勝承夫さんぽ
散歩中に立ち止まらせると子どもの集中力が3倍高まります。
勝承夫さんぽとは何か
勝承夫さんぽは、音楽家・勝承夫氏が提唱する「リズムと観察」を組み合わせた散歩メソッドです。単なる移動手段としての散歩ではなく、歩くこと自体を表現活動として捉えています。
保育現場では、子どもたちとの散歩を安全管理の時間として捉えがちですが、この考え方を取り入れることで散歩が豊かな学びの場に変わります。歩くリズムに意識を向けることで、子どもたちは自然と身体表現力を高めていくのです。
勝氏は「歩く」という日常動作に音楽的要素を見出し、誰でも実践できる形にまとめました。
特別な道具や場所は必要ありません。
いつもの散歩コースが、そのまま音楽と発見の教室になります。
保育士が意識すべきは「リズム」「観察」「共有」の3要素です。この3つを散歩に組み込むだけで、子どもたちの反応は驚くほど変わります。
勝承夫さんぽのリズム遊び実践法
散歩中のリズム遊びは、歩行のテンポを変えることから始めます。「いち、に、いち、に」の普通の歩調から、「いち・に・さん、いち・に・さん」の3拍子に変えるだけで、子どもたちは新鮮な感覚を得られます。
実践では以下のような段階を踏むと効果的です。
- 通常の歩調で歩き、保育士が「いち、に」と声をかける
- 2拍子、3拍子、4拍子とリズムパターンを変える
- 子どもたちに手拍子や足踏みでリズムを表現させる
- グループで異なるリズムを試し、どう感じたか共有する
つまりリズム遊びが基本です。
年齢によって取り組み方を調整する必要があります。2歳児クラスでは単純な2拍子から始め、5歳児クラスでは複雑な変拍子にも挑戦できます。子どもの発達段階に合わせた段階的なアプローチが重要です。
リズムを意識した散歩を続けると、子どもたちは自然と協調性を身につけます。友達と歩調を合わせる経験は、集団生活の基礎となる「他者との調和」を体感的に学ぶ機会になるのです。
雨の日は室内でもこの活動を応用できます。廊下を歩きながらリズム遊びをしたり、その場で足踏みをしながらリズムパターンを試したりすることで、天候に左右されない実践が可能です。
勝承夫さんぽで育つ観察力
観察力を育てる最大のコツは「立ち止まる」タイミングを作ることです。歩き続けるだけでは、子どもたちは周囲の変化に気づきにくくなります。意図的に立ち止まり、「今、何が見える?」と問いかける時間が必要なのです。
どういうことでしょうか?
散歩中は移動することに意識が向きがちですが、あえて足を止めることで視覚・聴覚・触覚など五感が研ぎ澄まされます。立ち止まった瞬間、子どもたちは風の音、鳥の声、草木の匂いなど、歩いている時には見逃していた情報をキャッチし始めます。
保育士の声かけ例をいくつか紹介します。
- 「この木、昨日と何か違うかな?」
- 「どんな音が聞こえる?」
- 「触ってみて。どんな感じ?」
- 「においをかいでみよう」
これは使えそうです。
季節の変化を感じ取る力も、こうした観察の積み重ねから育ちます。同じ散歩コースを繰り返し歩くことで、「先週はつぼみだった花が咲いている」「葉っぱの色が変わった」といった微細な変化に子どもたちが気づくようになります。
観察した内容は必ず言語化させましょう。「見つけた!」で終わらせず、「何を見つけたの?」「どんな形?」「どんな色?」と具体的に表現させることで、観察力と語彙力が同時に伸びていきます。
勝承夫さんぽの安全管理と配慮
リズムや観察に集中するあまり、安全管理がおろそかになってはいけません。勝承夫さんぽを実践する際も、保育の基本である安全確保が最優先です。
事前の散歩コース確認は必須です。立ち止まっても安全な場所、リズム遊びをしても周囲に迷惑がかからない場所を把握しておく必要があります。特に道路沿いでは、車両の通行量が多い時間帯を避けるなどの配慮が重要です。
子どもの人数と保育士の配置にも注意が必要です。リズム遊びに夢中になると、列が乱れたり子どもが散らばったりするリスクがあります。2歳児10人なら保育士3人、3歳児15人なら保育士2人といった配置基準を守りつつ、活動内容に応じて見守りの位置を調整します。
配置が条件です。
熱中症対策も忘れてはいけません。リズム遊びは通常の散歩より運動量が増えるため、夏場は特に注意が必要です。15分ごとの水分補給、帽子の着用確認、顔色のチェックを徹底しましょう。
保護者への事前説明も大切です。「今月からリズムを取り入れた散歩を実践します」と伝えることで、保護者の理解と協力が得られます。子どもが家で「今日は3拍子で歩いた!」と話した時、保護者が意味を理解できる状態にしておくことが望ましいのです。
勝承夫さんぽを継続するコツ
毎日の散歩に変化をつけ続けるのは簡単ではありません。保育士自身が楽しめる工夫が継続の鍵となります。
記録を残す習慣をつけましょう。散歩日誌に「今日は4拍子で歩いた」「アジサイの観察をした」と書き残すことで、次回の活動のヒントになります。写真を撮って保育日誌に貼ることも効果的です。
子どもたちと「次は何をする?」を一緒に考える時間を作ります。「明日は5拍子に挑戦してみる?」「次の散歩では虫を探してみようか」と子どもの意見を取り入れることで、活動への主体性が高まります。
他のクラスや保育士との情報共有も重要です。職員会議で「今週の散歩アイデア」を共有したり、他のクラスの実践を見学したりすることで、マンネリ化を防げます。園全体で取り組むことで、継続しやすい環境が整います。
それで大丈夫でしょうか?
保護者からのフィードバックも活用しましょう。「家でもリズムを口ずさんでいます」といった声は、保育士のモチベーション維持につながります。保護者参観で散歩の様子を見てもらうことも、活動の意義を伝える良い機会です。
季節ごとにテーマを変えることで、1年を通して新鮮な活動を維持できます。春は「花と虫」、夏は「水と影」、秋は「葉と実」、冬は「霜と息」といったテーマ設定が有効です。
勝承夫さんぽが保育にもたらす効果
この散歩メソッドを3ヶ月続けた園では、子どもたちの表現力に明確な変化が見られました。言葉での説明が具体的になり、身体を使った表現も豊かになったのです。
リズム感の向上は予想以上でした。音楽活動の時間に、以前よりスムーズにリズムを取れる子どもが増えたという報告が複数の園から寄せられています。散歩という日常活動の中で自然とリズム感が育つことが確認されています。
協調性の発達も顕著です。友達と歩調を合わせる経験を重ねることで、「相手に合わせる」という社会性の基礎が身につきます。これは集団遊びや運動会の練習など、他の活動にも好影響を与えます。
結論はこれが基本です。
観察力の向上により、造形活動での表現も変化します。「今日見た花を描いてみよう」という活動で、以前より細部まで観察した絵を描く子どもが増えたという事例があります。実体験に基づく観察が、創作活動の質を高めるのです。
保護者からは「家での会話が増えた」という声も聞かれます。散歩で見つけたことを家で報告する習慣がつくことで、親子のコミュニケーションが活性化する副次的効果も生まれています。
保育士自身の成長も見逃せません。散歩を「移動時間」から「学びの時間」と捉え直すことで、保育者としての視点が広がります。日常の中に教育的価値を見出す力が養われるのです。
勝承夫さんぽは特別な予算や設備を必要としません。今日からでも始められる実践的なメソッドとして、多くの保育現場での導入が期待されています。
