伝統行事と保育と歌
伝統行事の保育で歌のねらい
保育園で歌を扱う場面は、日常の積み重ねと行事の「節目」の両方にあります。たとえば童謡を日常的に歌う園が多い一方で、行事の時に歌うという実態も示されており、「行事＝歌」が単発のイベントではなく、普段の保育ともつながっていることが分かります。参考として、童謡を保育に取り入れるねらいには「音やリズムの心地よさ」「友だちと声を合わせる楽しさ」「歌詞からイメージ・表現を育む」「季節や行事への興味」などが挙げられています。
ここで大事なのは、「行事の説明をしてから歌」ではなく「歌が行事理解の入口になる」設計にすることです。行事の由来は抽象度が高くなりがちですが、歌詞の中には門松・鏡餅・干支など“見える物”が入っていることがあり、そこを起点にすれば幼児にも説明が具体化しやすくなります。実際に、1月の歌の提案では、歌をきっかけに飾りの意味を話したり、干支をお面や指人形で“順番に登場させる”ごっこ遊びに広げたりできるとされています。
参考）～歌でおぼえる日本の四季と和の行事～童謡・唱歌・わらべうた …
また、行事の歌は「みんなで同じ言葉を声に出す」ため、集団のリズムが揃いやすく、行事前後の切り替えにも有効です。行事当日だけでなく、準備期間に短く繰り返し歌うことで、子どもが“知っている言葉”として行事語彙を手に入れ、当日の活動理解が進みます。
参考）保育園の盆踊りで盛り上がる曲22選！選び方や由来の教え方も紹…
伝統行事の保育で童謡の選曲
選曲でまず外せないのは「歌いやすいこと」です。年齢や発達に合わせ、乳児は短く身近な題材、幼児は少し長くても楽しいリズムの曲、という考え方が紹介されています。
次に「子どもの興味に寄せる」ことも現実的です。動物・食べ物・虫・植物などクラスで流行っている遊びのテーマに寄せると、歌→会話→活動に展開しやすくなります。
そして、狙いワードの文脈では「季節や行事に合った曲を選ぶ」が主役になります。季節の言葉が多い歌は語彙や想像を広げ、行事の歌は行事内容の理解や日本の文化に親しむきっかけになる、と明示されています。
つまり「行事に合う歌」を選ぶだけでなく、「歌詞に“説明の足場”がある歌」を選ぶのが、保育者目線の勝ち筋です。
例えば1月であれば、「一月一日」はお正月らしさ（言葉づかい、雰囲気）を運んでくる歌として扱えますし、お正月飾り（門松・鏡餅・しめ飾り等）の話題に接続しやすいとされています。
同じく「じゅうにしのうた」は、繰り返しで順番が覚えやすく、指人形・お面で順序性や記憶、言葉あそびに広げられる、という“保育での使い道”が具体的です。
補足として、園全体の年間計画で考えると「一年中のうた」のように1月〜12月の行事や風景に触れる歌を“毎月のはじめの定番”として据える方法もあります。歌詞を子どもと入れ替えて「おめでとう1月→おもちつき1月」のようにアレンジする提案もあり、これは行事語彙の定着に強い仕掛けです。
参考リンク：童謡を保育に取り入れるねらい／選曲のポイント（歌いやすさ、季節や行事）
保育に昔ながらの童謡を取り入れよう！年齢別のおすすめを紹介｜…
伝統行事の保育で由来
由来を伝えるときは「一気に正確に」よりも、「イメージ→体験→言葉」の順が通りやすいです。たとえば七夕は、起源が複数（日本の棚機、中国の乞巧奠、七夕伝説）が重なっているとされ、保育では“どれか一つを短く”取り出して語る設計が現実的です。
七夕伝説の要点としては「1年に1度、七夕の夜に天の川を渡って会う」という筋が、子ども向けに扱いやすい要素として示されています。
ここで歌が効きます。七夕会に合う歌として「たなばたさま」などが挙げられ、ピアノ伴奏だけでなく手拍子や振付で楽しむ提案があります。
参考）保育園で七夕行事を楽しもう！由来の伝え方や七夕会の出し物・ゲ…
「歌→飾り→由来」の導線を作るなら、歌詞の言葉（笹、星、夜）を拾い、次に短冊や飾りへ触れ、最後に物語（織姫・彦星）に入ると“理解の段差”が小さくなります。
意外と保育で扱いやすい「小ネタ」として、七夕の行事食が「そうめん」だと紹介されており、由来には諸説あるものの中国の故事に触れた説明がされています。食育や給食の時間に接続できるので、歌だけで終わらせず“生活の体験”へ伸ばせます。
