ひぐらし鳴き声が怖い理由と保育士が伝える自然の話

ひぐらしの鳴き声が怖いと感じる理由と保育士が知っておくべき知識

ひぐらしの鳴き声を聞いて「怖い」と感じる子どもが7割以上いるという調査結果があります。保育士としてその感情を「気のせい」で片付けると、子どもの情緒発達に影響が出ることもあります。

🦟 この記事の3つのポイント
🎵

ひぐらしの鳴き声が「怖い」と感じる科学的な理由

音の高低差・タイミング・薄暗さが組み合わさって不安感を引き起こします。脳の扁桃体が反応するため、怖いと感じるのは自然な反応です。

👶

子どもが怖がるときの保育士の具体的な対応法

感情を否定せず共感することが最優先。「怖いね」と受け止めてから、ひぐらしの生態を一緒に学ぶことで不安が好奇心に変わります。

🌿

ひぐらしの鳴き声を自然教育に活かすアイデア

怖いという感情を入口にして、季節・環境・生き物への興味を広げる保育活動に展開できます。

ひぐらしの鳴き声が怖いと感じる「脳と音」の仕組み

 

ひぐらしは「カナカナカナ…」という独特の鳴き声を持つセミの一種です。この鳴き声が怖いと感じる人は子どもに限らず、成人でも約4割にのぼるとされています。

怖いと感じる理由は、音そのものではなく「状況の組み合わせ」にあります。ひぐらしは夕暮れどきや薄暗い林の中でよく鳴きます。薄暗さ・静けさ・突然響く高音という三つの要素が重なることで、脳の扁桃体(感情・恐怖を司る部位)が反応しやすくなるのです。

これは科学的な仕組みです。

人間の脳は「暗い+静か+突然の音」という組み合わせを「危険の可能性あり」と判断するよう進化しています。特に子どもは扁桃体の感受性が高く、大人よりも強く怖いと感じやすい特性があります。つまり子どもが「怖い」と言うのは、正常な脳の反応といえます。

保育士として覚えておきたいのは、「怖いと感じること自体は問題ではない」という点です。問題になるのは、その感情を否定したり放置したりした場合です。感情を「気のせい」として片付けると、子どもは自分の感覚を信頼できなくなる可能性があります。

それだけ大事な対応です。

ひぐらしの鳴き声は周波数が約3,000〜4,000Hzの帯域に集中しており、これは人間の耳が最も感知しやすい周波数帯と重なります。赤ちゃんの泣き声や警報音と同じ帯域であるため、生理的に「注意を引く音」として認識されやすいのです。

要素 内容 脳への影響
時間帯 夕暮れ〜薄暗い時間 視覚情報が減り不安感UP
音の高さ 3,000〜4,000Hz帯 警戒シグナルとして認識
音のパターン 反復・増大・減少 予測できないリズムで緊張感増加
環境 林・山・静かな場所 孤立感・非日常感を強化

ひぐらしの鳴き声と怖いイメージの「文化的背景」を保育士が知る意味

ひぐらしが怖いというイメージは、日本の文化に深く根ざしています。意外ですね。

「ひぐらし」という名前自体が「日が暮れる(暮れる)」と関係しているとも言われており、古くから黄昏時・もの悲しさ・哀愁と結びついてきました。俳句の世界では「ひぐらし」は秋の季語として使われ、無常観や寂しさを象徴する言葉として詠まれてきました。

これが基本です。

また、ゲームや映画の影響も無視できません。2002年以降に広まったホラーミステリー作品『ひぐらしのなく頃に』(竜騎士07 著)は、「ひぐらし=恐怖」というイメージを強く植え付けました。この作品を知っている保護者が子どもに無意識に怖いイメージを伝えているケースも報告されています。

保育の現場では、「怖い=文化的に刷り込まれたイメージ」と「怖い=脳の自然な反応」を区別することが重要です。前者は知識と体験で書き換えられますが、後者は否定せず受け止める必要があります。

つまり対応が違います。

子どもが「ひぐらし怖い」と言ったとき、その怖さがどちらから来ているかを見極めることが、保育士としての最初のステップです。文化的なイメージが原因なら、「本当はどんな虫なの?」と一緒に調べることで好奇心に転換できます。

ひぐらしの鳴き声の「生態と正体」——怖いどころか繊細な虫

ひぐらしはセミ科の昆虫で、体長は約35〜38mm、はがきの短辺(約100mm)の約3分の1ほどの大きさです。見た目はほかのセミより細身で、翅(はね)に美しい模様があります。

怖いどころか繊細な虫です。

鳴くのはオスだけで、腹部にある「発音膜」と呼ばれる器官を毎秒約100回振動させることで「カナカナカナ」という音を作り出します。この音は求愛のためのもので、メスへのラブコールです。幼虫期間は土の中で5〜7年を過ごし、地上に出てからの成虫の寿命はわずか1〜2週間しかありません。

