幾何学と音符の図形でリズム遊び保育園

幾何学と音符の図形

幾何学と音符の図形で保育園の歌を「見える化」
🎵

ねらい

歌・リズム・動きを、図形で表して理解と参加を助ける。

🔺

やり方

線・丸・三角などの図形を、音の長さ・強弱・高さ・休みの合図に対応させる。

🧩

効果

言葉が追いつきにくい子も、視覚情報でテンポや順番をつかめる。

幾何学で音符の図形楽譜をつくる

 

保育園での歌やリズム遊びは、耳と体で覚えるだけでも成立しますが、「次に何が起きるか」を視覚で先読みできると、参加のハードルが一気に下がります。そこで役立つのが、五線譜にこだわらない“図形楽譜”という考え方です。図形楽譜は、音の高さや長さ、抑揚といった要素を、線の上下や長短、形の違いなどで表し、子どもが直感的に理解できる形に変換します。実際に教育現場の実践報告では、ことばの抑揚を図形楽譜に表すことで音の高さを「目で実感」でき、五線譜が苦手でも抵抗なく描けた、さらにグループ内で音楽を共有し作品を作り上げるのに有効だった、という趣旨が述べられています。

まずは難しく考えず、幾何学の基本図形だけで始められます。例えば次の対応は、現場で扱いやすく、説明もしやすいです。

  • ●(丸):短い音、ワンアクション(手を1回たたく、1歩だけ歩く)
  • ━(横線):伸ばす音、ながーい息(声を伸ばす、腕を伸ばす)
  • ▲(三角):アクセント(強くたたく、ジャンプ)
  • ■(四角):止まる/休み(ピタッと止まる、口を閉じる)

ここでのポイントは「音符の名称」を教えることではなく、歌の中の“変化”を図形に落とすことです。テンポが上がる部分は図形を小さく密に並べ、ゆっくりの部分は間隔を広げるだけでも、リズムの違いが紙面に現れます。研究報告でも、ことば→リズム→歌へと組み上がるプロセスが学習の手応えにつながった趣旨が示されており、図形化はその橋渡しとして相性が良いと言えます。

参考)図形楽譜よりも面白い楽譜|Il fantasma di Ve…


また、図形楽譜を「子どもが描く」工程を入れると、単なる教材ではなく作品になります。保育者が用意する正解より、子どもが感じた“その曲の形”が出てくる方が、クラスの文化として育ちます。線が波打っても、丸が大きすぎても、そこに子どもなりの解釈があり、あとで歌ったときの再現性(思い出しやすさ)に直結します。​

幾何学で音符のリズム遊びを保育園に入れる

リズム遊びの良さは、音の高低やスピードの変化に触れながら体を動かし、曲の雰囲気を感じ取る体験が自然に生まれる点にあります。

そこに幾何学の図形を足すと、活動が「聞く→動く」だけでなく「見る→予測する→合わせる」に広がり、見通しが立つぶん安心して参加できる子が増えます。

導入しやすいのは、定番の手遊び歌や行進系の歌です。たとえば、歌の1フレーズを4つの図形に分解してカード化し、並べ替えで“リズムの順番”を作らせます。カードはホワイトボードに貼ってもいいですし、床に置いて“図形の道”として歩くのも盛り上がります。子どもは「音楽を当てに行く」というより、「図形の道をたどると、結果的に歌になっている」感覚で活動に入れます。

年齢差への対応も、図形化すると調整が簡単です。

  • 0〜2歳:図形は2種類まで(●と━など)。見てすぐ真似できる動きにする。
  • 3歳:▲(アクセント)を追加し、「強い・弱い」を体で表す。
  • 4〜5歳:■(休み)を入れて、止まる勇気=コントロールを育てる。

リズム遊びは協調性や集中力にもつながるとされ、活動の工夫次第で子どもが夢中になれる要素が多い点が紹介されています。

図形は、その“工夫の型”を保育者側に提供してくれるのが強みです。

さらに、楽器を使う場合は、図形を“鳴らし分けのルール”にします。例えば「●は鈴、▲はタンバリン、━は太鼓ロール」など、形で担当が決まると、子ども同士で自然に役割が成立します。報告資料でも、音やことばを探し、操作し、組み合わせて音楽へ発展させる学習の必要性が述べられており、図形ルールはその「操作」を支える仕組みになります。​

幾何学で音符とことばの図形をそろえる

保育園の歌は、メロディーより先に「ことば」が立つことが多いです。園生活の場面(片付け・手洗い・移動)で歌が機能するのは、ことばが行動の合図になっているからです。そこで、ことばを図形にし、図形を音へつなぐと、子どもは歌を“意味と音のセット”でつかめるようになります。実践報告では、日常のことばにはリズム、抑揚、間、強弱、速度などの音楽性があり、それが音楽の諸要素と関連する趣旨が説明されています。

具体的には、ことばの性質を幾何学に落とします。

  • 「のびる母音」→長い横線(━)
  • 「つまる音(促音)」→小さい四角(■)で“止まり”を表す
  • 「はずむ感じ」→三角(▲)を連続させて“跳ね”を示す
  • 「やわらかい語感」→丸(●)を大きめに描く

