教材研究 保育園 歌あそび ねらい 表現

教材研究 保育園 歌あそび

教材研究で歌あそびを強くする視点
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ねらいを先に決める

歌あそびは「楽しい」だけで終わらせず、発達や生活とつながる“ねらい”を言語化すると教材研究が進みます。

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歌詞・動き・場面を分解

歌詞の区切り、動きの難易度、導入と終わり方を分解して検討すると、子どもが参加しやすい構成になります。

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相互のやりとりを設計

保育者→子どもの一方通行にせず、問いかけ・待つ・まねるを入れると「遊び」として成立しやすくなります。

教材研究のねらいの立て方

 

歌あそびの教材研究で最初に行うと迷いが減るのが、「ねらい」を“活動の面白さ”と“育ちの焦点”に分けて書くことです。手遊び歌のねらいとしては、手ぶり身ぶりをまねする楽しさ、言葉のリズムの面白さ、数あそびやストーリーに親しむ、といった観点が整理されています。これをそのまま転記するのではなく、クラスの実態に合わせて「誰が・どの場面で・どんな反応を出しそうか」まで落とし込むのが教材研究の核になります。例えば同じ“まね”でも、0〜1歳は「視線が合う・動きを止めて見ようとする」から始まり、3〜5歳は「友だちの動きを見て修正する・アレンジを提案する」へ広がります。

ねらいを立てるときの実務的なコツは、次の3点をセットで書くことです。文章が少し長くなっても、上司チェックではこの“筋道”が評価されやすいです。

  • ねらい(育ちの焦点):例「言葉のリズムを感じる」「数の並びに親しむ」
  • 活動の姿(見取り):例「擬音のところで笑う」「指を順番に出そうとする」
  • 援助(保育者の関わり):例「ゆっくり→通常→速くの段階」「できない子の前で同じ動きをする」

また、ねらいの立て方で意外と盲点になるのが「生活の流れ」との接続です。手遊び歌は短時間で取り組めるため、導入・切り替えの“場面教材”として頻用されます。だからこそ「今日は何の前にやるのか(朝の会、給食、読み聞かせ前、移動の待ち時間など)」を先に決めると、テンポ、声量、動きの大きさが自動的に整っていきます。

(活動のねらい・効果の整理の参考)

保育で使う手遊び歌の「ねらい」「効果」「活動時のポイント」がまとまっています。

保育におすすめの手遊び歌53選|ねらいと盛り上げ方のポイント…

教材研究で歌あそびの歌詞と動き

歌あそびの教材研究は、いきなり「上手にやる」方向へ行くと失敗しがちです。先に“歌詞と動きの分解”をすると、難所が見えるので指導が安定します。具体的には、歌詞を「繰り返し」「擬音」「オチ(変身・驚き)」「呼びかけ」に色分けし、動きを「片手」「両手」「左右が入れ替わる」「全身」に分類します。分類すると、「ここで詰まる子が出そう」「ここは成功体験が作れる」という見立てが可能になります。

たとえば、手遊び歌は子どもが飽きずに集中しやすい、観察する力や一体感を得やすい、という効果が述べられています。逆に言えば、動きが複雑すぎると集中が切れ、クラスの一体感が崩れやすいので、最初は“動き少なめ・繰り返し多め”を選ぶのが教材研究として合理的です。盛り上げたいときほど、あえて「同じフレーズを少しずつ変える」設計(声の大きさ、速さ、表情、間)を入れると、子どもの参加が増えます。

教材研究の観点で「歌詞と動き」を見るとき、次のチェック表が役に立ちます。

  • 歌詞:子どもの語彙で理解できるか(擬音・オノマトペは強い)
  • 旋律:音域が高すぎないか/跳躍が多くないか(歌いやすさ)
  • 動き:左右が交差する場面があるか(年齢によって難度が跳ねる)
  • テンポ:導入はゆっくり→慣れたら変化、が可能か
  • 終わり:次の活動へつなぐ“着地”があるか(「手はおひざ」等)

ここで「あまり知られていない」寄りの視点として、手遊び歌は広まる過程で旋律やリズムが単純化し、子どもが歌いやすい形へ変化しやすい、という研究の指摘があります。つまり現場で「いつの間にか別バージョンになっている」こと自体が異常ではなく、子どもに合わせる中で起こりやすい現象です。教材研究では、この“変化”を否定せず、ねらいに合う形へ意図的に整える姿勢が大切になります。

(手遊び歌の「単純化」「歌いやすさ」「やりとり」の研究参考)

