0歳児保育で大切にしたいこと・愛着形成と発達を支える関わり方
毎日丁寧に関わっているのに、0歳児の担当になって3ヶ月以内に燃え尽きる保育士は約4割にのぼります。
0歳児保育で大切にしたい愛着形成と担当制保育の意味
0歳児の保育において、もっとも根本的なテーマが「愛着形成」です。愛着(アタッチメント)とは、乳幼児が特定の大人との間に築く深い情緒的なつながりのことで、発達心理学者のジョン・ボウルビィが提唱した概念です。この愛着が安定して形成されるかどうかが、その後の認知・社会性・情緒発達に大きく影響します。
つまり愛着は、すべての発達の土台です。
0歳児は言葉で自分の気持ちを表現できません。だからこそ、保育士が泣き声・表情・身体の動きから「今この子は何を求めているのか」を読み取る力が求められます。特定の保育士が毎日同じ子どもの食事・睡眠・おむつ交換を担当する「担当制保育」は、こうした愛着形成を意図的に支えるための仕組みです。
担当制が整っている保育室では、子どもが新しい環境に慣れるスピードが、非担当制と比較して約2倍早いというデータもあります(社会福祉法人が実施した内部調査より)。
実際に担当制保育を導入している園では、0歳児が泣き止むまでの平均時間が短くなったという現場報告が複数あります。これは理論ではなく、日々の積み重ねから生まれる現実です。愛着形成が基本です。
担当制の運用に悩んでいる保育士は、厚生労働省が発行している「保育所保育指針解説」を読むと制度の根拠が理解しやすくなります。
厚生労働省「保育所保育指針解説」(0歳児保育の基本的な考え方が詳しく記載)
0歳児保育で大切にしたい発達段階の理解と個別対応の方法
「0歳児」とひとことで言っても、生後0ヶ月と生後11ヶ月では、発達の状態がまったく異なります。これは当然のことですが、保育の現場ではつい「0歳クラス全体」として一括りに考えてしまうことがあります。個別対応が原則です。
生後2〜3ヶ月では首がすわり始め、視野が広がって顔を向ける方向が変わります。生後5〜6ヶ月になると寝返りを打ち、腹ばいで顔を上げ始めます。生後8〜10ヶ月ではハイハイ・つかまり立ちが始まり、探索行動が一気に増えます。この月齢ごとの発達の変化を把握せずに保育を進めると、子どもにとって刺激が多すぎたり少なすぎたりするリスクがあります。
月齢に合った玩具の選択もここで重要になります。たとえば生後4ヶ月の乳児には握りやすい素材の布製ガラガラが適切ですが、同じものを生後10ヶ月の乳児に渡しても、発達の刺激としては物足りなくなっています。
意外ですね。でも、これが現場でよく起きているギャップです。
保育士として発達段階を正確に記録・評価するために、「乳幼児発達スクリーニング検査(KIDS)」のような標準化されたツールを活用している園も増えています。日常の観察メモをもとに月齢ごとの成長を可視化することで、保護者への説明にも説得力が生まれます。記録は必須です。
0歳児保育で大切にしたいスキンシップと声かけのタイミング
0歳児は、身体的なふれあいを通じて世界を認識します。抱っこ・おむつ替え・授乳補助・沐浴補助など、保育士が行うすべての身体的ケアは「学習の機会」でもあります。
スキンシップが学びにつながるということですね。
ただし、注意すべき点があります。スキンシップは「量より質」という側面があり、保育士が感情的に余裕のある状態でおこなうケアの方が、子どもへの伝わり方が大きく変わります。声のトーン・手のぬくもり・目線の高さ、こうした非言語コミュニケーションが0歳児には直接届くからです。
また、声かけのタイミングも重要です。おむつを替える前に「おむつ替えようね」と必ず声をかける、抱き上げる前に目を合わせてから動作する、これらはほんの数秒のことですが、子どもにとっては「自分のことを予告してもらえる」安心感になります。
これだけで信頼感が積み上がっていきます。
1日に何十回も繰り返すケアの中で、こうした関わり方を習慣にしている保育士とそうでない保育士では、半年後・1年後の子どもの表情や反応に明確な差が生まれると言われています。保育の丁寧さは積み上げです。
0歳児保育で大切にしたい環境構成と安全への配慮
0歳児の保育室は、大人の目線ではなく「床を這う子どもの目線」で設計されなければなりません。棚の角・コンセントの位置・床の素材・採光・室温の管理、これらすべてが発達と安全に直結します。
子どもの目線でチェックすることが基本です。
特に注意すべきは誤飲リスクです。0歳児は直径39mm以下の小さな物体を口に入れてしまいます。これはトイレットペーパーの芯(内径約38mm)を通り抜けるサイズのもの全般が危険という目安です。現場では「チョークサークルテスト」と呼ばれるような確認方法がありますが、月に1回以上の環境チェックを定期的に行っている園とそうでない園では、ヒヤリハット件数に年間で平均約2.7倍の差が出るという調査報告があります(保育施設安全管理に関する調査、2022年)。
厳しいところですね。でも、これが現実の数字です。
室温の管理も見落とされがちです。0歳児の適切な室内温度は夏場26〜28℃、冬場は20〜23℃が一般的な目安とされています。特に冬場、暖房によって室温が25℃を超えると、乳児はうまく体温調節できず熱がこもるリスクがあります。
午睡(お昼寝)中のうつ伏せ寝も要注意です。厚生労働省は「保育所における午睡中の事故防止について」の通知の中で、乳児の午睡時は仰向けを基本とし、5分に1回以上の呼吸確認を求めています。これは努力義務ではなく、安全管理上の必須対応です。
厚生労働省「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」(午睡中の安全確認方法が具体的に記載)
0歳児保育で大切にしたい保護者連携と家庭との情報共有
0歳児の保育は、保育士だけで完結しません。家庭での睡眠時間・授乳回数・排便の状態・ご機嫌の様子、これらの情報が保育士に届いていないと、その日の保育の質に直接影響します。
保護者との連携は保育の精度を上げます。
連絡帳やアプリを通じた日々の情報共有は、多くの園で標準化されています。しかし「書かれた情報を読むだけ」になっていては不十分です。朝の受け入れ時と夕方の引き渡し時に、保育士が一言でもいい、保護者の顔を見て言葉を交わすことで、保護者の安心感が大きく変わります。
特に初めて子どもを保育園に預ける保護者(いわゆる「入園1年目」の家庭)は、子どもの様子が見えない不安を常に抱えています。東京都の調査では、保育士とのコミュニケーション満足度が高い家庭ほど、保育士へのクレーム件数が約60%少ないというデータがあります。
コミュニケーションは信頼の防波堤です。
また、「うちの子、今日保育園でどんな様子でしたか?」と保護者が聞けない空気感のある保育室は問題です。忙しい現場であっても、保護者が声をかけやすい雰囲気を意識的につくることが、長期的なトラブル予防につながります。
一方で、個人情報の取り扱いにも注意が必要です。連絡帳アプリで他の家庭の情報が誤って送信されるケースは年間で全国数十件以上報告されています。ICT化が進む中で、情報セキュリティへの意識を保育士一人ひとりが持つことが、園全体の信頼維持に直結します。情報管理は全員の責任です。
こども家庭庁「保育に関する取り組み」(保育の質向上に関する最新の政策情報が確認できます)

子どもとつくる0歳児保育: 心も体も気持ちいい (子どもとつくる保育・年齢別シリーズ)

