5歳児保育で大切にしたいこと・自立心と協同性の育て方

5歳児保育で大切にしたいこと・自立心と協同性を育てる実践ガイド

「褒めすぎる保育士ほど、子どもの自立心を平均30%以上損なわせているというデータがあります。」

🌱 この記事でわかること
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5歳児の発達の特徴と保育のねらい

5歳児がどのような発達段階にあるかを理解し、保育士として何を優先すべきかを整理します。

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協同性・自立心を育てる具体的な関わり方

遊びや生活場面を通じて、子ども同士のつながりと主体性をどう引き出すかを解説します。

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保育士が現場で意識したい言葉がけと環境構成

日常の声かけや空間づくりで子どもの育ちを支えるための実践的なヒントをまとめています。

5歳児保育で大切にしたいこと・発達の特徴と保育のねらいを理解する

 

5歳児は、保育所・幼稚園生活の集大成を迎える時期です。身体的な発達はもちろん、認知・言語・社会性のすべてが急速に統合されていきます。

この時期の子どもは「自分でできる」という自信を強く持ち始め、同時に「友達と一緒にやりたい」という協同への意欲も高まります。つまり自立と協同が同時に育つ時期です。

文部科学省の示す「幼稚園教育要領」(2017年改訂)では、5歳児の終わりまでに育ってほしい姿として「健康な心と体」「自立心」「協同性」「道徳性・規範意識の芽生え」など10の姿が明示されています。これは保育所保育指針にも共通する内容であり、現場保育士が押さえておくべき基本軸です。

重要なのは、これらを「目標」ではなく「育ちの方向性」として捉えることです。達成すべきチェックリストではありません。子ども一人ひとりのペースに寄り添いながら、保育士がその過程を丁寧に支えることが求められます。

5歳児の発達で特に見落とされがちな点として、「メタ認知の芽生え」があります。自分の考えを客観的に見る力が生まれ始めるため、「どうしてそうしたの?」と問いかけると子ども自身が理由を言語化しようとします。この機会を日常的に作ることが、論理的思考力の土台になります。

領域 5歳児に見られる具体的な姿
身体 スキップ・ケンケンが安定、はさみ・鉛筆操作が精緻化
言語 複雑な文で説明できる、「なぜ?」を使いこなす
社会性 ルールを自分たちで作る、リーダー・フォロワーの役割分担が生まれる
感情 感情のコントロールが上手になる、他者への共感が深まる

発達の特徴を知ることが、保育士の関わりの質を決定します。これが基本です。

5歳児保育の協同性を育てる・遊びと生活場面の実践ポイント

協同性とは、単に「仲良く遊ぶ」ことではありません。目標を共有し、役割を分担し、意見の違いを乗り越えて一緒に何かを作り上げる力です。

5歳児の協同性を育てるうえで最も有効なのが「プロジェクト型の遊び」です。例えば「お店屋さんごっこ」や「劇の発表会」など、数日〜数週間をかけて完成させる活動は、子どもたちに「一緒に取り組む意味」を体感させます。

協同性を引き出す遊びの場面設定として、以下のポイントが有効です。

  • 🎭 役割が複数必要な遊び(店長・店員・お客さんなど)を意図的に設定する
  • 🧩 完成に複数の工程が必要な製作活動を取り入れる(設計→材料集め→作成→発表)
  • ⚽ チーム対抗の運動遊びで、作戦会議の時間を保育士が意図的に設ける
  • 🌱 係活動や当番活動で「自分の担当がないと困る人がいる」体験を積む

重要なのは、保育士がすぐに解決策を与えないことです。子ども同士で意見が対立したとき、保育士が「じゃあこうしよう」と答えを出してしまうと、子どもは「困ったら先生が解決してくれる」と学んでしまいます。

「どうしたらいいと思う?」「他にアイデアはある?」と問いかけ、子どもたちが自分たちで解決策を見つける過程を見守る姿勢が大切です。これが協同性の核心です。

国立教育政策研究所の「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」に関する調査では、協同性の育ちには「失敗と修復の経験」が不可欠であると指摘されています。うまくいかない体験をどう乗り越えるかが、協同性の本質的な部分を育てます。

「失敗を許容する空気」が、協同性の土台です。

5歳児保育で大切にしたいこと・自立心を育てる言葉がけの技術

保育士の言葉がけひとつで、子どもの自立心は大きく育ちも損なわれもします。意外ですね。

自立心を育てるとは「自分でできることを増やす」という意味だけではありません。「自分で考え、自分で決める」プロセスを積み重ねることです。

保育現場でよく見られる「自立心を損なう言葉がけ」のパターンをまとめます。

  • ❌「早くしなさい」→子どもが自分のペースで考える時間を奪う
  • ❌「上手にできたね(毎回)」→結果への依存を生み、挑戦を恐れさせる
  • ❌「こうやってやるんだよ(やって見せる)」→子どもが試行錯誤する前に答えを与える
  • ❌「危ないからやめて」→リスクへの対応力が育たない

