歌の力 保育園 行事ソング
歌の力で保育園の行事ソングをねらいから決める
行事ソングの強みは、ただ“覚える課題”ではなく、クラスの時間を同じリズムで共有しやすい点にあります。朝の歌が「集団生活への自然な導入」や「保育のリズムのスタート」に役立つのと同様に、行事前の歌も子どもの気持ちを同じ方向へそろえるスイッチになります。実際、朝の歌には登園の不安を和らげる、言語発達やリズム感の基礎づくり、保育者との信頼関係づくりなどの役割が挙げられています。
ねらい設定は、次のように“行事の形式”より“育ち”を主語にするとブレにくくなります。
- 「みんなで声を合わせる一体感を味わう」→サビが短く反復が多い行事ソング。
- 「表現したい気持ちを育てる」→歌詞が情景を描きやすい行事ソング(身振り・表情が出る)。
- 「役割や順番を理解して参加する」→合図や掛け合いが入れられる構成の歌。
園の行事は「歌やダンスを通して表現力・創造力を養う」「クラスみんなで力を合わせ協調性・社会性を育む」といったねらいで整理でき、行事ソングはその中心教材になり得ます。
参考)保育園行事のねらいは?指導案に役立つ行事別のねらい&導入特集…
行事ソングを“発表のためだけ”にしないコツは、練習の時間を「やり遂げる経験」に変えることです。子どもが「友だちと共通の目的に向かって努力する楽しさ」を味わえるよう、短いゴール(今日は1番だけ、今日は最後のポーズだけ)を刻むと達成感が積み上がります。
歌の力を保育園で行事ソングにする選曲:声域と発達
行事ソングは盛り上がるほど音域が広くなりがちですが、声域が合わないと「叫ぶような声」になり、歌うこと自体が負担になり得ます。保育現場の選曲を“子どもの声域”から見直す必要があること、原調のままだと合わない場合があることは、保育現場の歌の選曲基準を論じた研究でも指摘されています。
特に意外と見落とされがちなのが、「上手に聞こえる歌」ほど子どもに無理をさせる可能性がある点です。研究では年齢ごとの声域の目安を整理し、無理なく歌える範囲を設定して検討しています(例として、2歳児は最高音をG1程度、3歳児はD1~G1程度などの整理が示されています)。
参考)保育園・幼稚園・こども園で人気のどうよう&あそびう…
「流行の曲」「聴き映え」だけで決めると、行事のたびに“出せない高音”が発生し、練習が苦行になってしまいます。
選曲・アレンジで現場がすぐ使えるチェック項目は次です。
- サビで最高音が続く曲は避ける(瞬間的な高音より“高音の連続”が負担になりやすい)。
- 原曲キーにこだわらず、伴奏を移調して歌いやすくする(子どもの「自然に歌える」を優先)。
- 歌詞が長い曲は「1番だけ」「サビだけ」など構成を整理し、行事のねらいに必要な部分に絞る。
- 手遊び・動きが入りやすい曲を選ぶ(リズムが体に入ると音程の不安が減る)。
また、童謡や遊び歌は、言葉の意味を完全に理解していなくてもメロディーとリズムで覚えやすく、語彙や表現の入口になり得る、という整理もあります。
参考)保育園の歌の時間に使える曲とは~季節に合わせた曲で子どもたち…
行事ソングを“子どもの歌唱発達の延長線”に置くと、選曲の迷いが減ります。
歌の力で保育園の行事ソング練習:導入と環境
行事ソングの練習は、音程を正す時間というより「参加したくなる導入」を作る時間にすると進みます。歌が行事の導入やまとめになり、活動と組み合わせることで季節や行事を感じる教材になる、という考え方は、季節の歌を扱う保育記事でも示されています。
導入の作り方は、次の3点を揃えると強いです。
- 目で分かる:絵カード、行事の写真、衣装の一部、小道具。
- 耳で分かる:同じ前奏フレーズ、同じ“はじまりの合図”。
- 体で分かる:最初の1小節に同じ動きを固定する。
さらに“環境”として効くのが、楽器や音色の使い分けです。5歳児の劇ごっこ事例では、役柄に応じて楽器(アンクルン、ウッドブロック、木琴など)を提示すると、音色が合図になってイメージ共有が進み、共通の目的を見出して協力工夫する姿が見られたと報告されています。
参考)11月に保育園で歌いたい季節のうた|秋を感じる保育の音楽活動…
行事ソングでも同じで、例えば「サビはタンバリン」「間奏は鈴」のように役割を持たせると、“歌えない子”も参加の入口ができます。
練習が荒れやすいクラスでは、歌の時間を短く区切るのが有効です。朝の歌が「主活動への移行を促す」ように、行事ソングも「この後は制作」「この後は外遊び」とセットにすると、集中の終点が見えて落ち着きます。
参考)幼稚園や保育園でうたう朝の歌におすすめの曲や決め方のポイント
歌の力で保育園の行事ソングを共同体験にする(独自視点)
検索上位では「選曲」「季節」「おすすめ曲」に寄りがちですが、行事ソングの本質は“共同体験の設計”にあります。ポイントは「同じ声でそろえる」だけではなく、音や動きで互いを感じ取り、役割を交代しながら“私たちの表現”へ変えていくことです。劇ごっこの研究では、幼児期の協同的な学びは「共通の目的を見出す」「協力工夫する」だけでなく、音色や動きが“対話の手段”になり得ることが論じられています。
行事ソングを共同体験に変える、現場での具体策です。
- 役割を増やす:歌う係/合図の係/間奏で動きを出す係/終わりのポーズ係。
- 交代制にする:毎回センターを変える、楽器担当を変える(固定にしない)。
- “合図”を子どもが出す:保育者が指揮者になり過ぎず、子どもの合図で始める。
- 相談の時間を入れる:「どの音が“入場”っぽい?」など短い問いで工夫を引き出す。
ここで意外と効くのが、「観客の存在」を練習中から少しずつ作ることです。研究事例でも、他の幼児に見せて感想や意見が出ることで、目的が共有され、工夫が促される様子が記録されています。
本番だけが発表ではなく、練習の途中に“ミニ発表”を挟むと、行事ソングが単なる反復練習から、意味のある共同制作に変わります。
参考:保育所保育指針(本文)
参考:保育現場の選曲と声域(研究PDF)
子どもの声域に着目した選曲基準(年齢別の声域整理と負担の指摘)
参考:音楽表現と協同的な学び(研究PDF)


