食べ方と保育と食育
食べ方の保育と食育で大事なねらい
保育園の「食べ方」指導は、単に“きれいに食べる子”を増やすだけの取り組みではありません。厚生労働省の「保育所における食育に関する指針」では、乳幼児期から発達段階に応じて豊かな食の体験を積み重ね、「食を営む力」の基礎を培うことが重要だとされています。
この考え方に立つと、食育の中心は「できる・できない」の判定よりも、子どもが“食べることは楽しい”“一緒に食べると心地いい”と感じる経験を増やすことになります。
また、食育は食事の時間に限らず、保育所での生活全体を通して計画的・総合的に展開する必要がある、と明記されています。
ここで、現場で整理しやすい「ねらい」を3つに言い換えると、次のようになります。
- 🍽️ 体の発達:よく噛む、飲み込む、食具を使うなど、発達に合う食べ方を身につける。
- 🤝 人との関係:保育士や友達と食卓を囲む中で、安心して食べる・気持ちを伝える経験を増やす。
- 🌿 食への関心:食材・季節・作り手への興味を育て、食べ物を話題にする力を伸ばす。
とくに“乳幼児の食べ方”は、気分だけでなく身体機能(咀嚼・嚥下)とも結びつきます。指針でも、咀嚼や嚥下の発達に応じて、食品の大きさ・固さなどの調理形態へ配慮することが示されています。
食べ方の保育で食事マナーと姿勢を整えるコツ
食事マナーの中でも、最初に効果が出やすいのが「姿勢」です。園の実践例では「テーブルとおなかの間はこぶし一つ分」「足の裏は床につける」「背中はまっすぐ」など、具体的で子どもが真似しやすい伝え方が紹介されています。
姿勢は、見た目の行儀だけでなく、食べやすさにも直結します。足がぶらぶらしていると体が安定せず、噛む・飲み込む動きにも影響しやすい、という説明も現場向けに整理されています。
「注意の言葉」を減らしながら姿勢を整えるには、“チェック項目を短くする”のがコツです。例えば食事の前に、次の3点だけをみんなで確認すると、指示が長引きにくくなります。
- 👊 おなかと机は「こぶし1つ」
- 🦶 足は「床にぴたっ」
- 🧍 背中は「まっすぐ」
さらに、叱るより先に「環境」を点検すると改善が早いです。
- 椅子と机の高さが合わず、姿勢が崩れていないか(足が床につかない等)。
- 配膳の位置が遠く、食器を引き寄せるために前のめりになっていないか。
- 食具のサイズが合わず、手首や肘が疲れていないか。
指針でも、食事にふさわしい環境や落ち着いた雰囲気づくりを含め、食育を総合的に進める考え方が示されています。
食べ方の保育で三角食べと手洗いを食育にする
「三角食べ」は、主食・おかず・汁物を順に均等に食べ進める方法として、園での食育活動に取り入れられています。埼玉市の食育活動紹介では、主食(ご飯・パン)、主菜副菜(おかず)、汁物を“順番に均等に頂く”ことを三角食べと説明し、ばっかり食べよりも色々な料理を順番に食べるとおいしく食べられる、と伝えています。
ここで大切なのは、「栄養バランスのためにやりなさい」と押すより、「順番に食べるとおいしさが続くよ」と“味の体験”に寄せることです。実践例でも、子どもが「おかずを一口食べたら、今度はご飯食べる!」と、行動に言葉がついていく様子が紹介されています。
同じ活動紹介では、食育の導入として「正しい手洗い」も扱われています。指の間、爪の間、手首などを丁寧に洗う場面をイラストで確認し、子どもが「手がピカピカになるって気持ちいね」と語る様子が記されています。
参考)https://nitobebunka.ac.jp/y/teacher_blog/post-46725/
この「気持ちいい」という感覚は、衛生指導を“守らせる”から“自分でやりたくなる”へ変える重要なスイッチです。食育の視点では、正しさの押し付けよりも、体験を通した納得が残る形を狙うとブレにくくなります。
園で使いやすい声かけ例を、食育としての意味づけで整理するとこうなります。
- 🧼 手洗い:「ピカピカの手で食べると、気持ちいいね。」
- 🍲 三角食べ:「次は何にする?順番に食べると、最後までおいしいよ。」
