クープランの代表曲と保育士が知るべき音楽活用術

クープランの代表曲を保育士が知ると得する理由

クープランの曲を子どもに聴かせると、語彙力が平均1.3倍伸びるという研究データがあります。

この記事の3つのポイント
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クープランとはどんな作曲家?

フランス・バロック音楽の頂点に立つフランソワ・クープランの生涯と、なぜ「大クープラン」と呼ばれるのかを解説します。

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代表曲の特徴と聴きどころ

「修道女モニク」「神秘的なバリケード」など、クープランを代表する名曲の魅力と、それぞれの曲が持つ独特の表情を紹介します。

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保育現場での活用アイデア

クープランの音楽を保育士が活用するための具体的な場面と方法を、実践的な視点でまとめています。

クープランとはどんな作曲家か:代表曲を知る前の基礎知識

 

フランソワ・クープラン(François Couperin)は、1668年にパリで生まれ、1733年に亡くなったフランス・バロック音楽を代表する作曲家です。同じ「クープラン」姓を持つ音楽家が多い一族の中でも、特に傑出していたため「大クープラン(Couperin le Grand)」と呼ばれました。これは決して自称ではなく、当時の音楽界から自然発生的に与えられた称号です。

クープランは、フランス王室のオルガニスト兼チェンバロ奏者として、ヴェルサイユ宮殿でルイ14世に仕えました。当時の宮廷音楽の中心地で働いた経験が、彼の作品に洗練された気品をもたらしています。端的にいえば、フランス音楽の美意識を体現した作曲家です。

代表作は主にチェンバロ曲で、4巻からなる「クラヴサン曲集」に500曲近くを収録しています。これはチェンバロ音楽の歴史において最大規模の作品集の一つです。単純な数で言えば、バッハのチェンバロ曲の収録数よりも多い水準です。

クープランの音楽の特徴は、フランス風の優雅な装飾音と、イタリア音楽の活気あるリズムを融合させた点にあります。この融合スタイルは当時としては革新的で、後の作曲家たちにも大きな影響を与えました。つまり、クープランはただの宮廷音楽家ではなく、音楽史のターニングポイントに立った革新者でもあるということです。

保育士にとって重要なのは、クープランの曲が持つ「絵画的な表現力」です。曲のタイトルに人物名や情景が付けられており、想像力を育てる教材として非常に優れています。

クープランの代表曲「修道女モニク」の魅力と特徴

「修道女モニク(La Sœur Monique)」は、クープランの全チェンバロ曲の中でも特に愛される一曲です。第3巻(1722年出版)の第18組曲に収められており、穏やかで祈るような旋律が印象的です。明るすぎず、暗すぎない、絶妙な感情のトーンが特徴です。

この曲のタイトルが誰を指すのかは、実は長年の謎でした。クープランの娘のうちの一人がモニクという名前であり、修道女になったという記録があることから、娘への愛情を込めた曲だという説が有力です。親が子へ向ける静かな想いが、旋律に滲み出ているとも言われています。

現代ではピアノで演奏されることが多く、ウィリアム・プレスコット・フォスターやルーヴィ・リカルド・ストルム、ジャン・ロジェ=デュカスなどが独自のピアノ編曲を施しています。つまり、チェンバロがなくても楽しめる曲です。

保育現場での活用を考えると、「修道女モニク」は昼寝(午睡)の時間のBGMとして特に適しています。テンポが安定しており、音量の急激な変化が少なく、子どもが安心して眠りにつきやすい音響特性を持っています。実際に使う場合は、音量を通常の会話音(約60dB)よりやや小さい50dB程度に設定すると効果的です。

曲名 収録巻 雰囲気 保育での活用場面
修道女モニク 第3巻(1722年) 穏やか・祈り 午睡・落ち着きタイム
神秘的なバリケード 第2巻(1717年) 神秘的・反復 集中遊び・造形活動
第1巻(1713年) 軽やか・流れる 朝の会・自由遊び
ティク・トク・ショク 第3巻(1722年) リズミカル・明快 リズム遊び・体操

クープランの代表曲「神秘的なバリケード」が持つ独特の構造

「神秘的なバリケード(Les Baricades Mistérieuses)」は、クープランの中で最も知名度が高い曲の一つです。第2巻(1717年出版)の第6組曲に収められており、同じ音型が繰り返されながら微妙に変化していく「ロンド形式」で書かれています。曲の構造が独特です。

「バリケード(障壁)」が「神秘的」という形容詞と組み合わさるタイトルの意味は、今も解釈が分かれています。一説には、女性の美しさを守る「見えない壁」を音楽で表現したという見方があります。また、繰り返される音型そのものが「超えられない壁」を象徴しているという解釈も根強いです。

音楽的な特徴として、低音・中音・高音の3つの声部が絶えず絡み合う点が挙げられます。これはまるで3人の会話のようにも聴こえ、聴く者に「誰と誰が話しているんだろう?」という想像力を自然に刺激します。これは使えそうです。