一方で、自立心を引き出す言葉がけには共通の構造があります。それは「子どもの行為や思考プロセスを言語化して返す」ことです。

例えば、「自分で考えて積み木を並べたんだね」「転んでも泣かずに立ち上がったね」のように、結果ではなくプロセスや姿勢に注目した声かけが有効です。心理学ではこれを「プロセスフィードバック」と呼びます。

スタンフォード大学のキャロル・ドウェック博士の研究では、結果を褒め続けた子どもより、努力や方法を褒めた子どものほうが、困難な課題への挑戦意欲が有意に高い結果が出ています。この知見は、5歳児保育の言葉がけに直接応用できます。

参考:幼稚園教育要領・保育所保育指針における「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の解説

文部科学省|幼稚園教育要領等の改訂について

「プロセスを見る視点」を持つだけで、保育の質は変わります。

5歳児保育で大切にしたいこと・環境構成で主体性を引き出す方法

保育士の「働きかけ」よりも、「環境」のほうが子どもの行動を変える力は大きいと言われています。これは意外なポイントです。

環境構成とは、物の配置・空間のデザイン・素材の選択など、子どもが活動する「場」を意図的に設計することです。5歳児の主体性を育てるためには、「子どもが自分で選び、自分で使える環境」を整えることが重要になります。

主体性を引き出す環境構成の具体的な工夫は以下の通りです。

  • 📦 素材や道具を子どもの目線の高さに置き、自分で取り出せるようにする
  • 🖼️ 製作コーナーに「見本」を置かず、子どもが自由に発想できる空白を残す
  • 📚 絵本や図鑑を活動エリアの近くに配置し、子どもが自分で調べる動線を作る
  • 🌿 自然素材(木の実・葉・石など)を常時置き、季節の変化を感じられる工夫をする
  • 🗣️ 子どもの作品や考えを壁に貼り、「自分の意見が形になる」体験を積み重ねる

イタリアのレッジョ・エミリア・アプローチでは、「環境は第三の教師」という考え方があります。保育士・家族に続く3番目の重要な存在として、環境そのものが子どもを教育するという思想です。

この考え方は日本の保育現場でも注目されており、特に5歳児クラスの環境構成に取り入れている園が増えています。物を増やすよりも、子どもが考える余白を作ることが大切です。これが原則です。

環境構成の効果は、保育士の直接的な関わりが少ない時間帯(自由遊び・昼食前後)にこそ発揮されます。子どもが「何もすることがない」と感じない環境を整えることで、自発的な学びが生まれます。

5歳児保育で大切にしたいこと・就学に向けた育ちの連続性と保護者連携

5歳児保育の最終ゴールは「小学校の準備」ではなく、「学び続けられる子どもを育てること」です。ここは誤解されやすいポイントです。

「小学校に向けて文字・数を教えなければ」と感じる保育士は少なくありません。しかし文部科学省の「接続期カリキュラム」の方針では、就学前に求められるのは「学習内容の先取り」ではなく「学びに向かう力・人間性の基盤づくり」であることが明記されています。

具体的に、就学に向けて5歳児後半に意識したいことは以下の通りです。

  • ✏️ 文字・数への興味を「遊びの中で」育てる(手紙ごっこ・数を使ったゲームなど)
  • ⏰ 自分で時間を意識して行動する経験を増やす(「給食の前に片付けよう」など)
  • 👋 困ったとき・わからないときに「助けを求められる力」を育てる
  • 🏫 小学校の先生・環境への期待感を高める話題を取り入れる(プラスのイメージ形成)

保護者連携においては、「お子さんが今どんな育ちの過程にいるか」を具体的に伝えることが重要です。「今日は○○ちゃんと喧嘩したけど、自分で謝ることができました」のように、行動の事実と育ちの視点をセットで伝えることで、保護者も子どもの育ちを正しく理解できます。

連絡帳・懇談会・玄関での一言など、情報を伝える場面は日常に複数あります。どの場面でも「子どもの育ちを伝える言葉」を意識することが、信頼関係の構築につながります。就学前の時期は特に、保護者の不安が高まりやすい時期です。

参考:保育所保育指針解説(2018年)第2章 保育の内容

厚生労働省|保育所保育指針解説(PDF)

保護者との連携が、子どもの育ちを保育園の外でも続けさせます。これが条件です。


思いをつなぐ 保育の環境構成 4・5歳児クラス編: 遊びを広げて学びに変える