農林水産省保育食育
農林水産省保育食育歌と手遊びの導入ポイント
保育園で「食育」を歌に乗せる最大の利点は、知識の押しつけではなく、楽しい体験として食に触れられることです。
厚生労働省の「保育所における食育に関する指針」では、乳幼児期から発達段階に応じて豊かな食の体験を積み重ね、「食を営む力」の基礎を培う重要性が示されています。
つまり、歌や手遊びは“気分を盛り上げる飾り”ではなく、食に関する体験を積み重ねる入口として合理的です。
現場で失敗しやすいのは、「歌を歌った＝食育をした」と扱ってしまうことです。
指針は、食育を食事の時間だけに閉じず、生活全体を通して計画的・総合的に展開する必要があるとも述べています。
そこで歌は、次の活動へつなぐ“スイッチ”として位置づけると強くなります。
使いやすい導入の型（歌→体験→振り返り）を、園の制約（時間・安全・アレルギー）に合わせて縮尺しておくと回しやすいです。
例として、0〜2歳は「見る・触る・嗅ぐ」を中心に、3歳以上は「調理・盛り付け・場を整える」へ寄せると、指針の発達観とズレにくくなります。
歌詞を覚えさせるより、「食べものを話題にする」「一緒に食べたい人がいる」などの状態を育てる方向に寄せるのが安全です。
農林水産省保育食育白書動画の活用方法
農林水産省は、食育白書の普及啓発として、職員が作詞・作曲・演奏した楽曲に乗せた動画を公開しています。
この手の動画は、園でそのまま長時間視聴するより、「先生側の理解を揃える教材」として効きます。
なぜなら、先生間で食育の狙いがブレると、歌や掲示物が単発イベント化しやすいからです。
園の運用に落とすときは、動画の“言い回し”を真似るより、扱っているテーマを給食と結び付けると再現しやすいです。
例えば「子供・若い世代を中心とした食育の推進」という特集方向は、園で言えば「子どもが自分で選びたくなる環境づくり」に置き換えられます。
具体的には、今日の給食の食材カードを3枚だけ提示して、歌のあとに「どれが畑（田んぼ）から来た？」と問いを一つ置くだけでも、活動が“食べものを話題にする”体験になります。
また、動画系は保護者への共有にも強いです。
指針でも家庭や地域との連携が重要とされ、保育所が相談・助言など地域子育て支援の役割も担うことが示されています。
園内掲示にQRを置いて「園で歌っているテーマ」を家庭に持ち帰れる形にすると、無理なく連携が作れます。
参考：農林水産省の食育白書普及啓発動画（動画の趣旨・特集テーマの確認）
農林水産省保育食育ピクトグラムと歌やダンスの事例
農林水産省サイトの活動紹介事例には、毎月の食育テーマに対して食育ピクトグラムを当てはめ、園児の興味関心を高めるために歌やダンスを交えながら紹介する取組が掲載されています。
ここが重要で、ピクトグラムは“掲示して終わり”ではなく、身体活動（歌・ダンス）と組み合わせることで、記号が意味に変わる設計にできる点です。
保育では視覚だけより、音・動き・会話が加わった方が再現性が上がります。
運用のコツは、ピクトグラムを「月のテーマ」ではなく「週の合図」に落とすことです。
参考）活動紹介
月単位だと行事に飲まれて薄まりがちなので、給食の献立に合わせて“今週はこの1枚”と絞ると、子どもが覚えやすく先生も回しやすいです。
歌は毎回同じ曲でも、合図（ピクトグラム）だけ変えると、マンネリ回避と定着を両立できます。
さらに、指針が示す「食と文化」「いのちの育ちと食」などの観点とも相性が良いです。
例えば、旬の食材の日に「旬」系の合図→給食→帰りの会で“今日のにおい”を一言ずつ、のように短く回すと、活動が生活全体に溶け込みます。
「歌＋合図＋給食＋一言」の4点セットを固定化すると、先生が変わっても品質が落ちにくいです。
参考：歌やダンスを交えて食育ピクトグラムを紹介する事例（園での具体運用のヒント）
農林水産省保育食育給食と旬と行事食のつなげ方
食育を強くするのは、歌の上手さではなく「給食と接続できるか」です。
指針では、保育所での食事は空腹を満たすだけでなく、人間的な信頼関係の基礎をつくる営みでもあるとされ、食事の意味の大きさが強調されています。
だからこそ、歌は給食前の“気持ちの準備”として使うと効果が見えやすいです。
接続の設計例（園で回る形）
- 🎵 歌：今日のテーマを1語だけ入れる（例：旬、畑、ありがとう）。
- 🍚 給食：そのテーマに関係する食材を1つだけ名指しする（全部は言わない）。
- 🗣️ 会話：食べた後に「音・におい・色」など五感の言葉を一つ選ばせる。
- 🏠 家庭：連絡帳や掲示で、同じ一語（旬など）を家庭にも渡す。
「旬」や「行事食」は、知識として教えるより、園の暦（季節）と体験（匂い・温度・食感）で覚える方が自然です。
指針は食文化との出会い、季節の恵みを実感することなどにも触れており、郷土・季節の体験を食につなげる考え方が読み取れます。
行事食の日だけ特別にするのではなく、前日から歌の合図を変えて“予告”にすると、期待が食欲に繋がりやすいです。
農林水産省保育食育の独自視点：歌を「評価」と「家庭連携」に使う
検索上位の食育記事は「活動アイデア集」に寄りやすい一方で、「評価」と「家庭連携」を歌に組み込む視点は薄くなりがちです。
しかし指針では、食育の計画が保育計画・指導計画の中に位置づく必要や、経過や結果を記録して評価・改善につなげる必要が述べられています。
つまり、歌は“活動”であると同時に、“観察の窓”にもできます。
具体的には、歌の中で子どもが示す反応を、評価項目に変換してしまう方法です。
- 👀 反応の種類：歌の特定フレーズで給食の方を見る／食材カードを指さす／友達に話しかける。
- 📝 記録の単位：全員を細かく書かず、「今日初めて反応が出た子」「継続している子」だけ拾う。
- 🔁 改善：反応が薄い日は、歌→掲示→給食の距離が遠い（情報が多い）可能性があるため、合図を1枚に絞る。
家庭連携も、栄養の正解を渡すより「会話の種」を渡す方が現実的です。
指針は家庭や地域社会と連携し、保護者の協力のもとで進める重要性を示しています。
たとえば園だよりに「今日の歌の合言葉：旬」「今日の給食で見つけた旬：○○」の2行だけ載せると、家庭側は短時間で話題にできます。
参考：食育を計画的に進め、記録・評価・家庭連携を重視する考え方（指針の該当箇所の根拠）