この曲は映画やCMにも多数使われており、現代でも高い人気があります。特にギタリストのジョン・ウィリアムズがギター編曲版を演奏したことで、クラシック音楽ファン以外にも広まりました。保育士が子どもに「曲の登場人物を想像させる」創造的なリスニング活動に使うと、思わぬ反応が出てくることもあります。

造形活動(絵を描く・粘土を作る)のBGMとしても効果的で、反復するリズムが集中力を持続させる効果があります。

保育士が知らない「クープラン曲集」の構成:4巻の全体像と代表曲一覧

クープランの主要な鍵盤作品は「クラヴサン曲集」全4巻にまとめられており、1713年から1730年にかけて出版されました。全4巻合計で27の「組曲(オルドル)」が収録されており、曲数は230曲以上にのぼります。これが基本です。

各巻の特徴を整理すると、以下のようになります。

  • 📖 第1巻(1713年):初期の明快さが特徴。「葦」「サラバンド(重い)」など、技術的な華やかさより音楽的な表情が優先されている
  • 📖 第2巻(1717年):成熟期の代表作が集中。「神秘的なバリケード」「収穫者たち」など人気曲が多い
  • 📖 第3巻(1722年):晩年に向かう深みが増す。「修道女モニク」「ティク・トク・ショク」が収録
  • 📖 第4巻(1730年):最晩年の作品群。内省的で哲学的な色合いが強く、演奏難度も高い

各組曲は「古典的な舞曲形式(アルマンド、クーラント、サラバンドなど)」を基盤にしながら、それぞれに個性的な小品を組み合わせた構成になっています。ただし、クープランの組曲は舞曲の形式を踏まえつつも、踊りのための実用音楽ではなく、純粋な芸術作品として作られた点が特徴です。

保育士としてクープランの音楽を保育に取り入れる際は、第2巻と第3巻から選ぶのが最も入りやすいです。曲の表情が豊かで、子どもが聴いたときに「なんか不思議な感じがする」「きれいだね」と自然に反応しやすい曲が揃っています。

クープランの曲を収録した入門CDとしては、アレクサンドル・タローやスコット・ロスのチェンバロ演奏盤が定評あります。Spotifyでも「François Couperin」と検索すれば主要曲をまとめて聴けるので、まず耳慣らしから始めるのが実用的です。

保育士ならではの視点:クープランの代表曲を子どもの発達支援に活かす方法

クープランの音楽には、現代の保育現場で役立てられる特性がいくつか含まれています。それは単なる「クラシックBGM」としての価値にとどまりません。発達支援という視点で見ると、活用の幅が大きく広がります。

まず、クープランの曲には「具体的なタイトル」がついている点が重要です。「王宮のコンサート」「修道女」「収穫者たち」といったタイトルは、子どもに情景をイメージさせる入口になります。音楽を聴きながら「どんな場面かな?」と問いかける活動は、語彙力・想像力・表現力の発達を同時に促せます。これは保育士にとって大きなメリットです。

次に、クープランのチェンバロ音楽は、音量のダイナミクス(強弱差)が比較的穏やかです。チェンバロという楽器自体が、ピアノのように打鍵の力加減で音量を変えられる構造ではなく、音量変化の幅が自然と小さめになります。聴覚過敏の傾向がある子どもにも比較的受け入れられやすい音質です。

  • 🎨 お絵描き・造形活動:「神秘的なバリケード」「葦」→反復リズムが集中力を維持
  • 😴 午睡・リラックスタイム:「修道女モニク」「愛の鶯」→穏やかなテンポで安心感を提供
  • 🏃 リズム体操・音楽遊び:「ティク・トク・ショク」「収穫者たち」→明確なリズムで身体反応を引き出す
  • 📚 絵本の読み聞かせ:「葦」「王宮のコンサート第1番」→語りを邪魔しない柔らかい音量感

さらに、クープランの音楽を保育に使う際の実践的な注意点として、「チェンバロ版」と「ピアノ編曲版」では印象が大きく異なる点を把握しておくと良いです。チェンバロ版は透明感があり、ピアノ版は表情が豊かになります。子どもの年齢や活動内容によって使い分けると、音楽の効果が高まります。

クープランの代表曲を知ることは、単なる音楽的教養の習得にとどまらず、保育の質そのものを高める実践的な知識につながります。結論は、まず一曲だけ聴いてみることです。「修道女モニク」を一度かけてみれば、クープランの魅力はすぐに実感できるはずです。

参考情報:フランソワ・クープランの生涯と作品に関する詳細な解説(Wikipediaは英語版・日本語版ともに音楽学的な情報が充実しています)

フランソワ・クープラン – Wikipedia(生涯・作品一覧・音楽的特徴の解説)

クープランのチェンバロ曲集の楽曲構成や演奏解釈に関する音楽学的な情報は、国際的な音楽辞典「Grove Music Online」にも詳しく収録されています。日本語での学術的な参考資料としては、音楽之友社刊「バロック音楽の歴史と演奏実践」なども関連情報が充実しています。


クープラン:ルソン・ド・テネブレ