表現活動と保育の歌と音楽

表現活動と保育

表現活動 保育の歌で育つこと
🎵

ねらいを言語化

「歌う=上手に歌う」ではなく、感じたことを表す経験をどう積むかを整理します。

🧩

導入と援助の設計

絵本・シアター・手遊びなどで「歌いたい」気持ちを作り、活動を自然に展開します。

📌

記録と評価のコツ

子どもの変化を観察し、次の表現につながる手立て(環境・声かけ)を更新します。

表現活動 保育のねらいと表現の位置づけ

 

保育の「表現活動」を歌から考えるとき、最初に押さえたいのは“位置づけ”です。幼稚園教育要領では、領域「表現」は「感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して,豊かな感性や表現する力を養い,創造性を豊かにする」ことが示されています。つまり歌は、技能の獲得そのものではなく、感じたことを外に出す経験(声、動き、表情、ことば)を積み重ねる入口になります。

ここを誤解すると、「歌詞を覚えさせる」「音程をそろえる」だけが目的化し、子どもは“評価される場”として身構えやすくなります。一方で、表現のねらいに沿って設計すれば、歌は日々の生活と自然につながります。たとえば、雨の日に窓の音を聞いてから雨の歌に入る、散歩で見た葉っぱの色を思い出しながら季節の歌を歌う、といった導線です。こうした導線は、歌の時間を「今の生活を確かめる時間」に変え、子どもが自分の経験を表す理由を持てるようにします。

また、保育所では厚生労働省の「保育所保育指針」で、音楽を含む活動が領域「表現」に位置づく、と整理している解説もあります。歌を「表現の一部」と捉えることで、音感やリズム感だけでなく、他者と一緒に行う一体感、気持ちの調整、ことばの獲得にも波及しやすくなります。実践では、ねらいを1回の活動に詰め込みすぎず、「今日は“感じたままに声を出す心地よさ”を味わう」など一点に絞ると、保育者の援助もぶれにくくなります。

参考:領域「表現」を含む「ねらい及び内容」(公的根拠)
文部科学省|幼稚園教育要領 第2章 ねらい及び内容

表現活動 保育の歌と音楽の効果(音感・リズム・自己表現)

歌の効果は「音感」「リズム感」だけではありません。保育情報サイトの整理でも、うたや音楽は想像力を高め、自己表現を学ぶことが大きなねらいとして挙げられ、音を耳で感じて発声すること(音感)、歌に合わせて体を動かすこと(リズム感)、そして一緒に歌う経験の共有などが示されています。つまり、歌は“体験の共有装置”として働きやすいのが特徴です。

ここで意外に見落とされがちなのが、「声を出すこと=気持ちの調整」に役立つ場面です。新しい環境(進級直後、行事前)では、子どもは緊張で言葉が出にくくなりますが、歌は言葉を“メロディ”に乗せるため、会話より参加のハードルが下がりやすいことがあります。朝の会で短い歌を挟むだけで、声帯を使う準備ができ、以後のやり取りが滑らかになる園もあります。これは発声の技術というより、場の安心感づくりに近い効果です。

さらに、リズム遊びや手遊び歌を組み合わせると、身体を伴う表現へ発展しやすくなります。リズム遊びの指導案例では「歌にあわせて身体を動かし、リズム感を育む」「友だちとのふれあい」「一体感」といったねらいが示されており、歌を“動きのスイッチ”として扱うと活動が広がります。歌→手遊び→隊形移動→簡単な合奏、という流れも作りやすく、年齢差のあるクラスでも参加の入口を用意できます。

参考:うたのねらい(想像力・自己表現・音感・リズム等)
保育box|保育園の子どもにおすすめのうた紹介!選び方から指導のコツまで

表現活動 保育の歌の選曲と導入(絵本・シアター・手遊び)

表現活動として歌を生かすには、「選曲」よりも先に“導入の設計”が重要です。なぜなら、同じ曲でも導入が弱いと「ただ歌わされる」印象になり、導入が強いと「この歌を歌いたい」に変わるからです。歌の導入として、歌詞のイメージに合う絵本やシアターを活用する方法が紹介されており、歌に入る前に“意味の見通し”を作るのが有効とされています。

導入の基本パターンは、次の3つが扱いやすいです。

  • 📚 絵本導入:歌詞の情景が絵で共有され、語彙が少ない子も参加しやすい。
  • 🎭 シアター導入:ペープサート等で注意が集まり、歌詞の理解が速い。
  • ✋ 手遊び導入:動きがあることで“歌うこと”への抵抗が減り、歌が定着しやすい。

保育者側のポイントは、最初からフルコーラスを歌わせないことです。保育向けの解説では、サビから覚える、フレーズを小分けにする、手遊びやダンスに発展させるなど、子どもの「できた」を積み上げる関わりが整理されています。結果として、歌詞の暗記を急がなくても、繰り返しの中で自然に言葉が入っていきます。

