イギリス組曲3番の難易度と各楽章の攻略ポイント

イギリス組曲3番の難易度と各楽章の攻略ポイント

ト短調のイギリス組曲第3番は、弾けると思って楽譜を開いたら途中で挫折する人が続出します。

参考)バッハ イギリス組曲の難易度・解説

🎹 イギリス組曲第3番 BWV808 を知る3つのポイント
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難易度は「上級(レベル7)」

G.Henle社の評価基準でレベル7に分類。ツェルニー50番程度が目安とされ、フランス組曲より大幅に難しい。

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6楽章構成・プレリュードが6ページ超

プレリュード・アルマンド・クーラント・サラバンド・ガヴォット・ジーグの6楽章。プレリュードだけで6ページにおよぶ長大な作品。

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対位法×協奏曲形式の融合

イタリア協奏曲的な形式とドイツ流の対位法が混在。2声を独立して歌わせる技術が問われる、バッハ鍵盤組曲の難所のひとつ。

イギリス組曲3番の難易度ランクとツェルニー50番との関係

 

バッハのイギリス組曲第3番(BWV808)は、ト短調で書かれた上級レベルの楽曲です。 G.Henle社の評価ではレベル7(上級)に分類されており、同じイギリス組曲の中で唯一レベル6(中級)に留まる第4番と比べて、一段と難しい作品です。

具体的な目安はツェルニー50番程度です。 ツェルニー50番といえば、ショパンの小品が弾き始められるレベルとほぼ重なります。つまり、ソナタアルバムや小品集を卒業して「さあ大曲に挑戦」と思い始めた人に、ちょうど突き刺さる難易度です。

参考)全音楽譜出版社:バッハ/イギリス組曲(解説付)/105050…

バッハの鍵盤作品の難易度をおおまかに並べると、インベンション → フランス組曲 → シンフォニア・平均律易しめ → パルティータ・イギリス組曲・平均律難しめ という順になります。 イギリス組曲はバッハ鍵盤組曲の中でも「大組曲」と呼ばれるだけあって、フランス組曲と比べると規模・難度ともに一段上の存在です。ameblo+1

バッハ3大組曲の難易度比較は以下のとおりです。

組曲 規模感 難易度目安
フランス組曲 小組曲(プレリュードなし) ツェルニー30〜40番程度

参考)バッハのフランス組曲を弾こう!学べること・難易度・練習の進め…

イギリス組曲第3番 大組曲(長大なプレリュードあり) ツェルニー50番程度
パルティータ第2番 最大規模 上級(Henleレベル7)

参考)バッハ 6つのパルティータの難易度・解説

イギリス組曲3番のプレリュードが難しい理由と練習の入り口

プレリュードだけで楽譜が6ページにおよびます。 これは市販のピアノ曲集1冊の中でも屈指の長さで、例えるなら一般的なソナタの第1楽章と同じくらいのボリュームです。

参考)https://ameblo.jp/snow-piapia/entry-12794295415.html

構造上の特徴として、このプレリュードはイタリア風協奏曲の形式を取り入れています。 多くの楽器が鳴り響くフォルテの箇所とソロ的に歌うピアノの箇所が交互に現れ、強弱の幅が非常に広く設計されています。 つまり、音符を正確に弾くだけでなく、オーケストラ全体をイメージしながらダイナミクスをコントロールする力が問われるということです。

参考)イギリス組曲 第3番 プレリュード BWV 808/Engl…

練習の入り口として有効なのが「片手ずつの反復練習」です。 右手・左手それぞれが独立したメロディーを持つ対位法的な書法なので、両手を合わせる前に片手での音楽的な歌わせ方をしっかり身につけることが上達の近道です。 コード進行のアナリーゼ(分析)も並行して行うと、暗譜にも大きく役立ちます。

これは使えそうです。

参考:ピティナ・ピアノ曲事典によるプレリュードの解説(演奏上の注意点も詳しく記載)

イギリス組曲 第3番 プレリュード BWV808 – ピティナ・ピアノ曲事典

イギリス組曲3番の各楽章(サラバンド・ガヴォット・ジーグ)の特徴

プレリュード以降の楽章にも、それぞれ固有の難しさが潜んでいます。 各楽章の性格を把握しておくと、練習の優先度を立てやすくなります。

  • アルマンド:感傷的なゆっくりした旋律で、2部構成は短め。装飾音の処理が問われる楽章です
  • クーラント:緊張感のある進行で、3/2拍子の複雑なリズムに慣れる必要があります
  • サラバンド:ゆっくり荘厳に進む楽章ですが、バスの長いタイを弾き直すなど奏法上の判断が必要です

