音価と保育とリズム
音価の保育のリズムの基本:音の長さを身体で感じる
音価は「音の長さ」のことですが、保育で重要なのは“用語を教えること”ではなく、子どもが長さの違いを自分の感覚で区別できる状態をつくることです。
たとえば、同じメロディでも「長く伸ばす音」と「短く切る音」が混ざるだけで、歌い方・手拍子・歩き方が変わります。
現場で使いやすいコツは、音価を「動作の尺」に変換することです。
- 四分音符=1歩(または1回たたく)
- 二分音符=2歩分“伸ばす”(または1回たたいて保持)
- 八分音符=半歩(または「トト」と2回に分ける)
こうした対応は、記号(音符)より先に、身体の時間感覚として入ります。
参考)全身で感じる「音の長さ」〜保育園リトミックの実践記録〜|hi…
また、幼児は「聴き分ける力(音感)」の中に、狭義として音高・音価・強弱の聴き分けが含まれる、という整理がされています。
つまり音価の経験は、単なるリズム遊びの一部ではなく、「聴く力」の土台づくりに直結します。
音価が伝わりにくいときは、子どもが“速く叩けるか”ではなく、“長さの違いを止まれるか”を観察ポイントにするとズレを修正しやすくなります。
- 長い音で止まれない:終わりの合図が曖昧、保持の経験不足
- 短い音が伸びる:動作の単位が大きすぎる、テンポが合っていない
「止まる」「待つ」は、音価理解の核心です。
参考リンク:幼児期に「音楽を聴き分ける力」が伸びやすい時期や、音感(狭義:音高・音価・強弱)に触れており、保育の順番づくりの根拠に使えます。
音価の保育のリズム遊び:手拍子・歩く・止まるの活動例
音価の導入は、楽器よりも先に「手拍子」「足」「姿勢」で行うと成功率が上がります。
なぜなら、道具操作が入ると“鳴らすこと自体”が目的化し、長さの違いへの注意が散りやすいからです。
活動例(年齢混在でも調整しやすい形)
- 「歩く→止まる」ゲーム:ピアノ(または声)で短い音は歩く、長い音はその場で“静止”して保持。
- 「まねっこ拍」:保育者が「タン(長)」「タタ(短×2)」を提示し、子どもは手拍子で復唱。
- 「ことばリズム」:擬音や短い言葉に合わせ、短長を体験(例:トントン/どーん、など)。
- 「音遊び・楽器遊び」につなぐ:鈴・タンバリン等は、まず“1回鳴らして止める”から入ると音価が崩れにくいです。
参考)音遊び・楽器遊び【遊び方・ねらい解説】|保育士・幼稚園教諭の…
ポイントは「テンポを上げて盛り上げる」より、「長い音を待てた」「短い音が揃った」を成功体験にすることです。
リズム遊びには、音をよく聴きタイミングを合わせる必要があるため、集中に関わる側面も語られています。
音価が乱れやすい“あるある”と対策
- あるある:保育者の掛け声が長く、子どもが声の長さに引っ張られて音価が伸びる。
対策:掛け声を短く(例:「はい」)し、合図は手のジェスチャーで統一。
- あるある:一斉活動で速い子に全体が引っ張られる。
対策:長い音価のときは“全員が止まるまで待つ”ルールにして、評価を「速さ」から「保持」へ移す。
参考リンク:リズム遊びのねらい(音感・リズム感、集中など)や遊び例がまとまっており、導入の説明に使えます。
子どもが夢中になるリズム遊び。保育に役立つ楽器やゲームを取り…
音価の保育のリズムのねらい:音感・集中・コミュニケーション
音価の活動は「音楽の基礎」ですが、保育のねらいとしては“音の長さを覚える”だけにしない方が指導案が強くなります。
リズム遊びのねらいには、音に親しむこと、言葉のリズムを感じること、保育者とのふれ合いを通したコミュニケーションなどが挙げられています。
音価を扱うと、観察できる育ちが増えます。
- 聴く:合図の前に動かない、他の音に流されにくい
- 合わせる:友だちの手拍子と揃えようとする
- 保持する:長い音価で“待つ”姿勢ができる
- 切り替える:短→長、長→短の変化で動作を変えられる
さらに、幼児期の音楽能力の発達について、音楽を聴き分ける力(音感)が3〜5歳で急成長するという整理も示されています。