保育現場で手遊び歌がどのように変化し、遊びとして成立する条件が何かを論じています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tokusimabunriu/104/0/104_43/_pdf/-char/ja

教材研究で保育園の環境構成

同じ歌あそびでも、環境構成で“参加率”が驚くほど変わります。活動時のポイントとして、子どもが集中できる環境を整え、補助の保育者は子どもと同じ立ち位置でリーダーの動きを真似する、という実務的な提案があります。これは教材研究の観点で言うと、「一斉活動の見え方を設計する」ことにあたります。とくに歌あそびは視覚情報(手の動き、口形、表情)が理解を助けるため、立ち位置・距離・光(逆光)まで含めて準備すると効果が安定します。

環境構成のチェックポイントを、現場で使える形にまとめます。

  • 子どもの配置:前列が詰まりすぎない/見えにくい子を作らない
  • 保育者の位置:壁を背にして“手の輪郭”が見える場所
  • 音:ピアノや音源より、声が通る角度(机や棚が音を遮らない)
  • 道具:基本は道具なし、使うなら“配る時間”も含めて設計
  • 移行:次の活動の準備担当を決め、歌あそびを中断しない

また、保育園は生活の場なので「音量」と「落ち着き」の設計も重要です。盛り上げ目的の歌あそびでも、常に大声・大きな動きだと日常が荒れやすいです。教材研究では、同じ歌を“声の大小”“動きの大小”で2バージョン用意し、朝の会は落ち着き版、戸外前は元気版、というように場面に合わせて使い分けると、活動の質が上がります。これは子どもにとっても「切り替えの合図」が分かりやすくなり、集団が整いやすくなります。

教材研究で保育者の援助

歌あそびは「教える」になった瞬間に、子どもが観客になりやすい教材です。研究では、手遊び歌が“遊び”として成立するには保育者と子どもの相互的なやりとりが重要で、やりとりの中で楽しさを作り出す過程に意義がある、とされています。教材研究でこの視点を入れると、同じ歌でも“活動”から“遊び”に変わります。

援助を「台本」レベルまで落とすと、現場で再現性が高くなります。以下はそのまま使える型です(クラスの言葉に置き換えてください)。

  • 導入:👂「まずは先生だけでやってみるね」→子どもが“見る側”に集中できる
  • まね:👀「できそうなところだけでOK」→成功体験を拾う
  • 問いかけ:❓「次は何が出ると思う?」→期待感を作る
  • 間:⏳わざと一拍止める→子どもの笑い・ツッコミを待つ
  • アレンジ:✨子どもの提案を1つ採用→“自分たちの歌”になる

特に意外と効くのが「間」です。保育者が完璧に流れるようにやるほど、子どもは受け身になりやすいので、“あえての間”を教材研究で設計します。オチの直前に止める、動きをわざと小さくして「気づくかな?」にする、逆に全員が揃った瞬間に大きくする、などは一体感を作りやすい方法です。子どもが騒がしいクラスでも、「間」を合図に集中が戻ることがあります。

教材研究の独自視点の伝承

検索上位の実践記事は「おすすめの歌」「盛り上げ方」に寄りがちですが、教材研究の独自視点として押さえたいのは“伝承”の扱いです。手遊び歌は、作者や原曲名が意識されないまま広がりやすく、旋律が平坦化しリズムが単純化していく傾向が報告されています。これは「正しい版に直すべき」という話ではなく、保育現場で子どもに合わせて変えられ、残ってきたという事実です。教材研究では、伝承を“現場知”として尊重しつつ、ねらいに合わせて「どこを残し、どこを変えるか」を判断できると、活動が一段深くなります。

たとえば、同じ曲でも園や地域で歌詞が違うことがあります。新任の先生が戸惑うポイントですが、教材研究で次のように整理するとチームが動きやすいです。

  • 共通部分:子どもが覚えやすい核(繰り返し、擬音、数の並び)
  • 変えてよい部分:クラスの実態に合わせる要素(テンポ、間、声色、最後のオチ)
  • 確認が必要:著作権・利用範囲(公開動画に載せる等のときは特に注意)

さらに、伝承の観点で“意外な教材研究の種”になるのが、歌あそびの「最後の一言(決め台詞)」です。園によって「もう一回!」「おしまい」「手はおひざ」などが違い、ここがクラスの文化になります。終わり方が安定すると、子どもは安心し、次の活動への移行が短くなります。結果として、歌あそびが単独で盛り上がるだけでなく、保育全体のリズムが整うので、教材研究としての価値が高いポイントです。


白石範孝の「教材研究」