下処理と保育と給食
下処理の汚染作業区域と非汚染作業区域
保育施設の給食では、下処理を「汚染作業区域」で行い、調理・盛り付けなどの「非汚染作業区域」に汚れを持ち込まない設計が基本です。特に大量調理の考え方では、下処理は汚染作業区域で確実に行い、非汚染作業区域を汚染しないことが明確に示されています。参考として「大量調理施設衛生管理マニュアル」でも、区域区分(汚染作業区域・非汚染作業区域)と二次汚染防止が重要管理事項として整理されています。
下処理から調理工程へ移る瞬間が、実は事故が起きやすい「境界」です。保育園の給食衛生管理の実務マニュアルでも、下処理場から調理場へ移動する際にエプロンや履き物等の交換を行う運用が記載されています。つまり、気合いではなく「動線」と「切り替え動作」で守るのが現場向きです。
現場でありがちな落とし穴は、急ぎの対応で“ちょっとだけ”調理場側に下処理品を置いてしまうことです。下処理直後の食材は、表面に土・微生物が残っている可能性があるため、清潔区域の作業台に置く行為は、清潔側の前提を崩してしまいます。対策としては、汚染側の作業を「置き場込みで完結」させ、調理側へ持ち込む物品を最小化するのが効きます。
- 汚染作業区域:検収、原材料保管、下処理(洗浄、皮むき、カット前まで)
- 非汚染作業区域:加熱調理、放冷・調製、盛り付け、提供直前
- 境界ルール:エプロン交換/履き物交換/手洗い(作業切り替え)
二次汚染を防ぐための「区域の明確化」は、床の色分けやテープで境界を示すと、経験差がある職員間でも判断が揃いやすくなります。大量調理のマニュアルでも、区域を壁で区画する、床面を色別する、境界にテープを貼る等により明確に区画することが望ましいと示されています。
参考リンク(汚染作業区域・非汚染作業区域、下処理と二次汚染防止の根拠):
厚生労働省:大量調理施設衛生管理マニュアル(重要管理事項・二次汚染防止)
下処理の野菜と果物と洗浄と殺菌
野菜・果物の下処理は「洗浄が基本、必要に応じて殺菌」という順序で整理すると迷いにくくなります。大量調理施設衛生管理マニュアルでは、野菜・果物を加熱せずに供する場合、流水で十分洗浄し、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌した後、流水で十分すすぐことが示されています。ここで重要なのは「殺菌=万能」ではなく、洗浄→殺菌→すすぎの一連を“手順として固定”する点です。
また、野菜・果物の作業は「3回以上の水洗い」を明示している自治体マニュアルもあります。たとえば明石市の保育所等向け給食衛生管理マニュアルでは、野菜・果物は流水で3回以上水洗いし、いちご・ぶどう等の十分な水洗いが難しい果物は次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌後に十分すすぐ、と具体化されています。現場では「回数」がルール化されると、指導・引き継ぎが一気に楽になります。
意外と知られていない実務のポイントは、「皮付き提供なら工程を省略できる条件がある」ことです。大量調理施設衛生管理マニュアルの標準作業書では、表面の汚れが除去され、分割・細切されずに皮付きで提供されるみかん等の果物は、(殺菌を含む一部工程を)省略して差し支えないという注記があります。つまり、献立設計の段階で「皮付き提供」を選ぶと、工程短縮と衛生の両立ができる場面があります(ただし施設のルール・リスク評価が前提です)。
- 洗浄:流水で複数回(例:3回以上)洗い、土や異物を落とす
- 殺菌:必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム等(濃度・時間は規定に従う)
- すすぎ:殺菌剤の残留を避けるため流水で十分にすすぐ
さらに、下処理後の置き方も重要です。大量調理施設衛生管理マニュアルの標準作業書では、下処理済みの野菜は清潔な容器に入れ、調理まで30分以上かかるなら10℃以下で冷蔵保存する運用が示されています。洗い終わった食材を常温で長く置くほど、再汚染や菌の増殖リスクが上がるため、「水切り→容器→時間で判断→冷蔵」がセットで覚えやすいです。
参考リンク(野菜・果物の洗浄/殺菌、工程省略の条件、保管温度の考え方):
厚生労働省:大量調理施設衛生管理マニュアル(標準作業書:野菜・果物)
下処理の包丁とまな板と器具の区別
下処理の衛生で、最も費用対効果が高いのは「器具の区別」です。大量調理施設衛生管理マニュアルでは、包丁・まな板等の器具や容器を用途別・食品別に専用化し、混同しないようにすることが明記されています。特に下処理用は「魚介類用・食肉類用・野菜類用」に分け、調理用は「加熱調理済み食品用・生食野菜用・生食魚介類用」に分けるという整理が、事故を減らす実務ルールになります。
自治体の運用例では、色分けがそのまま仕組みになっています。明石市のマニュアルには、下処理用のまな板を魚(青)・肉(ピンク)・野菜(緑)に分け、調理用を加熱調理済(白)・果物(黄)に分ける例が掲載されています。文字より色の方が現場で強いのは、忙しい時に「脳内変換」が不要だからです。