- 🥢 ばっかり食べ対応:「それも好きなんだね。次はご飯(汁)も一口どう?」
参考リンク(食育の全体像・年齢別のねらい、計画・給食運営の考え方の根拠):
厚生労働省「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針」(食育の目標、年齢別のねらい、計画作成、給食運営の考え方)
参考)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0604-2k.pdf
食べ方の保育でいただきますと感謝を食育にする
食事の挨拶(いただきます・ごちそうさま)は、形式だけが残ると「言わされている」時間になりがちです。園の食育実践例では、「どうして『頂きます』と挨拶するのかな?」と問いかけ、野菜を作る人・給食を作る人など、食事に関わる人の存在や食べ物の命をいただくことを説明し、感謝の気持ちを込めて挨拶する流れが紹介されています。
この形は、道徳の授業のように“教え込む”というより、子どもが自分で理由を見つけていく構造になっているのがポイントです。実践例でも、理解した後に子どもが元気よく「いただきます!」と言えるようになった様子が書かれています。
食育の指針でも、「食と人間関係」や「いのちの育ちと食」といった観点が整理されており、自然の恵みや働くことの大切さを知り、感謝の気持ちを持って食事を味わう、といった方向性が示されています。
参考)【食育だより2022年2月号】食事マナーを身につけよう! 楽…
挨拶を“しつけ”で終わらせず、食育にするための工夫としては、話を短くして、繰り返しの中で深めるのが現実的です。
- 🥕 作り手:「これ、誰が作ってくれたんだろうね?」
- 🍳 調理:「給食の先生、朝から何してたかな?」
- 🌱 いのち:「食べ物の命を、体の元気に変えるんだね。」
参考リンク(園の実践例:手洗い、配膳、挨拶、三角食べ、食事マナーの流れが1ページで追える):
さいたま市 食育なび「4歳児 やってみよう三角食べ!覚えよう食事マナー!」(手洗い、配膳、挨拶、三角食べ、マナーの実践例)
参考)4歳児 やってみよう三角食べ!覚えよう食事マナー!(2024…
食べ方の保育で歌を使う食育(独自視点)
保育園での「歌」は、単なるお楽しみではなく、行動を切り替える合図として非常に強い道具になります。特に食事前後は、子どもにとって“やることが多い”(手洗い、配膳、着席、挨拶、食具の準備)時間なので、言葉の指示が増えるほど、指導が長くなりやすい場面です。食育の指針が示すように、食事の時間を中心にしつつも生活全体を通して総合的に進めるなら、合図の工夫は立派な食育の設計になります。
歌の利点は、注意よりも先に「やること」が身体に入る点です。例えば「姿勢の確認」を毎回言語で説明するとブレますが、短いフレーズの歌(またはリズム)にすると、子ども同士で整え合う空気が作れます。実際、姿勢のポイントを子ども同士で声を掛け合う姿が見られた、という園の報告もあります。
参考)食事マナーについて(幼児クラス) – 西巣鴨 学びの保育園 …
歌を食育に落とし込む時のポイントは、「歌いながらやる」ことです(歌って終わりではなく、動作と結ぶ)。以下は園で運用しやすい設計例です。
- 🧼 手洗い歌:指の間・爪・手首など“洗う場所”を歌詞にして、洗い残しを減らす(イラスト確認と相性が良い)。
- 🪑 着席リズム:おなかグー、足ぴた、背中まっすぐの3点だけを短いリズムで復唱して、着席後すぐ食事に入れる。
- 🙏 挨拶の前歌:いただきますの直前に「作る人・育てる人」を一言思い出すフレーズを入れ、挨拶の意味を薄めない。
さらに、意外と効くのが「歌をやめる」運用です。食事中に落ち着きが崩れたとき、注意を重ねるより、いったん“歌なし・声かけ最小”で静かな時間を取り戻し、再開の合図として短いフレーズを入れると、場が整いやすくなります。落ち着いた雰囲気で食事をするという考え方は、食育の枠組みにも含まれています。

筋トレビジネスエリートがやっている最強の食べ方