選曲も、表現活動としての目的に合わせて変えると失敗しにくくなります。例えば、生活の切り替え(片付け・移動)に使うならテンポが一定で短い曲、行事の前ならクラスの気持ちを合わせやすい曲、個の表現を狙うなら擬音や余白が多くアレンジしやすい曲が向きます。保育boxでも、明るいメロディ、繰り返しのあるフレーズ、イメージしやすい歌詞など、興味を引く条件が整理されているので、迷ったら条件で候補を絞ると実務が早いです。

参考:歌の導入(絵本・シアター・手遊び・ダンスへの発展)
保育士バンク!コラム|保育園での歌の教え方(導入・選曲・関わり)

表現活動 保育の援助と環境(ピアノ・CD・音量・テンポ)

表現活動としての歌は、保育者の「援助」と「環境」で伸び方が変わります。ピアノが得意かどうかよりも、子どもが安心して声を出せる条件(テンポ、音量、開始の合図、終わり方)が整っているかが大切です。保育boxでも、ピアノが苦手なら無理せずCDを使い、うたに注力するのも選択肢とされており、“手段の柔軟さ”が推奨されています。

実務で効く調整ポイントは、次の通りです。

  • 🔊 音量:大きい音で押し切らず、子どもの声が聞こえる音量にする(声が前に出る)。
  • ⏱️ テンポ:速すぎると歌詞が追えず、遅すぎると集中が切れるため、子どもの呼吸に合わせて微調整する。
  • 🎹 伴奏:和音を厚くしすぎず、主旋律が取りやすい形にする(特に低年齢)。
  • 🧊 雰囲気:失敗を指摘するより、面白い声・小さい声・大きい声など「違い」を認める声かけにする。

“あまり知られていない工夫”として効果が出やすいのは、音の「大小」「高低」「速さ」を遊びにしてしまう方法です。リズム遊びの紹介では、ピアノの音を大きくしたら体を大きく、小さくしたら小さく動かすというゲーム例が挙げられており、音の変化を身体表現に直結させられます。これを歌に応用して、同じフレーズを「小さな声で」「遠くの声で」「ふわふわの声で」と声の質を変えるだけでも、子どもは“正解の歌い方”から解放され、表現の幅が広がります。

また、環境の観点では「掲示物」も効きます。歌詞を貼るだけでなく、歌に出てくるモチーフ(動物、天気、乗り物)を子どもと一緒に描いて貼ると、視覚的な手がかりが増え、思い出しやすくなります。保育boxでも、歌詞に絵を添えてイメージを膨らませるアイデアが挙げられており、保育者が説明し続けなくても環境が語ってくれる形を作れます。

参考:音の変化を身体表現に結びつける例(リズム遊び)
保育士就職.com|年齢別リズム遊び(導入・ねらい・実践例)

表現活動 保育の記録と評価(観察・発表会・上位にない視点)

ここは検索上位記事でも手薄になりがちな“独自視点”として、表現活動の「記録と評価」を歌に落とします。歌の活動は成果が見えやすい反面、評価が「声量」「音程」「歌詞の暗記」に偏ると、表現のねらいから離れやすいです。そこで、評価の軸を“技能”ではなく“変化”として設計すると、保育者の見取りが深まり、次の援助が具体化します。

観察の着眼点(チェックリスト例)を用意しておくと、日誌や指導計画の振り返りが楽になります。

  • 👀 参加の形:声は出ないが口形で参加/手拍子だけで参加/友だちの後ろで参加など、多様な参加があるか。
  • 🗣️ 表現の質:声の大小・速度・間の取り方・表情・視線などが変化したか。
  • 🤝 関係性:友だちの声に合わせようとする/掛け合いを楽しむ/歌の後に言葉で感想が出るか。
  • 🧠 イメージ:歌詞の内容を自分の経験と結びつけて話すか(「昨日雨だったね」など)。

この視点で記録すると、発表会も“完成度の披露”から“過程の共有”へ転換しやすくなります。例えば、発表会の前に「子どもが決めた声の表現(小さい声→大きい声)」や「子ども発案の手振り」など、プロセスが見える要素を入れると、保護者も「覚えた歌」ではなく「育っている表現」を見取りやすいです。

さらに、歌の活動は“家庭との接点”も作れます。録音してクラスで聴くアイデアは保育boxにもあり、録音は「上手さを判定する道具」ではなく「変化を本人が自覚する道具」として使えます。たとえば、1か月前の録音と比べて「声が出るようになった」「間がそろった」だけでなく、「自分で始められた」「友だちを待てた」など生活面の成長も拾えます。表現活動は生活全体の中で育つので、歌の記録を“生活の記録”につなげるのが、園内共有(職員間の連携)でも強い武器になります。

参考:歌の活動を単調にせず工夫する例(録音・絵・小分け等)
保育box|うた選びのポイントと指導のコツ(掲示・小分け・録音)

あたらしい表現活動と法