歩行者交通安全と保育
歩行者交通安全の保育園散歩ルール：横断歩道と信号
保育園の散歩は、交通安全を「知識」ではなく「動作の型」として覚える絶好の場です。特に横断歩道と信号は、毎回同じ手順で繰り返すほど定着します。大分市の幼児・児童向け指導テキストでは、歩行者用信号は「青の時だけ渡る」、さらに「青でもすぐに飛び出さず左右をよく見てから渡る」ことが明確に示されています。
園児に伝えるときは、文章で説明するよりも、短い合言葉で「一斉動作」にする方が崩れにくいです。おすすめは、散歩のたびに使う“横断歩道の合図”を固定することです。例えば次の流れを、担任・補助・園児が全員同じ言葉で揃えます。
・🛑「とまる」：横断歩道の手前で止まる（歩行者の隊列が勝手に前へ出ない状態を作る）
・👀「みる」：右・左（可能ならもう一度右）を見る（“顔だけ振る”ではなく“車を探す”）
・✋「あげる」：手を上げて渡る意思を示す（背の低い子が見えやすくなる）
・🚶「わたる」：左右を見ながら渡る（渡り始めたら終わりではなく、横断中も警戒）
この「手を上げる」については、同テキストが理由まで説明しています。背の低い子どもが少しでも目立つようにし、運転手へ「渡ります」を知らせるためであり、手を上げたから必ず車が止まる合図ではない点まで指導するよう注意されています。
さらに、青信号の点滅は“急いで渡る合図”になりがちですが、同テキストでは「青が点滅のときは渡らず次の青まで待つ」「横断中に点滅が始まったら安全を確認しながら速やかに渡る」と整理されています。現場ではここが混乱しやすいので、園の方針として言い回しを統一しておくと事故リスクを下げられます。
横断歩道や信号がテーマの参考（園内研修・指導案づくりに向く公的テキスト）：
幼児・児童交通安全教育指導テキスト（大分市）：青信号でも安全確認、手を上げる理由、点滅時の対応などが具体的
歩行者交通安全の保育指導：飛び出しと見通し
歩行者の事故要因として「飛び出し」は定番ですが、保育の現場では“子どもが悪い”で片付けない方が改善が進みます。大分市の指導テキストは、飛び出しに注意する場面として「狭い道路や曲がり角から広い道に出るときは止まる」「敷地から道路に出るときは止まる」を挙げ、見通しが悪い場所では横断歩道以外でも止まることを促しています。
ここで使えるのが「場所でルールを切り替える」ではなく「危険のサインで止まる」という教え方です。園児が覚えるサインは、次のように単純化できます。
・👓「見えないところがある」＝止まる（曲がり角、車の陰、塀、公園の出口など）
・🚗「車が出入りする場所」＝止まる（駐車場の出入口、店舗前、搬入口など）
・🚲「自転車が通るかも」＝端による（歩道でも速度差が出やすい）
大人の感覚だと「この道は安全」「ここは危険」と経験で判断しがちですが、園児は経験が少ないぶん“初見の刺激”に引っ張られます。だからこそ「見えない＝止まる」を身体で染み込ませるのが効果的です。
また、保育者側の配置も重要です。公的テキストでも、幼児が安全確認を身につけるまでは「青信号でも一度立ち止まるように習慣づける」ことが書かれています。子ども任せにせず、止まる“間”を保育者が作るのがポイントです。
歩行者交通安全の保育園での歌：リズムと反復
保育園での歌は、交通安全の指導を「説教」から「生活のリズム」に変える強い道具です。内閣府の「全国交通安全運動推進要綱」でも、重点の一つとして「こどもを始めとする歩行者が安全に通行できる道路交通環境の確保と正しい横断方法の実践」が掲げられており、子どもへの教育や啓発が社会的にも重視されていることが分かります。
歌を使う狙いは、“正しい順番”を迷わず出せるようにすることです。実際の道路では、園児は車・看板・音・友だちの動きなど情報が多く、頭の中のルールが飛びやすいからです。そこで、歌や手遊びの中に「止まる→見る→待つ→渡る」を埋め込み、身体動作とセットで反復します。
