砂山 保育園 童謡
砂山の歌詞と佐渡の情景を保育園で伝えるコツ
「砂山」は北原白秋の詞による童謡で、歌詞には「向こうは佐渡よ」という具体的な地名が出てきます。
保育園で扱うときは、いきなり歌い出すより、1分の“情景づくり”を入れると子どもの耳が立ちます。たとえば「海はどんな音がする?」「夕方になると空は何色?」と問い、子どもの答えを拾ってから歌に入ると、歌詞が“言葉の暗記”から“体験の再現”に変わります。
歌詞の中で保育の説明が必要になりやすい言葉は「汐鳴り」「ちりぢり」「茱萸原」です。
特に「茱萸原(ぐみはら)」は、知らないままでも歌えてしまう一方で、意味が分かると場面が急に立体的になります(砂山に植物の藪が広がっていて、そこを分けて帰る)。
写真が用意できない場合は、紙芝居風に「砂山(高いところ)→砂浜(遊ぶところ)→海(荒い音)→空(星)」の順で手ぶりを添え、場面転換を身体化すると理解が早まります。
(歌詞の背景・寄居浜の情景描写が詳しい:導入の語り・情景づくりの参考)
砂山の作詞と作曲(中山晋平・山田耕筰)を保育園で使い分ける
「砂山」は、同じ詞に対して中山晋平作曲版と山田耕筰作曲版の2曲が知られている点が特徴です。
一般に、同一歌詞で複数の曲が並行して歌い継がれるのは珍しい例だとされています。
園での実務としては、朝の集まりで“声を出す”目的なら中山晋平版の推進力、帰りの会や静かな導入なら山田耕筰版の落ち着き、というように「時間帯」と「子どもの状態」で選ぶと失敗が減ります。
また、中山晋平版は戦後から1960年までにレコード売上が15万枚に達したロングヒットだと紹介されています。
この“広く親しまれた”背景は、保護者世代・祖父母世代との接点にもなりやすく、行事や参観で取り上げた際に家庭で歌が戻ってくる可能性があります。
園内で同じ歌が家庭に広がると、子どもは「園で覚えた歌が家でも通じる」経験をし、言葉への自信につながりやすいので、狙って設計する価値があります。
(2つの曲が知られること・成立背景の要点がまとまる:職員間の共通理解づくりに便利)
砂山の童謡を年齢別に保育園で楽しむ活動案
0〜1歳は、歌として完唱を目指すより「海は荒海」の“音”と“間”を味わう扱いが向きます。
保育者が一定のテンポで揺れ(左右・前後)を作り、強い言葉(海、風、星)だけを表情とジェスチャーで示すと、言葉の意味が分からなくても“場面”は伝わります。
この年齢では、音量は小さめにして、最後の「お星さま出たぞ」を少し明るくするだけでもコントラストが生まれます。
2〜3歳は、「すずめ」「星」に焦点を当てると遊びが作りやすいです。
「すずめ啼け啼け」をきっかけに、部屋の隅から隅へ“ちりぢり”に散る動き(走らず歩き)を入れ、次に「みんな呼べ呼べ」で集まる、という“歌詞の指示で動くゲーム”にすると集中が続きます。
4〜5歳は、歌詞が描く夕暮れの変化を「色・音・温度」で言語化させると、表現が一段深くなります(例:荒海は低い音、星は小さい光)。
活動の安全面では、荒海・風を表現すると動きが大きくなりがちなので、最初にルールを1つだけ提示します。
- 走らない(歩いて“ちりぢり”)。
- 手は広げるが、友達に触れない距離で。
- 合図(鈴や手拍子)で必ず止まる。
このように、歌詞の情景を守りながら“動きの制限”を先に置くと、表現遊びが荒れにくくなります。
砂山の「寄居浜」と歌碑を保育園の探究にする(意外な深掘り)
「砂山」は、新潟市街地に隣接し佐渡島を一望できる寄居浜の荒涼とした光景から着想を得た、と説明されています。
さらに寄居浜には公園(西海岸公園)が整備され、園内に「砂山」の歌碑があるとされています。
ここを保育の“意外な伸びしろ”として使うなら、歌を「遠い物語」から「実在する場所のうた」へ変換します。
方法はシンプルで、地図を見せる必要もありません。園の散歩で「砂」「風」「夕方の空」「鳥の声」を拾い、最後に「この歌は、そういう景色を見て作られたらしいよ」と“実話の要素”を少し足すだけで、子どもの聞き方が変わります。
特に、寄居浜の情景描写として「茱萸藪が見渡す限り」「雀がたくさん」「荒海の向こうに佐渡」「夕暮れ」などが語られており、歌詞の各フレーズと結びつけやすい材料がそろっています。
探究の形にするなら、次のミニ課題が使えます(正解を求めない形式)。
- 「荒海の音って、どんな音?」(オノマトペ)。
- 「星が出たぞ、の気持ちは?」(喜び/安心/少し怖い)。
- 「ちりぢりって、どんな動き?」(身体表現)。
歌は“歌う”だけでも成立しますが、実在の浜や歌碑の話題が入ると、保育園の童謡活動が「ことば」「自然」「社会(場所)」にまたがる学びになり、指導計画にも落とし込みやすくなります。
砂山の童謡を保育園で扱うときの配慮(歌詞・雰囲気)
「砂山」の歌詞は、夕暮れと荒海、散っていくすずめなど、明るさ一辺倒ではない情緒を含みます。
保育園では“暗い=避ける”ではなく、「静かな気持ち」「帰り道のさみしさ」「でも明日がある」という感情のグラデーションとして扱うと、子どもは安心して受け取れます。
実際、歌詞には「さよならあした」という言葉があり、別れと再会がセットで書かれているため、帰りの会の季節歌としても組み立てやすいです。
配慮の具体策としては、導入と終わり方を工夫します。
- 導入:情景の語りを短くし、怖さを煽らない(“荒海”を強調し過ぎない)。
- 歌唱:子どもが不安そうなら、最初は保育者の独唱+ハミング参加でもよい。
- 終了:最後は必ず「また明日」のニュアンスで締める(握手・タッチ・一礼など)。
この3点だけでも、歌の雰囲気を大切にしつつ、クラスの安心感を損なわずに童謡を日常へ置けます。