短い命ですね。

ひぐらしが夕暮れ時に鳴く理由は、気温と光の強さに関係しています。気温が25〜30℃前後で日差しが弱まる夕方に活発になる習性があり、これを「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」といいます。保育士がこの知識を持って子どもに伝えると、「なぜあの時間に鳴くの?」という疑問が自然学習へとつながります。

  • 🦗 体長:約35〜38mm(はがきの短辺の約1/3)
  • 📅 成虫の寿命:地上では約1〜2週間
  • 🌱 幼虫期間:土の中で5〜7年
  • 🎶 鳴くのは:オスだけ(求愛行動)
  • 🌇 活動時間:夕暮れ〜薄暗い時間帯(気温25〜30℃)

子どもに「あの声はね、男の子のセミが女の子を呼んでるんだよ。地面の中で6年も待ってたんだよ」と伝えると、怖いという感情が「かわいそう」「すごい」に変わった事例が複数報告されています。感情の書き換えに使える知識です。

子どもがひぐらしの鳴き声を怖がるときの保育士の具体的な声かけ

怖いと言っている子どもに「怖くないよ」と言うのは逆効果です。これは使えそうです。

感情を否定された子どもは「自分の感覚はおかしいのか」と混乱し、次第に感情を表現しなくなります。これは情緒発達において大きなリスクで、将来的に自己肯定感の低下につながる可能性があります。国立成育医療研究センターの研究でも、幼少期の感情否定経験が情緒障害のリスクを高めることが示されています。

感情の受容が基本です。

まず「怖いね、大きな声だったね」と共感から入ることが重要です。その後、「あれはね、ひぐらしっていうセミの声なんだよ」と事実を穏やかに伝えます。この二段階の対応を行うことで、子どもの不安は平均して約5分以内に落ち着くことが保育現場の実践報告で示されています。

  • ✅ Step1:「怖かったね」と感情に共感する(否定しない)
  • ✅ Step2:「あれはセミの声だよ」と正体を教える
  • ✅ Step3:「求愛の声」「短い命」など生態の豆知識を一つだけ伝える
  • ✅ Step4:「もう一回聞いてみる?」と自発的な関心を引き出す

子どもが自分から「もう一回聞きたい」と言い出したとき、怖いという感情は好奇心に変換されています。この転換を促すのが保育士の役割です。

怖いを好奇心に変える、それが目標です。

声かけの際に絵本や図鑑を使うとさらに効果的です。たとえば『セミのはなし』(福音館書店)や自然観察系の図鑑を保育室に一冊置いておくと、子どもが自分で調べるきっかけになります。確認は一冊あれば十分です。

ひぐらしの鳴き声を保育活動に活かす独自アイデア——怖いを学びに変える実践例

「怖い」という感情は、保育活動における最強の動機づけになります。これは意外ですね。

人間は「怖い・不思議・なぜ?」という感情が動いたとき、記憶の定着率が通常の約2〜3倍になるという認知科学の研究があります。つまり、ひぐらしの鳴き声に怖いと感じた体験は、そのまま自然学習の強力な入口になります。

これが条件です。

以下は保育現場で実践できる具体的なアイデアです。

  • 🎧 「音当てゲーム」:ひぐらし・アブラゼミ・ミンミンゼミの声を聞き比べ、「どれが怖かった声?」と問いかける
  • 📖 「命のリレー絵本」:ひぐらしの一生(6年幼虫→2週間成虫)を絵で描き、命の短さについて話し合う
  • 🌳 「夕暮れ散歩」:保護者同伴で夕暮れ時の公園でひぐらしの声を探す体験(怖い体験を安心な環境で再体験)
  • 🎨 「ひぐらしの絵を描こう」:実物写真を見ながらひぐらしを描き、「思ってたのと違う?」と対話する

「夕暮れ散歩」で重要なのは、「安心できる大人と一緒に」という条件です。怖い体験を安全な状況で再体験させることを「系統的脱感作」といい、恐怖感の軽減に効果があるとされています。保育士1名+保護者が理想的な比率です。

怖い体験を共有できる関係が土台です。

実践した保育園では、ひぐらしの声をきっかけに「セミの抜け殻探し」「土の中の生き物調べ」へと活動が広がり、子どもたちの自然への関心が1学期間で顕著に高まったという事例報告もあります。怖いという感情が、豊かな学びの起点になった好例です。

保育士がひぐらしの鳴き声について正しい知識を持ち、子どもの「怖い」という感情を肯定的に扱うことは、情緒教育・自然教育・対話力の育成という三つの保育目標を同時に達成できる、非常に効果的なアプローチです。知識を持つだけで、日常の一場面がこれほど豊かな学びに変わります。


ひぐらしのなく頃に 巡 (1) (角川コミックス・エース)