音楽療法 保育園 歌 活用
音楽療法の効果を保育園の歌で活用する視点
音楽療法は「音楽を利用する方法」と捉えると、保育園で扱う歌(季節の歌、手遊び歌、ふれあい遊び歌など)を、日常の保育の中で自然に“支援の道具”へ変換できます。
ここで大切なのは、歌唱の上達をゴールに置かず、子どもの状態(気持ちが乗っているか、疲れていないか、周囲の音刺激が強すぎないか)を見ながら、無理のない参加を最優先にすることです。
また、歌をうたう行為そのものが、呼吸や身体に働きかける可能性があります。
参考)【音楽療法】童謡・唱歌を歌おう!-こども向けの歌・音楽のメリ…
たとえば、歌う中で自然と腹式呼吸になり、横隔膜の運動が内臓機能に関わること、血圧や脈拍などの生理機能に影響し得ることが指摘されています。
保育園の現場では医学的な効果を断言するより、「深い呼吸になりやすい」「気持ちを整えやすい子がいる」など観察ベースで語れる言い方にすると、記録・共有もしやすく安全です。
音楽療法のねらいを歌の活動へ落とす方法
「音楽療法っぽい活動」にするコツは、“歌う前”にねらいを1つだけ決め、観察ポイントを2つに絞ることです。
ねらい例は、情緒の安定、発声・発語のきっかけづくり、集団参加のハードルを下げる、切り替え(開始・終了)の合図を作る、などが現場に落とし込みやすいです。
活動設計は、次の3点セットで考えると整理できます。
・目的(ねらい)/方法(どう歌うか)/評価(どこを見るか)
たとえば「みんなで歌う」活動でも、歌う前に歌詞を音読してから歌唱する、歌った後に「どんな気持ち?」と問いかける、といった流れは、集中や気持ちの言語化に接続しやすい設計です。
保育園でありがちな失敗は、「歌=楽しいはず」と決めつけて、参加できない子を“気分の問題”にしてしまうことです。
音楽療法の留意点として、いきなり音楽を流すと参加の強要になり、逆効果になり得るという指摘があるため、導入は短く、選択肢を残す進め方が安全です。
音楽療法として歌を活用する選曲と環境
選曲は「子どもに合うか」を中心に決め、ジャンル(童謡かどうか)より“目的に合う機能”を見ると実務で強いです。
たとえば、季節の歌は“季節を感じる・時間の認知につながる”という観点で活用でき、同じ歌でもねらいが立ちます。
環境調整は、派手な準備よりも「参加しやすい情報提示」が効きます。
具体的には、歌詞を大きく貼り出す、今歌っているパートを指差す、先読みして示す、音程を相手に合わせて調整する、といった支援で“ついていけない不安”を減らせます。
さらに、身近な生活用品を楽器として代用(ペットボトル+豆でマラカス、洗面器を太鼓など)できるので、表現の入口を「声」だけに限定しないのも有効です。
※参考リンク(現場の工夫:歌詞の提示、先読み、音程調整、身近な物の楽器化、参加の強要を避ける留意点)
音楽療法の歌を保育園で回すプログラム例(導入→展開→終わり)
保育園では、40分の“特別な時間”より、5〜10分の短い歌の活動を日課に埋め込むほうが、子どもも大人も継続しやすいです。
活動の型は「始まりの歌→メイン→終わりの歌」にすると、切り替えの合図が育ち、見通しの弱い子の安心材料にもなります。
プログラム例(5〜10分想定)
・導入(1分):始まりの歌(毎回同じ曲)で“今から”を共有する。
・展開(3〜6分):手遊びうた/ふれあい遊びうた/季節のうたを1曲だけ。
・オプション(30秒〜2分):打楽器を「自由参加」で入れる(マラカス等)、声が出ない子も参加口を作る。
・終わり(1分):終わりの歌(短いフレーズ)で“おしまい”を固定する。
曲のカテゴリ分けを用意しておくと、選曲の迷いが減ります。
・手遊びうた:グーチョキパーで何つくろう 等。
・季節のうた:うみ、すいかの名産地 等(季節の話題と接続)。
・ふれあい遊びうた:バスにのって 等(触れ合いで安心感)。
このように複数ジャンルを持っておくと、同じ「歌」でも、落ち着かせたい日・体を動かしたい日・親子交流の日で使い分けができます。
※参考リンク(保育教材としての歌の具体例:手遊びうた、季節のうた、ふれあい遊びうた、打楽器を使ううた等)
音楽療法の歌を活用する独自視点:記録と連携のテンプレ化
検索上位では「効果」「活動アイデア」紹介が多い一方で、保育園の現場で効いてくるのは“再現性”です。
再現性を上げる一番簡単な方法は、歌の活動を「記録の型」に落とし、担任間・加配・保護者との共有をしやすくすることです。
おすすめは、個別支援計画ほど重くしないミニ記録です(1回30秒で書ける分量)。
【ミニ記録テンプレ】
・目的:情緒/発語/集団参加/切り替え のどれか1つ。
・方法:歌詞提示した/テンポ落とした/指差しした/楽器を渡した。
・観察:①入室後の表情 ②声・動き・視線 ③他児との距離 のうち2つだけ。
・次回:同じ曲を続ける/曲を変える/楽器を変える を1つ。
この型があると、「今日は参加できなかった=失敗」ではなく、「参加の強要を避ける」「気持ちが乗らない日を前提に調整する」という音楽療法の留意点に沿って、改善案が出せます。
また、子どもによっては“声”より“リズム刺激”や“道具”のほうが入りやすいので、生活用品を楽器化する選択肢が最初から記録に入っていると、支援の幅が自然に広がります。
記録を続けると、「この子はテンポを落とすと参加しやすい」「歌詞の先読みがあると安心する」など、クラス運営の“暗黙知”が言語化され、職員間の引き継ぎにも強くなります。