器具の区別は「買って終わり」ではなく、洗浄・殺菌・保管まで含めた運用で初めて効きます。大量調理施設衛生管理マニュアルでは、器具は使用後に流水で洗浄し、80℃で5分以上の加熱または同等の方法で殺菌して乾燥し、清潔な保管庫で衛生的に保管することが示されています。さらに、木製器具は汚染が残存する可能性が高いので使用を控えることが望ましい、と注意点も書かれています。
- 区別の目的:交差汚染(肉→野菜、卵殻→調理済み食品など)を構造的に遮断
- 現場の工夫:色分け、保管場所の固定、ラベル、写真付きの掲示
- 注意点:専用化しても「共用スポンジ」「共用シンク」が残ると効果が下がる
意外な盲点として、器具本体より「付け根・交差部」が汚れやすい点があります。明石市のマニュアルでは、包丁の付け根やまな板の端、はさみの刃の交差部は汚染度が高いので、よく洗浄することが書かれています。つまり、洗い方の質を上げるなら、真ん中をこするより“汚れが残る形状”を重点化するのが合理的です。
参考リンク(器具の用途別・食品別の区別、殺菌・保管の基準):
厚生労働省:大量調理施設衛生管理マニュアル(器具の専用化・洗浄殺菌)
下処理の手洗いと検便と記録
「手洗い」は下処理の技術というより、運用の土台です。大量調理施設衛生管理マニュアルでは、作業開始前や用便後、汚染作業区域から非汚染作業区域へ移動する場合、食品に直接触れる直前、生肉・魚介・卵殻等に触れた後、配膳前など、手洗い・消毒を行うタイミングが具体的に示されています。特に重要な場面では、流水・石けんの手洗いをしっかり2回行うことが定められています。
自治体マニュアルでも同様に、手洗いの手順が「秒数」込みで書かれています。明石市のマニュアルでは、指の間・指先をよく洗う(30秒程度)→洗い流す(20秒程度)を2回実施し、ペーパータオルで拭いてからアルコールで消毒する手順が示されています。秒数が入ることで、新人教育でも“感覚”ではなく“再現可能な行動”に落ちます。
そして、給食現場で軽視されがちなのが「記録」です。大量調理施設衛生管理マニュアルは、原材料の受入れ情報(仕入元、ロット等)を記録・保管すること、検収時に品温等を点検して記録すること、温度や時間を記録することなど、点検・記録が一体になっています。記録は“書類仕事”ではなく、事故時に原因究明を可能にする安全装置です。
- 手洗いの狙い:手指を媒介にした二次汚染(下処理→清潔工程)を遮断
- 現場の型:手洗いのタイミングを掲示し、作業切り替えを合図化する
- 記録の型:検収(品温等)/加熱中心温度/冷却時間/保冷温度などを決め打ちで残す
意外な視点として、外部の出入り管理も“手洗いの延長”です。明石市のマニュアルでは、原則として検便を実施していない者を給食室に入れない、やむを得ず入る場合は白衣・帽子・マスクを着用させる、修繕等は原則調理終了後に実施する等、入口での管理が明記されています。つまり「手洗いを頑張る」だけではなく、「そもそも汚染源を入れない」設計がセットで必要です。
参考リンク(手洗いのタイミング・2回手洗い、記録の考え方、区域移動時の注意):
厚生労働省:大量調理施設衛生管理マニュアル(手洗い・点検記録)
下処理の歌と保育と給食の食育
ここは検索上位の衛生マニュアル系だけでは出てきにくい、独自視点の「歌×下処理×保育」の話です。保育園では、手洗い歌・食事前の歌・片付け歌など、短い歌で行動を切り替える文化があります。この“歌で切り替える”強みを、給食室の下処理にも応用すると、子ども向けの食育と、職員側の衛生行動の標準化が同時に進められます。
ポイントは、「子どもに歌わせる」だけで終わらせず、給食提供の流れに“同じ言葉”を埋め込むことです。たとえば「洗う→すすぐ→ふく→いただきます」のように、マニュアルの要点を短いフレーズにして、保育室と給食室で共通言語にします。明石市のマニュアルには、保育士・保育教諭が児童に対して食事前の手洗いの実施・指導を行う役割が記載されており、保育側が衛生行動を支える前提があります。
さらに、クッキング保育(食育活動)を行う園では、衛生の教育機会が増えます。明石市のマニュアルはクッキング保育の章を設け、事前の手洗い指導、当日の器具や作業台の洗浄・アルコール消毒、体調不良児の参加判断などを具体化しています。つまり、歌は「行動の合図」として使いやすく、クッキング保育は「衛生の意味付け」をしやすい場になります。
絵文字つきで、現場掲示に転用しやすい例を示します(園のルールに合わせて言い換えてください)。
- 🧼「あわあわ くるくる 指のあいだ/つめのさき」:指先・指間を意識させる
- 🚰「ながすよ しっかり ぬるぬる ばいばい」:すすぎ残しを減らす
- 🧻「ふいたら おしまい ぺーぱー ぽいっ」:共用タオルを避ける意識づけ
- 🔁「おかわり じゃないよ てあらい 2かい」:重要タイミングは2回手洗いの合図
意外に効く運用は、給食室の「作業切り替え」にも同じフレーズを採用することです。大量調理施設衛生管理マニュアルでは、汚染作業区域から非汚染作業区域への移動時に手洗い等を行うことが示されており、切り替えの瞬間に“同じ合図”があるほどミスは減ります。子ども向けの歌が、職員のチェックリストの代わりになる瞬間が出てきます。
参考リンク(クッキング保育と衛生、保育士の役割の根拠):
明石市:保育所・認定こども園 給食衛生管理マニュアル(クッキング保育・手洗い)

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