日本玩具協会と保育と玩具
日本玩具協会の玩具安全基準と保育の玩具
保育園で使う玩具は、楽しさや発達支援だけでなく「事故を起こしにくい設計か」を最初に確認するのが現実的です。日本玩具協会のSTマーク制度は、玩具安全基準（ST基準）に基づき、第三者検査機関の適合検査に合格した玩具に表示できる仕組みとして運用されています。
ST基準は「機械的・物理的特性」「可燃性」「化学的特性」の観点で安全性を確認し、たとえば誤飲リスクのある小部品の扱いなど、年齢の低い子が多い環境ほど効いてくる論点が含まれます。
また、STマーク付き玩具で万一事故が起きた際に備え、STマーク契約者の賠償責任を支える共済制度を設け、加入を義務付けている点は、園側が「万一のときの説明責任」を考える上で見落としにくい材料です。
ここで、歌に興味がある保育者向けに少し視点をずらすと、「歌あそび」は身体動作が増え、玩具の落下・衝突・誤使用が起きやすい時間帯でもあります。だからこそ、歌の盛り上がりに合わせて子どもが強く振る、投げる、口に入れる可能性を最初から想定し、STマークのような基準を“足切り”として活用するのが合理的です。
参考）日本知育玩具協会｜知育玩具,知育玩具 認定講師,おもちゃ,遊…
さらに近年の制度更新として、日本玩具協会の制度要綱には、2025年12月25日施行の「子供PSCマーク」に関する注記が明記されており、乳幼児用玩具ではSTマークとは別に子供PSCマーク表示が必要になる旨が示されています。
この「表示が二段階になる」動きは、園の購入担当と現場の保育者が情報を共有しておかないと、寄贈品や持ち込み玩具の扱いで判断が割れやすいポイントになります。
参考：STマーク制度の目的・検査内容（機械的/可燃/化学）と、賠償責任補償共済制度の概要がまとまっています。
https://www.toys.or.jp/jigyou_st_top.html
参考：制度要綱（ST基準の位置づけ）と、乳幼児用玩具に関する子供PSCマーク注記が確認できます。
https://www.toys.or.jp/jigyou_st_seido.html
日本玩具協会の保育で歌と玩具をつなぐ選び方
歌の時間に使う玩具は、「音が出るか」よりも先に「歌に合わせて子どもが何をするか」を分解して選ぶと失敗が減ります。たとえば、(1)振る、(2)叩く、(3)転がす、(4)並べる、(5)見立てる――のどれを中心にしたいかで、適する玩具の形状や素材が変わります。
この分解ができると、ST基準がカバーする機械的・物理的特性（形状や強度）や、年齢の低い子に重要な誤飲防止の考え方を、歌あそび用の道具選びにもそのまま横展開できます。
次に「保育での歌」らしさを活かすなら、玩具を“主役”にしすぎない設計が大切です。歌の目的が、リズム同調、語彙、集団参加、情動の調整など複数に分かれる以上、玩具は目的の1つだけを強く刺激しない方が、全体のバランスが取りやすくなります。
具体的には、音の強い玩具を常時全員に配るより、「導入だけ出す」「サビだけ出す」「最後に選択制にする」など、出すタイミングを設計するほうが集団が荒れにくい傾向があります（歌の盛り上がり＝音量の上昇＝事故リスクの上昇、が重なるためです）。
また、園内で説明が通りやすい判断軸として「STマークがある＝まず安全面の説明がしやすい」という利点は、現場運用上かなり大きいです。STマークは第三者検査機関による適合検査に合格した玩具に付けられる、と日本玩具協会が説明しているため、購入稟議や保護者説明で“共通言語”になりやすいからです。
日本玩具協会のSTマークと保育の歌あそび安全
歌あそびは、子どもが興奮して動きが大きくなるため、同じ玩具でも「自由遊びより危険が増える」場面があります。ST基準は機械的・物理的特性、可燃性、化学的特性の安全性を確認する枠組みで、歌あそびのように“動きが大きい活動”でも前提として押さえておきたい基準です。
特に乳幼児クラスでは、誤飲防止の観点が運用上の中心になり、ST基準の検査例として小部品シリンダーによる確認や、小球（直径44.5mm以下）の扱いが示されている点は、玩具そのもののサイズ感を判断する材料になります。