保育での取り入れ方（歌そのものの歌詞を丸写しせず、園での運用として工夫する例）
・🎵「散歩前の歌」：玄関で歌う（外に出る前に“交通安全モード”へ切り替える儀式にする）
・👐「手遊び」：手を上げる、右を見る、左を見るを動作化（説明が要らない）
・🧩「クイズ歌」：赤は止まれ、青は進めを、問いかけ型で歌う（反射で答えられるように）
歌の強みは、同じ内容を“飽きにくい形”で回せることです。散歩は毎日・毎週の積み重ねなので、歌のレパートリーを季節で入れ替えると継続しやすくなります。
注意点として、歌でテンションが上がると「走る」につながる場合があります。テンポが速い歌は屋内向き、屋外は落ち着くテンポ（止まる場面で必ず静かになる構成）に寄せると安全です。
交通安全教育の方針（国の運動重点の確認に使える一次情報）：
令和7年春の全国交通安全運動推進要綱（内閣府）：こどもを始めとする歩行者の安全確保・正しい横断方法の実践が重点
歩行者交通安全の保育者配置：先頭と最後尾
同じ「横断歩道を渡る」でも、隊列の形と保育者の立ち位置で安全度が変わります。大分市の指導テキストは、横断の際に「接近する車を見つけた場合は慌てて横断せず、車の動きをよく見る」「運転手の顔も見て、こちらに気付いているのか判断する」といった、かなり実践的な観点まで触れています。
ここから導ける現場の要点は、「隊列を“見える化”する」ことです。園児の列は短くても、車側から見ると死角が多く、先頭の子だけ見えて後ろが見えないことがあります。そこで、保育者は次を意識します。
・🚩「止める役」：子どもの前に出て、列が車道へ出ないよう制動する
・👁️「見る役」：車の動きと運転手の視線を確認し、止まる確証を取る
・🔁「守る役」：列の中ほどで“間が開く”のを前提にフォローする（間が開いても安全優先）
「手を上げたら車が止まる」という誤解は、大人側も無意識に持ちやすいので要注意です。同テキストは、手を上げるのは“停止させる合図ではない”と明言しており、子どもにもそう教えるよう求めています。
加えて、信号が青でも守らない車がいる可能性に触れている点は、保育者の安全文化づくりに役立ちます。園内のヒヤリハット共有で「青でも一呼吸置く」価値を具体例とセットで残すと、翌年度へ継承しやすくなります。
歩行者交通安全と保育の独自視点：園児の視線の高さ
検索上位の交通安全記事は「横断歩道」「信号」「飛び出し」の手順を丁寧に書く一方で、“子どもから世界がどう見えるか”は意外と深掘りされません。ここを押さえると、同じルールでも守れる確率が上がります。
園児は大人より視線が低く、車のボンネットや駐車車両、植え込み、ガードレール、看板で視界が簡単に切れます。大分市の指導テキストが「安全確認は顔を左右に向けるだけでなく、接近する車を見つけるために実施するものと理由まで教える」と書くのは、まさに“見たつもり”問題への対処です。
そこで、保育の工夫として「見える位置へ移動してから見る」をルール化します。たとえば、次のように“確認場所”をセットで教えると、行動が安定します。
・🧭「ここまで下がって見る」：横断前は一歩（または数歩）下がり、車の陰から顔を出す
・🧱「壁の角は顔を出して見る」：角で止まるだけで終わらせない
・🚙「車の前後は見えない」：駐車車両の前に出る前に止まる（急な飛び出しを防ぐ）
また、園児は「友だちが動いたら自分も動く」同調が強いので、先頭の子だけに高度な判断を任せると崩れます。だからこそ、歌や合言葉で“全員が同時に止まる”状態を作り、保育者が安全確認の質を担保する設計が現実的です。
この視点は、交通安全を“教える内容”から“教え方の設計”へ引き上げます。結果として、散歩のたびに注意が増えるのではなく、注意が減っても安全が保てる運用に近づきます。
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