    参考)イギリス組曲 第3番 サラバンド BWV 808/Engli…

  • ガヴォットI & II:軽快な第1ガヴォットと、バグパイプを模した保続低音(ドローン)を持つ牧歌的な第2ガヴォット(ミュゼット)で構成されます

    参考)イギリス組曲 第3番 ト短調 BWV 808/Englisc…

  • ジーグ:フガート形式で激しく疾走する楽章。6曲の締めくくりとして最大の迫力を誇ります

サラバンドの難しさが意外です。 バスのタイが7小節にわたって持続するため、ハープシコードはもちろんピアノでも正確に音を伸ばし続けることが難しく、実際には途中で弾き直す工夫が必要になります。 対策としては、3小節目・5小節目・7小節目でバスを弾き直してGの伸びを聴かせるアプローチが有効です。

参考:サラバンドの奏法に関するピティナの解説(バスの扱い方について詳細あり)

イギリス組曲 第3番 サラバンド BWV808 – ピティナ・ピアノ曲事典

イギリス組曲3番と他の組曲の難易度比較:どれを先に弾くべきか

同じイギリス組曲の中でも第4番(ヘ長調)はレベル6(中級)に分類されており、第3番への橋渡しとして適しています。 まず第4番でイギリス組曲特有の「大規模なプレリュード+舞曲群」という構成に慣れてから、第3番に進む方法は理にかなっています。

フランス組曲 → イギリス組曲 → パルティータという段階的な取り組みは、バッハ研究者や演奏家の間でも広く支持されるルートです。 フランス組曲でバロック舞曲の感覚をつかみ、イギリス組曲で対位法的なプレリュードに挑む、というステップが実力を着実に底上げします。

イギリス組曲全体の中でも第3番は「ダントツに弾きづらい」と感じる演奏家もいます。 3つの組曲(フランス・イギリス・パルティータ)の中でもイギリス組曲が最も弾き難く、そのイギリス組曲の中でも第3番は特別な負荷がかかる作品として認識されています。 難しさが原因で途中放棄になる前に、自分の現在地を客観的に把握しておくことが大切です。

参考)演奏動画:バッハ《イギリス組曲第3番》から 〈ガヴォットI …

参考:バッハのフランス組曲・パルティータ・イギリス組曲の難易度を詳しく比較した解説

ピアノ曲の難易度 その3(バッハ フランス組曲、パルティータ、イギリス組曲)

イギリス組曲3番の歴史的背景と「イギリス」という名前の真実

「イギリス組曲」という名前は、バッハ自身がつけたものではありません。 最初の伝記作者J.C.フォルケルが「イギリスの貴人のために作曲された」と記したことで、18世紀のうちにすでにこの名称が定着しました。

しかし、6曲がイギリス的な様式を持つという通説は音楽学的には正しくありません。 むしろ、バッハが目指したのはフランス由来の伝統的な舞曲ジャンルにドイツ流の響き=模倣対位法を融合させることであり、純粋なドイツ音楽としての性格が強い作品です。

作曲の時期としては、バッハのケーテン時代(1717〜1723年頃)の作品とされており、イギリス組曲はバッハの鍵盤組曲の中で最も成立が古いとされています。 その後に書かれたフランス組曲・パルティータへと発展していく、まさに出発点となる組曲です。

成立には、フランスの音楽家シャルル・デュパールの『6つの組曲』(1701年)が深く関与しています。 バッハはデュパールの作品を筆写しており、冒頭に序曲を持つ構成もデュパールから影響を受けたと考えられています。 つまり、「イギリス組曲」の名称は便宜的なものに過ぎず、その本質はフランス+イタリア+ドイツの様式が融合した国際的な作品です。

参考:バッハ《イギリス組曲》の成立背景と音楽的特徴に関する解説

イギリス組曲 第3番 ト短調 BWV808 – ピティナ・ピアノ曲事典

バッハ:パルティータ第1番、イギリス組曲第3番、フランス組曲第2番 (SHM-CD)