さらに、歌あそびでありがちな「衣装・布・ぬいぐるみ・テント」系の演出は、可燃性の観点が絡みます。ST基準では、かつら・お面・着せ替えドレス・おもちゃの家・ぬいぐるみ等について燃えやすい材料が使われていないかを調べる検査があると説明されています。
この情報を知っているだけで、発表会前に布小物を大量に追加する際も、購入品はSTマーク有無を確認し、手作り品は保管・使用場所（暖房器具や配線からの距離）など別の管理策をセットで考える、という判断がしやすくなります。
意外に見落とされがちなのが「事故が起きたときの園内フロー」です。日本玩具協会はSTマーク契約者に賠償責任補償共済制度への加入を義務付け、STマーク付玩具が原因で発生した対人・対物事故に対する共済金の枠組み（対人1人1億円、対物2000万円、見舞金10万円）を示しています。
園側は補償の主体ではないものの、保護者対応で「どこに確認すべきか（メーカー・販売者・STマーク契約者の情報）」を把握していると、初動がブレにくくなります。
日本玩具協会の保育で玩具を活かす環境
玩具は“物”ではなく“環境”として扱うと、歌の時間が安定します。たとえば、同じタンバリンでも、置き場所が自由だと「歌の前から鳴らしてしまう子」が出やすい一方、歌の導入で保育者が配る運用にすると「歌の開始合図」として機能しやすくなります。
このとき重要なのは、玩具の安全性だけでなく「出し入れの導線」です。子どもが取りに行く・片付けに戻す動作は衝突の要因になりやすいため、歌あそび用は定位置を低くし、同時に集まらない配置にするなど、環境設計で事故の芽を減らせます。
保育の玩具は「適正量」を意識するだけで、歌が崩れにくくなります。日本知育玩具協会の講座紹介では、クラス・保育室に合った適切な玩具と適正量を根拠に基づいてコーディネートできるようになる、という趣旨が示されており、量の設計が“環境づくり”の要点であることが読み取れます。
歌あそびに当てはめるなら、全員が同じ玩具を持つ設計は強い一体感を作れる反面、音量・興奮・取り合いが同時に上がります。そこで「全員配布」ではなく「役割制（指揮役だけ）」「ゾーン制（歌の輪の外に音具）」「曲ごとに玩具を入れ替える」など、量と配置で集団を設計するほうが再現性が高いです。
また、玩具の質を語るときに「高価かどうか」へ流れがちですが、園の現場では“管理し続けられるか”が本質になります。STマークが示す検査観点（機械的・物理、可燃、化学）を、点検チェック（欠け・割れ・ほつれ・変色・におい等）に翻訳して、月1回でもよいのでルーティン化すると、歌あそびの道具も長持ちしやすくなります。
日本玩具協会の保育と玩具と歌の独自視点
検索上位では「STマーク＝安全」や「玩具選び」までは語られやすい一方で、歌に興味がある人ほど効くのが、“歌詞の理解を玩具で可視化する”という設計です。歌を「覚えさせる」のではなく、玩具を「意味の手がかり」として置くと、言葉が苦手な子や、日本語の音に慣れていない子でも参加の糸口ができます。
たとえば、動物の歌なら動物フィギュア、季節の歌なら素材の異なる小物（木・布など）を用意し、歌詞の名詞が出た瞬間に“触れる・指さす・置く”行為へ落とし込むと、歌が「音」から「行為」に変わり、参加の幅が広がります。
ここで大事なのは、玩具が“主張しすぎない”ことです。音の出る玩具を増やすほど歌の輪郭がぼやけやすいので、意味づけ用は基本「無音（または微音）」に寄せ、音具は場面を限定すると設計しやすくなります。
安全面でも、意味づけ用の小物ほど誤飲・破損リスクが増えるため、ST基準の誤飲防止（小部品）や材料の化学的安全性（有害物質確認）という観点が、歌の教材づくりに直結します。
さらに、意外な実務メリットとして「園内で歌の引き継ぎが楽になる」点があります。歌のレパートリーは担当者の経験に依存しがちですが、歌ごとに“対応する玩具セット”を作ると、新任でも「この箱＝この歌」という形で運用が標準化しやすくなります。STマークのような基準を入口に据えると、セットに入れる物の安全判断も揃えやすく、属人化を減らせます。
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