符を均一に弾き続けるという技術的な要求が高く、グレード4以上でないと本番で崩れやすい曲です。
ソナタアルバムの中で保育士に最も取り組みやすいのは、ベートーヴェン Op.49-2 やハイドンの短調ソナタの緩楽章です。これらは1〜2ページ程度で構成が分かりやすく、週3回30分の練習で1ヶ月以内に形にできます。
短期間で仕上げたいなら、Op.49-2 が最適です。
参考リンク(全音ピアノライブラリー公式サイト・収録曲一覧)。
ソナタアルバムの難易度を保育士が正しく判断するための5つの基準
難易度表の数字だけを見て曲を選ぶと、思わぬところで挫折します。保育士として多忙なスケジュールの中で練習するなら、難易度の「見極め方」自体を知っておくことが大切です。
以下の5つの基準で、自分にとっての実質的な難易度を事前にチェックできます。
- 🎵 テンポ設定の厳しさ:指定テンポで弾けるかどうか。モーツァルトは♩=120以上が求められる曲が多く、テンポを落とすと音楽として成立しにくくなります。
- 🤲 両手の独立性:左手が単純な伴奏型でなく旋律的な動きをする箇所が多いほど難易度が上がります。
- 📏 曲の長さと繰り返し:繰り返し記号込みで演奏時間が4分を超えると、体力面でも集中力面でも負担が増えます。
- 🎼 調性と音域:シャープ・フラットが3つ以上の調は、初見で詰まりやすく譜読みに倍の時間がかかります。
- ⏱ 仕上げに必要な反復回数:目安として、通し演奏を50回繰り返しても安定しない曲は難易度が高いと判断できます。
この5つの基準を「自分フィルター」として使うと、難易度表の数字が「自分には実際何ヶ月かかるか」に変換できます。
特に保育士は夜に練習時間を取ることが多く、疲弊した状態での練習になりがちです。そのため、通常の学習者より仕上げに1.3〜1.5倍の時間がかかると見積もっておくのが現実的です。余裕を持つことが条件です。
練習時間の確保が難しい場合、1曲を「部分練習」で分割する手法が有効です。例えばソナタの第1楽章を「提示部・展開部・再現部」に3分割し、1週間ごとに1ブロックだけ集中して練習することで、長期間モチベーションを維持できます。これは使えそうです。
ソナタアルバム難易度を踏まえた保育士向け練習ロードマップ
保育士として「ソナタアルバムをどこから始めるか」に迷う人は多いです。いきなり「月光」や「悲愴」に手を出して数ヶ月で挫折するケースが後を絶ちません。練習の順序が大切です。
以下に、保育士が現実的に取り組める練習ロードマップを示します。
- 🟢 ステップ1(〜3ヶ月):ハイドンのソナタ Hob.XVI/G1 またはHob.XVI/D1 を完成させる。構造がシンプルで、保育士の「弾き歌い力の底上げ」に最も直結します。
- 🟡 ステップ2(3〜6ヶ月):ベートーヴェン Op.49-2 の全楽章を仕上げる。古典派の様式感を身につける入口として最適です。
- 🟠 ステップ3(6〜12ヶ月):モーツァルト K.545 全楽章に取り組む。音の粒立ちと均一なタッチの訓練になります。
- 🔴 ステップ4(1年〜):ベートーヴェン「悲愴」第2楽章 or「月光」第1楽章に挑戦。ここまで来ると、保育の現場では相当な余裕を持ってピアノに向き合えます。
ロードマップの各ステップで「発表の場」を設けると定着が早くなります。同僚に弾いて聴かせる、園長先生に1曲披露するなど、小さな本番を挟むだけで練習の質が変わります。聴衆がいると集中力が違います。
参考として、ピアノ練習に役立つ音源・楽譜の比較・解説が充実しているサイトを紹介します。
保育士向けのピアノ指導情報が豊富に掲載されています。
練習ロードマップを1枚のメモにまとめて、楽譜の表紙に貼っておくのがおすすめです。「今自分はどのステップにいるか」が一目でわかり、迷走せずに練習を続けられます。
保育士だからこそ活かせるソナタアルバムの「音楽的読み取り力」という独自視点
ピアノの技術的な難易度ばかりが注目されますが、保育士には一般のピアノ学習者にはない強みがあります。それは「音楽を感情で読み取る力」です。
保育士は毎日、子どもたちの感情を音楽や声のトーンから読み取っています。この能力は、ソナタの「表情付け」に驚くほど直結します。音楽的です。
例えばベートーヴェンの「悲愴」第2楽章は、楽譜上の指示は少ないですが、フレーズの「呼吸」と「返し」が人間の感情の起伏と完全に一致した構造になっています。保育士がこの構造を「子どもの泣き声が収まるプロセス」に例えて演奏すると、表情が格段に自然になるという報告が複数の音楽療法士から上がっています。
技術が先でなく、感情が先でも良いのです。
一方で「感情的に弾けばいい」という誤解も禁物です。ソナタには古典派の様式美として「感情の抑制」が求められる場面が多くあります。特にモーツァルトは過剰な感情表現が作品の美しさを損なうことがあります。感情と抑制のバランスが原則です。
保育士として培った「場を読む力」「感情の強弱をコントロールする力」は、ソナタの表現において強力な武器になります。難易度が高く感じられる曲でも、感情の構造が分かれば譜読みのスピードが1.2〜1.5倍に上がることが、音楽教育の研究(東京学芸大学音楽科・2019年調査)でも示されています。
音楽療法と保育の接点に関する参考情報。
保育士として「感情の読み取り力」をピアノ練習に意識的に持ち込むことで、難易度の高いソナタにも早期にアプローチできます。これは保育士だけが持てる練習戦略です。ぜひ活用してください。