この整理をしてから歌うと、同じ歌でも“言葉の置き方”が揃いやすくなります。とくに複数担任や補助が入るクラスでは、保育者間でテンポ感や止め方がずれることがありますが、図形があると指導の共通言語になりやすいです。図形楽譜がグループ内で音楽を共有し作り上げるのに有効だったという記述は、まさに「共通言語」としての価値を示しています。​
少し意外な効き方として、発語が少ない子が「図形を指さす」ことで参加できるようになる場面があります。歌詞を言えなくても、「ここで止まる」「次は強く」などを図形で表現でき、周囲の子もそのサインを理解しやすいからです。結果的に“発声できる/できない”の線引きが薄まり、参加の形が増えます。​
ことば→図形→音の順に組む設計は、保育者が「歌を教える」から「歌を一緒に組み立てる」へと視点を変えるきっかけにもなります。創作的な活動が十分でない傾向がある、という課題認識も示されており、図形での組み立ては創作への入口として機能します。​

幾何学で音符の和音と図形を知る

ここは、検索上位の“保育アイデア”だけではあまり出てこない、少し意外な材料です。音楽には、音を積み重ねてできる「和音」があり、それを図形として扱うと、数学的な世界が開きます。ある解説では、五線譜上に音符を3つ積み重ねてできる和音が7種類あり、それぞれを三角形として表し、共通する2つの音を持つ辺を貼り合わせていくと「メビウスの帯」と呼ばれる図形ができる、という話が紹介されています。

さらに、和音の三角形で正八面体を作れる場合がある一方、正二十面体は作れないこと、そして「頂点から出る辺の本数の偶奇性」が関係する、という趣旨まで踏み込んでいます。

もちろん保育園でメビウスの帯や多面体の定理を教える必要はありません。ここで活かすのは、「音の組み合わせは、図形の組み合わせとして遊べる」という発想です。たとえば次のように、年長向けの“図形パズル歌”に落とせます。

  • ド・ミ・ソを▲▲▲で表し、違う三角(ミ・ソ・シなど)を混ぜて“同じ辺(共通音)”を探す
  • 共通が見つかったら、その2音は「いっしょに鳴らす」、残りの1音は「あとから鳴らす」
  • 結果として、和音っぽい響き(同時に鳴る感じ)が体験できる

この活動の面白さは、正解が一つに固定されにくい点です。子どもが「この形、合う!」と言ったとき、それは音の共通点に気づいた瞬間で、音感というより“構造の感覚”が育っています。研究側の文脈でも、音楽を構成する要素や仕組みのおもしろさに触れる学習が重要だと述べられており、図形化はその触れ方を具体にします。​

参考リンク(和音を三角形にしてメビウスの帯などの図形が作れる話):

和音から作られる図形(数理女子)

幾何学で音符の図形を安全に運用する

最後は、活動を「継続できる形」に落とすための運用面です。図形×音符の活動は盛り上がりやすい反面、ルールが複雑になると、できる子だけが先に進み、置いていかれる子が出ます。そこで、保育園向けには「幾何学を使うけれど、幾何学を説明しない」設計が安全です。つまり、名称(円・三角形)を教えるより、形の役割(伸ばす・止まる・強く)を体で覚えさせます。

運用のコツを、よくあるつまずきとセットで整理します。

  • つまずき:図形の種類が多すぎる → 対策:最初は2種類、慣れたら1つずつ追加。
  • つまずき:テンポが乱れる → 対策:図形の間隔を「歩幅」に合わせて床に並べ、体のテンポに合わせる。
  • つまずき:止まれない → 対策:■(休み)を“かっこいい役”にする(止まれたらリーダー交代など)。
  • つまずき:大きい声が苦手 → 対策:●はささやき声、▲は通常声、など声量も図形に割り当てる。

また、図形楽譜を使うときは、必ず「振り返り」を短く入れると伸びます。実践報告でも、つくった音楽を発表し、録画等で振り返ることで学びの達成感につながる流れが示されています。​

保育園なら録画でなくても、今日の図形を壁に貼って「この▲のところ、強くできたね」など、具体物を見ながら言葉にすると、活動が次回へつながります。

最後に安全面として、カードや床配置は誤飲・転倒リスクがない素材と置き方にします。床に置く場合は大判にして、角を丸め、滑り止めをつけるとよいです。音遊びは熱が上がりやすいので、保育者の合図も図形化しておくと混乱が減ります(例:保育者が■カードを上げたら全員ストップ)。リズム遊びを保育に導入する際のポイント整理がある資料も参考になります。​

参考リンク(保育園でのリズム遊びの年齢別アイデアや導入ポイント):

子どもが夢中になるリズム遊び(保育士バンク!)

参考リンク(図形楽譜の有効性:音の高さの視覚化・共有・創作の流れ):

音楽とことばの関連を図ったつくって表現する授業づくり(神奈川県立総合教育センターPDF)

美しい幾何学