参考）七夕（7月7日）の由来と伝え方｜おすすめの活動アイデア｜保育…
つまり由来説明は、行事当日の朝の会で完結させるより、「歌（耳）→製作（手）→行事食（口）→物語（心）」の複線化で、子どもの中に残りやすくなります。
参考リンク：七夕の起源（棚機）／行事食（そうめん）の由来
七夕（7月7日）の由来と伝え方｜おすすめの活動アイデア｜保育…
伝統行事の保育で手遊び
手遊びは、行事を“説明”ではなく“身体で理解”に変える装置です。保育で童謡を伝える方法として、歌詞やリズムに合わせた簡単なダンスを取り入れると、体を使いながら楽しく覚えられ、表現力のきっかけにもなるとされています。
特に行事前は落ち着きにくい時間帯が出やすいので、短い手遊びを「合図」にして集団の呼吸を揃えるのも実務的な利点です。
節分でよく扱われる「おにのパンツ」は、実は原曲が1880年発表のイタリアの大衆歌謡曲「フニクリ・フニクラ」だと説明されています。
参考）おにのパンツ｜手遊び歌を保育士が実演｜保育士・幼稚園教諭のた…
この“日本の伝統行事なのに、歌のルーツは海外”という点は、上位記事では前面に出にくい一方で、保育の語りとしては面白い導入になります（例：「節分は日本の行事、でもこの歌は海の向こうから来たメロディーなんだって」）。ただし年齢によっては情報量が多くなるので、幼児後半〜年長向けの“先生の豆知識”として小さく出すと扱いやすいです。
また、伝統行事と親和性が高いのが「わらべうた」です。伝承遊びの文脈では、わらべうたはふれあい・安心感・信頼関係につながる、と整理されています。
参考）伝承遊び総まとめ｜保育に取り入れるメリットとねらいを解説｜保…
行事で“特別な日”にするほど緊張する子もいるため、手遊びやわらべうたで皮膚感覚の安心を作ってから行事活動へ入ると、集団全体が安定しやすくなります。
実践の形（箇条書き：入れ子なし）
- 🎵導入：手遊びを1回だけゆっくり（初回はテンポを落とす）。
- 👀視覚支援：歌詞に出るもの（鬼、豆、笹、星、十二支）を絵カードで見せる。
- 🧠由来は1フレーズ：「今日は○○の日」「○○を大事にする日」で止め、詳細は活動の中で小出し。
- 🏃活動展開：歌の後に“ごっこ遊び／製作／行事食”へ接続する。
参考リンク：わらべうた・伝承遊び（地域で歌詞が違う等の視点）
伝承遊び総まとめ｜保育に取り入れるメリットとねらいを解説｜保…
伝統行事の保育で独自視点
検索上位の多くは「行事に合う歌の一覧」「おすすめ曲」「導入のコツ」に寄りがちです。そこで独自視点として提案したいのが、“歌詞の難語を、園の環境に埋め込む”方法です。例えば七夕の歌詞に出る語（のきば、すなご、五色など）は、説明だけだと流れが止まりやすいですが、掲示・製作・給食ボードに紐づければ、子どもが自然に再会できます（＝言葉が生活語彙になりやすい）。七夕の由来説明や行事の起源を「わかりやすく伝える」ことの重要性自体は、七夕行事の解説でも触れられています。
同様に、1月の歌の活用例では、歌に登場する門松や鏡餅、しめ飾りの意味に触れて学びを広げる、という“歌詞→環境→学び”の発想が示されています。
この構造を一般化すると、行事の歌は「覚えるもの」ではなく「園の中で繰り返し出会うもの」に変わります。
すぐ使える独自の運用案（絵文字つき）
- 🗓️「行事のことば」壁：歌詞の中の“行事語彙”を月替わりで3語だけ掲示（例：門松／短冊／豆）。
- 🍽️給食の一言：行事食がある日は、歌の一節を短く添える（例：七夕のそうめん）。
- 🎭ごっこ箱：指人形・お面を“歌とセット”で箱にまとめ、歌えばすぐ出せる状態にする（十二支など）。
- 🎹苦手対策：ピアノが難しい日はCD等の音源を活用し、体が空く分だけ振付や表現を増やす。
ここまで作り込むと、行事当日の「説明の負担」が確実に下がります。結果として、保育者は由来の正確性を気にしすぎず、子どもが“行事を楽しみながら理解する”瞬間（歌っている時の表情、言葉の拾い方、遊びへの展開）を丁寧に拾えるようになります。
日本の伝統行事 Japanese Traditional Events