草川信 保育園 童謡 夕焼小焼

草川信と保育園と童謡

この記事の概要
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草川信の童謡が保育に合う理由

代表曲の背景と、保育園で歌い継がれてきた文脈から、導入のヒントを整理します。

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曲の“設計”を読む

歌詞の言葉づかい、拍、間奏、強弱など、子どもに伝わる要素を保育目線で解説します。

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明日からの実践

年齢別の歌い方、行事での扱い、保護者への共有方法まで、現場の使い方に落とし込みます。

草川信の童謡と保育園の定番曲

 

草川信(くさかわしん)の曲は、「夕焼小焼」「揺籠のうた」「どこかで春が」「みどりのそよ風」など、保育園・幼稚園・家庭で歌い継がれてきた代表的な童謡に数多く関わっています。特に「揺籠のうた」は戦後もNHKの幼児向け番組等で繰り返し扱われ、保育園や家庭で子守唄として歌い継がれてきたことが指摘されています。

この“長く残る歌”が保育に向く理由は、単に有名だからではなく、子どもが口ずさめる旋律の自然さと、大人が支えて歌うときにも崩れない「伴奏・間・強弱」の骨格があるからです。

保育者にとっては、季節の歌・生活の歌・行事の歌に分けて教材化しやすい点も強みです。たとえば、春は「どこかで春が」「春の唄」、夕方の帰り支度や園の一日の区切りには「夕焼小焼」、安心と入眠の場面には「揺籠のうた」というように、場面に沿わせると“歌が機能”します。

※草川信作曲の代表的な曲や、保育者向けの童謡検索での掲載は、保育向け楽曲検索サイトでも体系的に確認できます。

保育向け楽曲検索(作曲者:草川信の一覧や曲検索に有用)

システムエラー/[ホイック]~保育者のためのWebサイト~

草川信の童謡が保育園で歌われる背景

草川信は、大正期の童謡運動を支えた作曲家の一人で、「赤い鳥」などの雑誌で多くの作品を残し、のちに「夕焼小焼」などが広く普及していきました。草川信が作曲した「風」は大正10年(1921年)春に作曲され、「赤い鳥」曲譜集として発表されたことが整理されています。

また、「夕焼小焼」は中村雨紅の詞に草川信が作曲した童謡として知られ、発表年・経緯についても研究的にまとめられています。保育現場の感覚としては「昔からある歌」ですが、実際には“近代の子ども文化を形作った歌”でもあり、現場で歌うときに「文化としての厚み」を子どもに届けられるのが魅力です。

さらに意外に重要なのが、同じ曲でも「歌詞表記」「読み」「版」に揺れがある点です。保育園の歌は、CDや動画、楽譜集で“微妙に違う版”が混ざりやすく、クラスで混乱が起きます。先に保育者が「この園ではこの版で統一する」と決めるだけで、子どもは安心して歌に集中できます。

草川信の略歴・作品成立・楽譜の異同まで詳しい解説(童謡事典的に有用)

なっとく童謡・唱歌 草川信の童謡(1);風,揺籠のうた,春の唄,どこかで春が,夕焼け小焼け  池田小百合
童謡,唱歌,事典,池田小百合

草川信の童謡を保育園で歌うときの歌い方

保育園で草川信の童謡を扱うときは、「子どもが歌える高さ」「言葉の輪郭」「間奏・間(ま)の使い方」を押さえると完成度が上がります。とくに草川信自身が“弱く消えていく表現”や“強弱記号”への注意を述べる例があり、曲がただのメロディーではなく、情景を運ぶ設計になっていることが読み取れます。

現場で効くコツを、実務に落とすと次のようになります。

  • テンポを急がない:帰りの支度中に歌うと速くなりがちなので、保育者が「最初の一息」をゆっくり置く。
  • 言葉を“はっきり短く”しすぎない:童謡は語尾に余韻があると安心感が増し、子どもの呼吸が整う。
  • 伴奏がないときは手拍子を減らす:拍が強すぎると、歌が行進曲化して“夕暮れ・春の気配”が消える。
  • 音域が合わない学年は移調:無理に原曲キーで頑張らせるより、歌の気持ちよさを優先する。

「揺籠のうた」の“ねんねこ”は、音と言葉のリズムが重なる部分で、子どもが安心しやすい反面、雑に歌うと単調になりがちです。そこで、保育者が2回目の“ねんねこ”だけ息を少し深くして、声量ではなく“柔らかさ”を足すと、部屋全体の空気が変わります。

草川信の童謡を保育園の行事と日常に結ぶ

「歌うこと」をイベント化しすぎると、歌は“発表の道具”になり、日常から遠ざかります。草川信の童謡は、むしろ日常に埋め込むほど力を発揮します。たとえば「夕焼小焼」は、日没の情景・帰る・手をつなぐ・鐘・星というモチーフがあり、園の生活リズムと相性が良い歌です。

行事と日常のつなぎ方の例を挙げます。

  • 帰りの会:毎日同じ歌にせず、週ごとに「夕焼小焼」「どこかで春が」など“時間と季節”で入れ替える。
  • 散歩前:春は「みどりのそよ風」を短く口ずさみ、散歩の観察テーマ(蝶・豆の花など)を一言添える。
  • 午睡導入:「揺籠のうた」を“全員で歌う”より、保育者が小声で1番だけ歌う(聴く体験にする)。
  • 保護者参加:発表会で大合唱より、親子で短いフレーズを交互に歌う構成にして成功体験を作る。

また、保育者向けの豆知識として、同じ作品でも「教科書掲載の版」「レコードで広まった版」「原譜に近い版」で表記が違うことがあります。園で使用する楽譜・CD・動画を揃えるときは、“同じ歌のはずなのに違う”を前提に、最初に歌詞カードや楽譜の冒頭だけでも照合すると事故が減ります。

草川信の童謡を保育園で活かす独自視点

検索上位の記事では「代表曲紹介」や「歌詞・動画」中心になりがちですが、保育の実務では“歌の周辺設計”が成果を左右します。独自視点として提案したいのは、草川信の童謡を「言葉の教育」「情景の共有」「集団の呼吸合わせ」に使い分ける方法です。

たとえば「どこかで春が」には「見えない春の気配を想像する」構造があります。ここで保育者が、歌の前後に観察活動を足します。

  • 歌う前:窓の外を見て「今日の“春”はどこにいる?」と問い、子どもの言葉を拾う。
  • 歌った後:「芽の出る音ってどんな音?」と質問し、音の表現(擬音・身ぶり)を引き出す。

このやり方は、歌が“知識”ではなく“ことばの遊び”になり、クラスが静かに集中します。さらに、歌を教材化しすぎないことも大切です。歌の途中で説明を挟むより、歌い終わってから1分だけ余韻を残し、その後に短い対話をする方が、子どもの内側で情景が育ちます。

もう一つ、あまり語られない実務ポイントとして「音の終わり方」を揃える方法があります。草川信の曲は、弱く終わる・余韻で終わる場面が多く、ここが揃うと一気に“上手に聞こえる”のに、揃わないと落ち着きません。練習では、歌の最後の2小節だけを取り出し、保育者が手のひらを下げる合図で“静かに終わる”体験を作ると、年長だけでなく年中でも整います。

「歌が上手になる」よりも、「歌で生活が整う」「歌で気持ちが揃う」を目標にすると、草川信の童謡は保育園で長く使える武器になります。


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