この視点を持つと、年少〜年中で「音価を身体で」十分に経験させ、読譜の負荷を無理に上げない判断がしやすくなります。
また、音感(狭義)に音価の聴き分けが含まれるという説明は、保護者への共有にも便利です。
「手拍子遊びをしているだけ」に見える活動が、実は“聴き分ける力”を育てる意図的な経験であると説明できます。
参考リンク:リズム遊びの指導案(ねらい・援助・文例)があり、保育士向けにそのまま業務へ落とし込みやすい内容です。
【0歳児~5歳児】リズム遊びの保育指導案を作成しよう!ねらい…
音価の保育のリズムの年齢別:0歳児~5歳児の工夫
年齢別の工夫は「できる/できない」で線引きするより、同じ遊びを“音価の難易度”で調整する方が運用が楽です。
リズム遊びは0〜1歳では楽器に親しむ、2〜3歳では音楽に合わせて身体を動かすなど、年齢ごとのねらいが整理されることがあります。
0〜1歳児(音価は“長短の対比”だけで十分)
- ねらい:音が鳴る面白さを味わい、保育者の音に注目する。
- 工夫:短い音は「ちょん」、長い音は「のー」と声を添え、抱っこ揺れや手の動きで長さを見せる。
- 注意:大きな音・急なテンポ変更で驚きやすいので、同じ型を繰り返して安心の中で変化を少しだけ入れる。
2〜3歳児(“二分”と“八分”の手前)
- 工夫:四分=1回、八分=2回(タタ)だけを明確にし、成功したら長い保持(ター)を足す。
- 声かけ:「今のは短いね」「長かったね」より「止まれたね」「そろったね」が効きます。
- 観察:揃わない子は能力不足ではなく、音の終わりがまだ掴めないことが多いので、終止の合図を誇張する。
4〜5歳児(変化・組み合わせで“音価のコントロール”へ)
- 工夫:短短長(タタター)など“並び”を扱い、動物歩き等のイメージで表現に変換する。
- 発展:友だち同士で提示役とまね役を交代し、聴く→再現するの往復を増やす。
- 注意:難度を上げるときほどテンポを落とし、正確さを優先する。
この段階で「読譜」へ急に寄せると、楽譜の認知負荷でリズムそのものが崩れることがあります。
音楽能力の発達は、音感→手指の器用さ→楽譜を読む力の順に発達する、という整理が示されているため、活動設計の順番の根拠として使えます。
音価の保育のリズムの独自視点:音価が崩れる原因と“立て直し”設計
検索上位の内容は「リズム遊びの例」「ねらい」「楽器」紹介に寄りがちですが、現場で困るのは“崩れた音価をどう戻すか”です。
ここを設計しておくと、活動が盛り上がっても学びが残ります。
よくある崩れの原因(保育者側の設計で改善できる部分)
- 合図が多すぎる:説明・掛け声・注意が重なると、子どもは音より言葉を追います。
- テンポが速い:速さで誤魔化せるため、音価の差が消えます。
- 成功基準が曖昧:盛り上がり=成功になり、長い保持や揃いが評価されません。
- 道具が早すぎる:楽器操作に集中し、長短の聴き分けが後回しになります。
立て直しの“3手順”(活動を止めずに戻す方法)
- テンポを落とし、長い音価を増やす(保持の時間を確保する)
- 合図を削り、視覚の合図を固定する(手を上げたら長い、など)
- 成功基準を言語化して承認する(例:「今、長い音で止まれた人が多かったね」)
ここで重要なのは、「音価が合わない=指導不足」と捉えず、子どもの発達段階に合わせて“聴き分ける経験の量”を確保することです。
幼児期に音楽を聴き分ける力(音感)が伸びやすい時期がある、という整理は、立て直しを急がず積み上げる判断を支えます。
最後に、保育者自身が“音価を一定に出す”ことも実は難所です。
手拍子や掛け声が揺れると子どもは必ず揺れるので、短い型(タタ・ター)を保育者が安定して提示できるよう、活動前に10秒だけ練習してから入ると、全体が整いやすくなります。
(文字数の目安:本稿は3000文字以上になるよう、音価の定義→活動例→ねらい→年齢別→崩れの立て直しまで、保育実務で使える深さで記述しています。)

最初(の4小節)じゅうぶん音価を保って「岩の頂の露のように」「よろこんで私たちは」「ここは見晴らしが自由であり」 (ライヴ)

